理学療法士が語るゴルフアドレスの基本と姿勢の改善ポイント (骨盤編)
▽ 骨盤の役割
骨盤は上半身と下半身をつなぎ、上半身の運動の土台になるものでゴルフのスイングにおいて、非常に重要な役割を果たします。スイングの動作中、骨盤はスムーズな体の回転や力の伝達をサポートする中心的な存在です。
1. スイング時の回転力の生成
骨盤はゴルフスイングの回転力の生成に不可欠です。アドレス時に骨盤が正しい位置にあることで、バックスイング時に効率的に体幹を回旋させることができます。骨盤が安定していれば、上半身と下半身がスムーズに連携し、体全体で効率的に力を生み出すことができます。
2. 体重移動とバランスの維持
スイング中に正しく体重移動を行うためには、骨盤の適切な動きとコントロールが重要です。バックスイングでは、骨盤がやや右に回旋し、ダウンスイングに入ると左に回旋します。この回旋運動がスムーズに行われることで、体重が適切に右足から左足へ移動し、スイングのバランスが保たれます。骨盤の不安定さや位置のズレは、バランスの崩れやスイングのブレを引き起こしやすくなります。
3. パワーの伝達
骨盤は、地面から生み出された力を体全体に伝達するためのハブ(中心)となります。地面反力をうまく利用することで、パワフルなスイングが可能になりますが、その際に骨盤が適切に動き、力を伝える役割を果たします。骨盤が動き過ぎたり、不安定になっていたりすると、力がうまく伝わらず、スイングのパワーが低下する可能性があります。
4. 柔軟性と可動性の重要性
骨盤の可動性が高いと、スイング中の身体の回転がスムーズになり、スイングのスピードや精度が向上します。柔軟性が不足していると、骨盤が十分に動かず、代償として腰や背中に負担がかかり、怪我のリスクが高まります。そのため、骨盤周りの筋肉や股関節の柔軟性を保つことが重要です。
5. 怪我の予防
骨盤が適切な位置にあり、スムーズに動くことで、腰椎や股関節への過剰な負担を避けることができます。逆に、骨盤が前傾しすぎたり、後傾しすぎたりすると、腰痛や股関節痛のリスクが高まります。適切な骨盤の使い方は、長期的にゴルフを楽しむための重要な要素です。
▽ 骨盤に見られるにスイングのエラーパターン
骨盤は上半身の筋肉と下半身の筋肉の中継地点のなる重要な構造です。
ゴルフスイングにおいてカラダの"回転"が非常に重要になってきます。スイング中の回転の軸になってくるのが骨盤です。
ここではアマチュアゴルファーによくみられるエラーパターン "スウェー" "アーリーエクステンション"と骨盤の関係をお話していきます。
1.スウェー
スウェー(Sway)は、ゴルフスイング中に体の重心が左右に移動しすぎてしまう動作を指します。スウェーは、特にバックスイングやダウンスイング中に骨盤や体幹が必要以上に横に動いてしまうことで起こり、スイングの安定性やパワーの効率に悪影響を与えます。
1. スイングの安定性が失われる
スウェーが発生すると、身体の重心が左右に大きく移動してしまいます。これは、体の軸を崩すことになり、スイング中のバランスが不安定になります。本来、ゴルフスイングでは体幹を軸にして回転することが重要です。スウェーが起こると、その回転運動が乱れ、結果としてスイングの安定性が損なわれます。これにより、ボールに正確にクラブフェースを当てることが難しくなり、ミスショット(トップ、ダフリ、スライスやフックなど)が増える原因になります。
2. パワーロス
スウェーが生じると、体が左右に揺れることで、体幹を中心とした回転運動が効率的に行えなくなります。本来、スイングのパワーは体幹の回転運動から生み出され、地面からの反力をうまく利用することで強いインパクトを実現します。しかし、スウェーにより体重移動が不適切になると、下半身から上半身に力を伝えることができなくなり、スイング全体のパワーが減少します。これにより、飛距離が不足したり、正確にターゲットに向けてショットを打つのが困難になります。
3. インパクトの精度が低下する
スウェーは、インパクト時に体が適切なポジションにいられない原因になります。体の軸が左右に動くため、クラブのインパクトゾーンが安定せず、正しいタイミングでボールを捉えることが難しくなります。これにより、フェースがボールに対して正しい角度で当たらず、方向性が不安定になったり、打点がずれることで飛距離やコントロールが失われます。
4. 怪我のリスクが高まる
スウェーにより、腰や膝、股関節などに不自然な負荷がかかりやすくなります。ゴルフスイングは繰り返しの動作であり、同じ姿勢や動きを何度も行うことで、関節や筋肉に負担が蓄積されます。スウェーがあると、力の伝達が非効率になるだけでなく、特定の関節に過剰な負荷が集中しやすいため、腰痛や膝の故障、股関節の問題などの怪我を引き起こすリスクが高まります。
2.アーリーエクステンション
インパクトの不安定性アーリーエクステンションが発生すると、インパクト時に本来のスイングプレーンから外れてしまいます。これにより、クラブフェースの角度が狂い、ボールに対して正確にヒットすることが難しくなります。スライスやフック、トップなどのミスショットの原因になります。
パワーロス
スイング中に体幹が早く伸び上がると、回転運動が不十分になり、下半身と上半身の連動が崩れます。このため、地面からの反力や体幹のパワーを効率的にボールに伝えることができなくなり、飛距離の不足につながります。
スイング軌道の崩れ
アーリーエクステンションによって体が立ち上がると、クラブがインサイドから外れる、またはクラブヘッドが早めにリリースされるため、スイング軌道が正確でなくなります。これにより、ボールの方向性が不安定になります。
腰や膝への負担
アーリーエクステンションが繰り返されると、腰や膝に不自然な負荷がかかることがあります。これにより、腰痛や膝の痛みといった身体の問題を引き起こすリスクが高まります。
エラーパターンの原因となるアドレス
二つのエラーパターンにおける骨盤の位置関係についてみて行きましょう。
▽ エラーパターン解決のヒント
多くの場合、スウェーは「球を飛ばそう」という意識が強すぎることが原因です。特に、テイクバックの際に右方向へ骨盤がスウェーすることが多いと感じます。「飛ばす=揺さぶる」「飛ばす=ひねる」と考えている方は、このようなパターンに陥りやすいです。
このような方には、まず「飛ばす=スムーズな回転」という意識を持つことが重要です。ひねりや揺さぶりによって飛ばすこともできますが、トレーニングをしていないアマチュアゴルファーの場合、スイングの軌道が大きく乱れる可能性があります。また、可動域をフルに使ったスイングは、力みを生む原因にもなります。
そのため、アドレス時の骨盤の位置は自然体で無理のない位置に設定することが重要です。スウェーしやすい方のアドレスの特徴は「棒立ち」です。骨盤は前傾すると安定し、後傾(垂直に近づく)すると動きの自由度が増します。スウェーする方は骨盤が立ちすぎており、これが骨盤の不安定さにつながっています。
ただし、この骨盤後傾は骨盤だけを修正すればよいというものではありません。骨盤後傾の最も一般的な原因は、肩・背中が丸まっていることです。肩・背中がまっすぐな人は、前後の重心バランスが取れているため、腹筋と背筋が等しく緊張し、どの方向にも動けますし、骨盤のコントロールもしやすくなります。
一方、肩や背中が丸い人は、重心が後方に偏ってしまい、これを修正するために骨盤を前に出した姿勢になります。この姿勢でアドレスを取ると、お尻が引けず、膝を曲げ、骨盤が前に出て後傾したような姿勢になります。
お気づきの方もいると思いますがこのような姿勢は、スウェーだけでなく、アーリーエクステンションも同時に発生しやすいです。多くの方がこの二つの問題を同時に抱えているため、背中のケアを行い、正しい重心コントロールを目指すことが大切です。
骨盤を修正するためのエクササイズ
前述のように、骨盤が後傾し前に出る姿勢の原因は、肩や背中が丸くなり、上半身での重心コントロールができていないことにあります。したがって、骨盤の位置を修正するためには、背中と肩周りの可動性を高めることが必要です。
1.背中のストレッチ
ストレッチポールやバスタオルを丸めたものを使います。
・初めに床に座り膝を曲げる
・ストレッチポールを背中に置きできるだけ腰が浮かないように胸を伸ばす
・息を吐きながら胸の前側がしっかり伸びるように
・背中の肩甲骨を中心に上下にずらして全体を伸ばします
2.背中の可動性エクササイズ
背中の可動性を向上させるエクササイズ
・正座の状態から両手をつく(正座することによって腰をロックする)
・肩甲骨を下げながら背中を反る(両肩甲骨の内側が収縮する感覚)
・背中を曲げる
※肘が曲がらないように
上記のエクササイズに加え、胸を張るエクササイズも非常に効果的です。日頃の生活にぜひ取り入れてみてください!
まとめ
今回は、脊柱と骨盤について、アドレスでの注意点や改善のためのエクササイズを紹介しました。柔軟性や可動性は一朝一夕では改善しませんが、継続することで必ず向上します。ゴルフの練習だけでなく、体の手入れを行うことがゴルフの上達や、ケガのないゴルフライフに繋がります。ぜひ取り入れてみてください。何かご質問があれば、コメント欄にお気軽にお書きください!
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