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集合恐怖症が曜変天目を見てきた

みなさんは今年一年、どれくらい美術館や博物館に足を運びましたか? 私は美術にまるで興味がない輩なので2回です。

「2回行くなら興味がないはいいすぎじゃん?」

と突っ込まれそうですが、それは誤解なのです。1回目は先月、読書会でアート関連の本を読むことになったので仕方なく、そして2回目は今日、理由は後述しますがあまり乗り気じゃなく行きました。

ネガティブな意思でアートを見るというのはアートファンの方々に対してあまりにも失礼ですが、もっと失礼なことをいうと、私はアートが苦手です。特に現代アートは縮み上がってしまいます。モナ・リザとかモネの睡蓮とかみたいに、彼らは静かにしてくれません。常に鑑賞する側に「受けとれーッ!!!」って概念波動を放ち続けています。いい迷惑です。美術館を出た頃にはライフゲージが真っ赤。ソシャゲだったらダメージの受けすぎで戦闘評価がC-とかになります。

なので私は日々、Twitterに美術関連の情報が流れてきても「ふーーーーーーーん」って流してしまうのですが、先月?先々月?くらいからある美術品の情報が断続的に流れてきました。

それは「曜変天目」です。
なにそれ? という方は調べてみてほしいのですが、ただし、ググる前にひとつだけ注意させてください。

集合恐怖症の人は見ないほうがいいです。

すっごく簡単に描写すると、曜変天目はおティーを入れてがぶがぶ飲むための湯飲みなのですが、そんじょそこらのニトリや無印良品とはデザインが違います。内側の柄がめっちゃブツブツブツブツブツブツブツブツしてるのです。

集合恐怖症のひとがみたらあぶく吐いてぶっ倒れそうなくらいブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツしてます。

実際私は集合恐怖症もちなので、スマホを思い切り顔から話しました。うわって言いました。美術品に対してうわって言ったのは生まれて初めてでした。

いかな美術ファンのひとたちでも、これは賛否両論でしょう、だって人は感染性の皮膚疾患と距離を置くために、集合的な点の模様に対して萎縮するという特性を獲得したらしいのですから。あんなブツブツ、美術的な価値を感じる前に本能で拒絶してしまう筈なのです。

 ですがどうしたことでしょう。Twitterでの賞賛の嵐! だれもあのブツブツが気持ち悪いといわない! なぜかテレビでもとりあげられてる!!

しかも!!!
あろうことか!!!!


「曜変天目ぬいぐるみ」なるものまで売りに出される始末!!!!


腹立つほどの再現度


世も末!!!

最初は「うわあブツブツブツブツしとる!」と薄目でタイムラインを眺めていた私。

……急に興味が出てきました。べつに、だんだん好きになってきたとかじゃないんです。なんか、いっぺん見てやろう、と思いました。

そうと決まれば検索検索。

まずどこに展示されてるのか「曜変天目」でネット検索しますうわあもうブツブツしとる!

丸の内の静嘉堂というところで展示されてというのでサイトにとびますうわあブツブツしとる!!


当日、開催会場に着きますうわあ入り口からブツブツブツブツしとる!!

てな感じで疲れながらようやくなかに入ったら、平日なのにおじいちゃんおばあちゃんがわんさかいて老人ホームに来たんかと思いました。いや若い人たちでごった返してても恐ろしいですね。幼稚園児で溢れかえってても怖い。失礼しました、老人ホームはいいすぎました。デイサービスくらいにしときます。

展示会場は四つにわかれてて、それぞれ岩崎なんたらかんたらさんたちの収集したお宝がわんさか並んでました。すげー雑な説明だけど、私は骨董品とか日本画とか漆器とかにまったく美的な価値を感じることのできない輩なので、どれ見ても「…皿だなあ」「…刀だなあ」「…水墨画だなあ」「…美人画だなあ」としか思いませんでした。というか人が多すぎる&通路が狭すぎて、おじいちゃんおばあちゃんの後頭部鑑賞会でした。「おじいちゃんおばあちゃんの香りがするなあ」と思いました。

さて人混みを避けて避けてようやくたどり着いた曜変天目。ガラスケースのまわりはわかりやすいほどの人だかりで、もうその集団自体が曜変天目のブツブツなんじゃないかってくらいひしめきあってました。

順番を待って、ようやく本物を見ます。
薄目でちょっとずつ見ることを考えましたが、どうせだからいきなり直視しようと思いました。おじいちゃんがどいて、その隙間に入り、実物を見ます。

…あれ?
……そんなに、ブツブツが気にならない?

 Twitterで画像として見ていたときはとにかくブツブツブツブツブツブツブツブツしてましたが、実際に見てみると、まったく気になりません。嘘です。気にならないことはないですが、それよりもツヤっぽい藍色の感じとか、素材の質感とかのほうが目に入ってきます。たしかに、これは、心惹かれます

しゃがんで見てみると、外側の落ち着いた色合いもとてもいい感じです。ブツブツブツブツしてる柄ばっかりに目がいってましたが、こうやって見ると、ただのお高級そうな湯飲みです。ずっしりしてて、持ったらいい重さがしそうです。

一度離れてほかの展示物を見てたら、もう一回見たくなったので見に行きました。やっぱりなんか、良いです。国宝にする価値の基準とかはわかりませんが、ブツブツがなんのかんのいっとった自分を忘れてしまうなにかがあります。

解説文を読むと、最初は「曜変」ではなく「窯変」で、焼いてるときに偶然生まれた模様に対して使っていた言葉だったのが、星や輝きを意味する「曜」に成ったのだそうです。


苦手なものをわざわざ見に行ってやろうという後ろ向きな動機での鑑賞でしたが、そんな私も惹き付けるほどの「曜変天目」。

あなたも一度、見に行ってみてはいかがですか?

なんだこのステマみたいなおわりかた。
ステマじゃないです! ほんとにステマじゃないです!
なんならミュージアムショップのところで店員同士がめっちゃギスギスしてたので、たぶん二度と行くことはないです!


おしまい。面白かったらスキ!してくれると嬉しいです。


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