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コメディを制するのは間(20241012_CBYHマチネ)

ニール・サイモンの「Come Blow Your Horn~ボクの独立宣言~」観劇。
ニール・サイモンと言えば「おかしな二人」が有名だし、演劇を知っていれば言わずもがな、な方だから情報が出たときからワクワクしていた。
今回はあらすじも何も読まず真っ新な状態で観劇をしようと思い、出演者以外は何も情報を持たずに観劇した結果――

あれ?これみたことあるのでは???

謎の既視感。
後で調べたら、「ナイスガイ・ニューヨーク」って原題「Come Blow Your Horn」だったわ…見てる、見てるぞ「ナイスガイ・ニューヨーク」。というか有名じゃん!!むしろサイモンと言えば的なところじゃん!!!

と、帰り道で気付く失態をおかしながらも、古き良き、と言っていいのか、これぞ王道的なアメリカンコメディを浴びてきました。
ストーリーは公式サイトに書いてあるので割愛するとして(というかほぼ全て記載されていませんか…)、言葉を選ばずに言えばありきたりパターンなこの会話劇をどう面白くするかは全て演者(と演出)にかかっているという技量が試される作品なわけで。
これ、すっごく難しいぞ、と思いながら観ていました。
大学の授業で演技を少し(講義の一環で)した際に、講師からは「コメディが一番難しい」と言われていたのですが、これは本当に難しい。
畳み掛ける言葉、登場のタイミング、ちょっとした言い回し――これら全てが演者によって良くも悪くも調理されてしまう作品だなぁ、と。

そんな中、ポンっと主人公にされたバディ@髙地優吾。
いや、さすがでしたね。
さすが、スクール革命で伊達に15年もバラエティやっているだけある。
ほんのちょっとの視線の動き、細かい仕草、そういうのでコメディを作り上げるのがすごい。
何よりタイミングが絶妙。
ちょっとした間をあけて返すのが本当に抜群で、演出の力もあるけど彼の長年培ってきたバラエティ力がここで活かされていて、コメディもっとやってほしい!!と心から思った。
一幕のオドオドした姿や話し方は本当にギークで、あか抜けない少年感があるのに、二幕になってから一転、自信満々なチャラ男に転身して声の張り方すら変わっている。
プロデューサーを演じている時の謎なところから出ている声も言い方も「これぞアメリカンコメディー!」って感じで(なだぎさんのモノマネみたいな)、振り切っててよかったです。コメディは振り切ったもん勝ち。
コロコロキャラ変を要される役ではあるけど、根っこには箱入り甘えた弟君が残っていて、そこがまた愛嬌たっぷりなのも素敵。
とあるアクシデントの時は絶対それ素ですよね?といった口調に戻ったのも面白かったですが笑
スタイルお化けも相変わらずで、一幕より二幕のスタイリッシュスーツ姿が似合いすぎていて、垢抜け感半端なかったです。スタイル良い人は舞台立つと映えるねー

原作では主人公のアランを演じたのは忍成修吾。
忍成くんはひっきりなしに映像出ているイメージがあったので、舞台では初めましてだったんだけど、声が通る。低めセクシーで良い声。プレイボーイな感じもあるけど、真面目なんだろうなぁってところが垣間見えるのは忍成くんだからなのか。
二幕で立場が逆転して(もう良い年だけど)大人になったアランが色々とバディに言うシーンで、こんなに立て続けに台詞を言うのにちゃんと耳に入ってくることにちょっと感激していました。
アラン出来る営業だし格好良いし、根本でいいお兄ちゃんだし、そりゃバディは兄貴を頼りたくなるよね、と思えるお兄ちゃん像で二幕は完全にその場を制していたなぁ…

あ、うそ。制していたのはベイカー夫人かもしれない。
ベテランお二人は舞台を進める上での重石にもなり、着火剤にもなり、とにかく二人が出ていると子供たちが翻弄されている姿に、実家ではこんな感じだったんだろうなぁと思わせてくれた。
とくにベイカー夫人@高岡早紀の電話のシーンとかずっと笑ってしまった。コテコテのネタなのに、高岡さんの演技でさらに面白くなっているというか。きっと近くにいたら面倒な母親なんだけど、そこまでイラっとせず見られるのは絶妙なさじ加減があるからなのか。
時代的に描かれる母親像ってキャンキャンぎゃんぎゃん喚いたり夫の愚痴を言ったり、現代からしたら「そんなに言うなら離婚すればいいんじゃない?」と思う役柄が多いけど、この家絶対ベイカー夫人居ないと回らないな、と思わせる立ち回りすぎて、流石でした…
この前のドラマで見ていた姿とは違ってコメディエンヌな高岡さん可愛らしいです。。
兄弟の壁として立ちはだかるベーカー氏@羽場裕一、トッツィーでのエージント役もだけど、主人公と対立しがちな役が多い中で、ベーカー氏は意外と可愛らしい方だった。
頑固爺だし、子供の声に耳傾けないし、自分の意見が正しいと思いがちだけど、子供への愛情は確かだし、何より家族を愛していることが伝わる。
父上がチャーミングなのは羽場さんの絶妙な間から生み出されるからかもしれない。何だろうね、やっぱりベテランってすごいんだなぁとしみじみ思わせてくれる存在感。
二幕はどんどん家族内でのパワーバランス下がっていたけど、最後には全て受け入れて(ひねくれながらも)、アランを認めているところが素敵だったなぁ。

総じて、セリフ回しの面白さとキャスト陣の力が必要な作品であったと言えるのだけど、まぁ現代だとなかなか「それってどうなのよ?」みたいなところがあるので難しいよね…結構台詞は新たに訳したとのことで現代にあった言い方にはなっているのだろうけど、時代背景が古いのもあって理解されづらいところもあるんだろうなぁ。

まぁ、そこは気にせず頭空っぽにしてシチュエーションコメディを楽しんだわけですが笑

初単独主演だった髙地くんには是非ともまた違ったコメディにチャレンジしていただきたいところ。ついでにミュージカルもやっても良いんだよ。舞台映えするから色々チャレンジしてほしいよ。
前に観た「夏の夜の夢」も良かったけど、彼にはこういったコメディが似合うと思う。むっちゃ生き生きしていたから是非とも今後も舞台に立ってくれよな!!


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