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私が選んで良かったこと:グレイヘア

私は幼い頃から髪を伸ばしていたが、大学時代にとあることがきっかけでバッサリとショートカットにした。
面倒くさがりの私にとって、ショートカットはお手入れ簡単で快適。
それ以来髪を伸ばしたことは無い。
月1回、美容院で1時間かけてカットしてもらうのが習慣となっている。

35歳を超えたあたりから白髪が1本2本と現れ、40歳を超えてからは私生活のストレスが激増し白髪がどっと増えた。
2016年に43歳で離婚した時、さあこの白髪をどうしようかと考えた。
白髪を染めて若さを維持し、新たな恋を探そうか。
それとも白髪を染めずに、自分の年齢に抗わずありのままでいくか。
何度も言うが、面倒くさがりの私。
毎月白髪染めに数時間取られることを考えるだけで気が滅入る。
かといって、白髪頭でいるのも勇気がいる。

月1回のカットの日、お世話になっている美容師さんに相談してみた。
「もずきちさんの白髪は黄ばみがなくて白くて綺麗だし、バランスよく生えているから、そのままで良いんじゃないですか?」
彼女の一言で私の気持ちは固まった。
白髪は染めない。
これからは「若さ」より、年齢を重ねて得られる「知性」を追い求めよう。
医師という仕事は「若さ」より「経験」が求められ、仕事する上でデメリットがないことも後押しした。

当時はまだグレイヘアにしている40代が少なく、電車の中などでジロジロ見られることが少なくなかった。
見ているのは、だいたい小奇麗な高齢の女性。
ギョッとした目つきや信じられないといった顔で私を見ている。
「私は何か悪いことしているのかな」と、こちらも気まずい思いをする。
いつしか私は、日中の人混みを避けるようになっていた。

そんなグレイヘアの私を取り巻く環境ががらっと変わったのが2018年。
近藤サトさんが、グレイヘアで颯爽とテレビに登場した。

近藤サトさん https://mi-mollet.com/articles/-/17435より引用

何歳になっても若々しくあろうとがんばれる人は、それでいいと思います。“美魔女”も否定はしません。でも私は、しんどかった。そういう人には、がんばらなくていいという選択肢があるのだということを、皆さんにも気づいてほしいなと思います

近藤サト「40代からグレイヘアに! 白髪染めもお化粧もやめました」 過去にしがみつかず、潔く何かを手放そう|芸能|婦人公論.jp (fujinkoron.jp)

私は彼女のように美人ではないし、若さの追求に疲れたわけではないけれど、グレイヘアの彼女の登場にホッとしたことを覚えている。
それ以降はジロジロみられることも減り、堂々とグレイヘアを楽しめるようになった。
今でも視線を感じることがあるが、「私が何歳に見えているのかな」と想像し楽しんでいる。
誤算だったのが、離婚でストレスが減り白髪が増えなくなったこと。
私の頭は黒っぽいグレーのままだ。
草笛光子さんのような真っ白の頭に憧れるが、まあ仕方ない。
ストレスが少ないのは良いことと割り切ろう。

白髪頭を受け入れる一方で、姿勢や所作はできるだけ若くありたいと考えている私。
月2回のパーソナルトレーニングで姿勢をチェックし、週2-3回のジョギングで下肢筋力を維持するよう心掛けている。

そんな白髪頭の私。
最近患者さんから「先生、若いね」と言われることが増えた。
最初は彼らに私の頭が見えていないのだろうか、と首をかしげていた。
しかし話しているうちに、彼らが無意識に私を60歳以上の人と比較していることに気づいた。
彼らが生きてきた時代に、白髪頭の40代・50代はいない。
その世代は皆、白髪を隠してきたからだ。
いわゆる老人世代の白髪頭を見慣れている。
彼らは白髪頭の高齢者と私とを比べ、動作・姿勢や肌が「若い」と感じているようだった。
これもまた誤算だった。
若さの追求を諦めたはずなのに若いと言われるなんて、皮肉なものだね。

サギの白さが好きな私

あの時白髪染めを選んでいたら、どんな人生だったんだろう。
美しさを追求し、美容外科にでも手を出しているのかな。
増える白髪、シミ、皺、贅肉に一喜一憂し、鏡を見ながらため息をついているのかな。
若さを追求することを止めたあの日。
恋に出会う確率は減ってしまったが、ストレスなく快適に暮らすことができている。
白髪を染める選択肢を捨てて、本当に良かったと思っている。

50歳を超えて老いていく私の身体。
若さが失われていく寂しさはあるが、女性としてこれからもこの体を愛し、丁寧に使っていこう。
そしてたくさんの人と出会い、色々なことを経験し、学び、自らの知性を磨いていきたいと思っている。