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いたずらっぽいワイン?-西洋スイカズラ随想

大学時代、当時の彼が「西洋スイカズラ」のにおいを嗅ぎたい、と突然言い出したことがある。 クリスマスに奮発して行った横浜の老舗フレンチで、どう見ても大学生の二人にソムリエさんが攻めたおススメをしてくれたお陰でワインの美味しさに目覚めてしまった彼は、持ち前の探求心でその世界に頭からダイブしようとしていたのだ。ワインのアロマを表現する言葉を理解するには「西洋スイカズラ」を嗅がなくてはならない。しかも日本のスイカズラではだめだというので、植物園を一緒に捜し歩いたりしたものだ。 当

    • お父さん、「すべての本質的な力は、表現される過程において成長する」は今も本棚にぶら下がっていますか?

      「すべての本質的な力は、表現される過程において成長する」 父がこのE.フロムの言葉を紙切れに書き、本棚にクリップでとめたのは私が中学生か高校生の頃だったでしょうか。父の基地は4畳半の畳の間で、そのつつましい部屋は、父の電気工作も彫刻の木屑もプログラミングも盆栽の赤玉土も受け止めたうえに、父の愛蔵書を本棚にずっしりと抱え込んでいました。 そこは盆栽から自転車の科学、仏像彫刻からパウル・クレーからプログラミング、と思えば親鸞からコーラン、オデュッセイアから論理パズルまで、父が

      • メガネザルが怒った日...敬愛するT先生に捧ぐ

        教室の人気者1年1組の担任は「メガネザル」だった。 悪口ではない。 子供らは入学して幾日も経たないうちに この自称メガネザルが大好きになっていた。 白髪交じりの短髪に分厚い眼鏡のメガネザル先生は、 一度もスカート姿を見せたたことがないという噂だった。 先生はいつもユーモアに溢れ、 眼鏡の奥では目がチカチカ笑っていた。 みんな先生が次に何を言うかと 眼をくりくりさせて待ち受けていた。 先生に叱られるととても悲しかった。 そして先生は「ヘソ取り」の名人だった。 入学した

        • 「さいゆうきを よむときに」...我が家の伝説のプレゼント

          一昨日、本のことを投稿したら、 かれこれ15年も前の 「しおり」にまつわるエピソードを思い出した。 赤いランドセルが肩に馴染んできた5月。 初の授業参観にイソイソと出向く。 白髪交じりの髪がふんわりと可愛いまり子先生が教壇に立っている。 眼鏡の奥からニッコリ子供たちを見渡して: 「今日は、みなさんのお母さんに、 しおりを作ってプレゼントしましょう。」 お母さんにプレゼントを作るんだって! 子供たちの目が輝く。 教室の後ろに居並ぶ「お母さん」を振り返る顔、顔、顔。 そこに

        いたずらっぽいワイン?-西洋スイカズラ随想

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          レトリックから自由になることで自他ともに充足を目指せるかもしれないと思った話

          食うか食われるかのレトリック「"食うか食われるか"などという漠然とした概念は 反論可能性がなく、要件として許容され得ません」 常から熱烈なH教授の口調が、 一段と高まり、大教室に響き渡る。 民法総論第一部。 法律の入口に立ったばかりの2年生も、 何とはなしにことの重きを察し、 緊迫の面持ちで続きを待つ。 「食うか食われるかの権利関係」という 斯界の重鎮、我妻栄先生の通説を、 H教授が学生の前で一刀両断した瞬間だ。 レトリックに反旗を翻す坂本龍馬法律は、移り行く世の中の

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          『最強の独学仕事術』の本自体が最強のアクティブリスニングだった

          赤羽雄二氏の『最強の独学仕事術』を読みました。(以下、『独学』と略記)以下に、感銘を受けた点と、本書に刺激されて私がしてみたいと思ったことを書きます。 1.感銘を受けた点ビジネスのハウツー本であれば当然、優れた仕事術が数多く紹介されています。それも、今日からコストゼロで始められる効果的なノウハウが、事細かに実例付きで。 ですが、一児の親でもある私が、何よりも感服したのは以下の点です。 (1)誰も否定せず、誰でも成長できるという信念が、書きぶりから溢れ出ている (2)仕事

          『最強の独学仕事術』の本自体が最強のアクティブリスニングだった