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子どものやる気を生かす距離

親というものは勝手なもので、子どもに対して日々自分の身の回りのことは自分でこなし、能動的に学習に取り組むことを期待してしまいます。
自分が子どもの頃そうやって出来ていたかどうかに関係なく。

それは決して悪いことではないと思いますが、困ったことに期待が高いと現実とのギャップが生まれ、そこに苛立ちを感じるようになってしまうのです。我が家でも「何回同じことを言えばいいんだ…」と呟きたくなることが沢山あります。
とはいえ、怒っていても仕方がないので「なんとか言わなくて済むことはないか」と、そのヒントを求め子ども観察する中で、一つの仮説が浮かびました。

やる気がカタチになる距離

それは、

子どもにやる気がないのではなく、
やる気がカタチになるまで距離があり過ぎるのでは?

ということです。

距離とはどういうことか?

分かりやすい例でいうと、お菓子を食べた後の包み紙をゴミ箱に捨てようと思っても近くにゴミ箱が無ければ「後でいいかな」という気持ちになります。
鼻が詰まっていても、近くにティッシュが無ければすすります。

つまり、小さなやる気エネルギーを拾い上げる環境になっていないがために、

行動に起こさない→叱られる→やる気なくなる

の負のサイクルに陥っているのではないかということです。

実際に我が家でも仮説に基づき環境を変えてみて、成果がいくつかありました。

ゴミ箱を増やす

お菓子の包紙やオモチャや雑貨の包装紙、ティッシュや消しゴムのカスなど、毎日毎日すぐにゴミ箱に捨てるよう言うことに疲れていたので、思い切ってゴミ箱の数を3倍くらいに増やして、どの部屋にいても1秒で捨てることが出来る距離に配置しました。
すると、腰の重かった上の娘もそれなりにゴミ箱に捨てるようになり、もともとフットワークの良かった下の息子においては、捨てるまでが1つの導線となってすっかり我が家のゴミ捨て名人です。

ハンディクリーナーで自ら掃除

小さい子どもは食事の度に食べこぼしが発生し、毎日の掃除も大変です。
以前は、その度に大きな掃除機で吸ったりしていたのですが、最近、このハンディクリーナーを購入してダイニングの近くに置いたところ、子どもたちが競って掃除をするようになりました。

自発的に掃除しなくとも、私や妻がハンディクリーナーで掃除をしようとすると「私がやる!」といった具合に奪いにくるようになりました。

卓上ポットで「喉渇いた!」から解放

子どもはよく喉が渇きます。
その度に「お茶!」「喉渇いた!」と言ってきます。
「お茶!」じゃないでしょ「お茶下さいでしょ」的なやりとりにもうんざりしてくると、子どもが自分で冷蔵庫から出して注いでくれれば良いのに…と心から思います。
しかしながら、そういった飲み物は冷蔵庫の構造上、扉の内側に置かれがちで、そこは子どもが取り出すにはハードルが高い場所です。
そこで我が家ではテーブル用に保温機能がある卓上ポットを購入して、その日に必要な分を入れてダイニングテーブルに置いてみることにしました。

すると喉が乾いたら子どもが自分でコップを取ってきてついで飲むようになりました。目の前にお茶があれば、コップを取る手間も惜しくないようです。
毎日ポットを洗ったりする手間がありますが、各自が勝手に注いで飲むのでいちいち冷蔵庫から取り出す手間もありませんし、夏場に冷た過ぎる状態で飲ませないよう温度調節をすることもでき、本人が飲みたい分だけ自分で注ぐので無駄もないです。

落書き帳と筆記用具はリビングテーブルの下に

やる気を促したいのは、生活習慣だけでなく、学習や創作活動においても同様です。
我が家では、上の娘が幼稚園の頃から落書き帳と折り紙は切らさないようにして、100均で補充しては、子どもにも遠慮なく使うように言っています。
その上で、思いついた時にすぐカタチにできるよう、それらをリビングテーブルの下に常に置いてあります。

創作意欲は思い付いてからコンマ何秒単位で無くなっていくので、リビングに座ってくつろいでいる時に自然の眼に入り、1秒以内で書き始められるようにしています。

本棚はソファーの横

本棚についても同様です。
子どもが興味のある本や親が読ませたい本は、ソファーの横に小さめの本棚を置いて、すぐ手に取れるようにしています。
活字の本を読ませるのはそう簡単ではありませんが、図鑑やカタログを観るだけでも良い習慣だと考えています。
まずはテレビに飽きた時にふと見てみようと選択肢に入ることが重要と思います。

引越しを機に導線を子ども用に再設計

結婚して子どもが生まれてというライフステージはどんどん変化していくものの、家の中の生活導線は子どもが生まれる前のままになっていることが多いのではないでしょうか。
我が家でもしばらくは子どもが乳児の頃の配置のままでした。ですので、食べ物から器から筆記用具まで、小さい子どもが手が届かないようほとんどの物は上の方に配置していました。
ただ、子どもが大きくなって園児や小学生くらいになると、いちいち取り出して渡す手間が負担になってきます。
子どもからしたら、手の届かないところに欲しいものがあって、何度もお願いすると親がイライラし始めるという、あまり良い環境ではありませんでした。

そこで我が家では、引越しを機に家の中の導線を子ども中心に設計し直しました。
具体的には、ハンカチ、ティッシュは勿論、着替えや食器まで、子どもが自ら取り出せる位置に、トイレや洗面所のタオルやティッシュペーパーやトイレットペーパーのストックも、各々が補充出来る箇所に格納することにしました。

結果として、すぐに子どもが何でもかんでも能動的にやってくれる訳ではありませんでしたが、いちいち動かなくとも「あそこにあるから自分でやって」といえば、子ども側でなんとかなるというのは、精神的にも肉体的にも楽です。

美意識と生活感

子どもの近くにいろいろ置きましょうということを沢山書いてきましたが、私はどちらかというとミニマリストでリビングにいろいろ物を置くことは好きではありません。
なので、いつも見栄えとどう折り合いをつけるかに葛藤します。
私に限らず、来客時に目につくところに生活感が出るものを置きたくないという方は多いのではないかと思います。
我が家では、その折り合いの付け方として、
・デザインで誤魔化す
・ひと手間あっても問題無いものは隠す
・思いきってアートっぽく見せる

いった方法で対処しています。

例えば、ティッシュやゴミ箱を沢山配置する際には、お洒落なティッシュケースやゴミ箱を選ぶことで部屋全体の印象を損なわないように気を遣います。
また、ポケットティッシュやハンカチ、筆箱以外の筆記用具やテープ、ハサミ類は、引き出し型の収納ケース(あまり安っぽく無いもの)を置いてその中に隠します。
隠すのとは反対に、子どもの作品や目標を設定した紙などは、掲示して評価したり目標を常に意識させることが必要なので、大胆に掲示する必要があります。ただし、普通に張り出すとダサいので、掲示の仕方にこだわったり、筆で書いたり色を塗ったりしてアート要素を加えることで見た目の価値を引き上げられるよう努力します。

応用編「匂わせて食いつかせる」

ここまでは、いかに子どもがやる気になった時に手に取りやすいようにするかについて書いてきましたが、最後に応用編で、やる気に火を付けるための匂わせアクションについて記載します。
環境を用意してもあと一歩動き出さない時の対処法です。

テクニックとしては、
・目につくところに置く
・親のものだと言って押し付けない
・親が楽しんでいる姿を見せる

の3点です。

目につくところに置く

「目につくところに置く」は、よく新しくドリルを買ってきた時に使います。
ドリルなんて好んで広げて学ぶ子はいません。
なので、意図的にリビングのテーブルの上に置いて様子を見ます。
開くまでは時間がかかりますが、開いて問題を見るとついつい埋めたくなるものです。
そうやって買ってきてすぐとか、しばらく触っていなさそうな時には、適当に取り出し、片付け忘れたような体でしばらく食いつくのを待ちます。

親のものだと言って押し付けない

子どもは、特に教材に関しては、自分宛に当てがわれたもの=やらされるものという印象を持ちます。そのため、そういったものは自分から取り組もうとはしません。
しかし、自分ではなく大人が使うものとなると、勝手に触ってはいけないという制約がある分、好奇心が生まれます。
化粧道具を触ってみたいとか髭剃りシェーバーが気になるとかそういうものです。
なので、時々子どもに読ませたい本や教材については、「父親のものだから勝手に触るな」と言って、あえて距離を置かせたりします。
そうすることで、いざ触れるとなると背徳感のようなものも相まって熱心な触ったりします。

親が楽しんでいる姿を見せる

これはシンプルで最も効果があります。
料理をしたり、掃除をしたりといった当たり前のことでも、網戸にスプレーで吹き付けたり、ハンディモップをマイク代わりに遊んでみたりすると、子どもは面白がって寄ってきたりします。
集まってきたら後は簡単で「競争」にすれば良いです。
片付け競争からお掃除競争、洗濯たたみ競争まで。なんでも競争になります。
ただ、いつも競争だと飽きてくるので、洗濯物の中からタオルとハンカチをたくさん見つけた人が勝ちとか、靴下のペア見つけた人が勝ちとか捻りを加えて遊び要素を拡大していく工夫も必要です。

もっともっと子ども目線で

人間というのは、勝手なもので、自分以外の人については、客観的に指摘が出来るものの、自分のこととなるとよく見えていないのが実情です。
なので、子供に対しても「あいつは何回言ってもやらない!」と自分はベストで相手が追いついて来ないような見方をしてしまいがちです。
私もよくそうなっています。
ですが、子どもからみたら、大人の独りよがりになっていたりすることが多く、言いたいことはあっても「親だから」「まだ大人じゃないから」という圧力で納得させられたようになっているケースが多いのかもしれません。
もっともっと子ども目線で考えることができれば、いちいち親が口で説明しなくとも子ども側で解消できることがあるのかもしれませんし、理性だけでなく好奇心で物事に取り組むことが出来るのかもしれません。

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