フランツ・シューベルト 2014年リサイタルプログラムへの覚書
「フランツ・シューベルト」
次の講義へむかうため、一人廊下を歩いていた。頭に大きなヘッドフォン、鞄にポータブルCDプレイヤーをしのばせて僕は音楽を聴いていた。ずいぶん昔、大学の一年か二年の頃。いつもと変わらない午前のひと時。
しかしある瞬間、僕は立ち止まる。歩くことができなくなる。僕が聴いていたのはシューベルトの交響曲ロ短調、俗に「未完成交響曲」と呼ばれる曲の第一楽章だった。
当時僕は見境なくたくさんの音楽を聴いていた。「音楽の秘密」を知りたくて片っ端から手をつけた。モーツ