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ジョージア、天国に一番近い国(12)Life is too short to drink bad wine【シグナギ】

 1/6、10日目。ジョージアの旅もいよいよ最終日。
 この日は以前から、トビリシ東部にある街「シグナギ」に行くつもりだった。ジョージアワインの生産地であり、高台に位置することから天空の町といわれている場所だ。いわゆる絶景スポットってやつである。
 自力でマルシュを使っていくことも簡単だが、ワイナリーに行って見たかったのでツアーに申し込んでいた。集合場所は宿の近くだったのだが、いざ到着するとそれらしき人影や車はない。そこはかとない不安感。ウロウロしていると、1台の乗用車がすすすとあらわれた。
 ドライバーによれば、集合場所が変わったとのことだ。そういえば、朝に見知らぬアカウントからWhats appが来ていたことを思い出す。何かのスパムだろうと思って無視していたが、その連絡だったのだろう。私は男の車に乗り込んだ。
 車は10分ほど市街地を走り(朝の連絡に応答していたら自力で移動しなければならなかったかと思うと戦慄だが)、いくつかの大型バンが停車している広場に到着した。

朝のナリカラ城
朝の謎自転車
朝のロープウェイ


 バスは10人ほどの乗客を乗せ、そこそこスカスカで出発した。きょろりとした瞳にブロンドのいかにもなバスガイドの女性が、流ちょうな英語とジョージア語で案内を始める。トビリシという街の名前の由来(百万回聞いた)、ジョージアワインの歴史、カヘティ地方(シグナギの位置する地域)の気候的特性なんかを、彼女は実に手慣れた様子で話した。道中、窯に張り付けて焼き上げる「ショティ」というパンを作る店や、ジョージアの伝統的菓子である「チュルチヘラ」を作る店に立ち寄った。ショティは、かつて訪れたウズベキスタンのパン、サムサに作り方がそっくりだった。やはりシルクロード沿いの都市は、どこかで同じ血が流れている感じがする。フランスパンの外側だけを焼いたみたいな、薄くて長いパンで、さくさくとした食感が楽しい。硬めで少しパサついたパンが多めなジョージアにおいては珍しいタイプのパンで、非常においしかった。

車窓から
床に置けないグラス
チュルチヘラ
チュルチヘラのおうちらしい
ショティ
チーズ

 今回のツアーでは、シグナギに行く前に、著名な修道院に立ち寄ることができた。初めに立ち寄ったボドベ修道院は、ジョージア建築とロシア建築の修道院が隣接しており、その違いを楽しむことができる場所だ。あたりは青々とした草原が広がっており、遠くの山脈を見渡すことができる。残念ながら観光客でにぎわいすぎて、厳かな雰囲気は到底なかったけれど、それでも美しかった。見た目はジョージア建築のきょロシア建築の教会の方が少しばかり立派だったかもしれない。

ジョージア建築
ロシア建築

 シグナギの街では、勝手に自由散策かと思っていたのだが、なんと集団でガイドされながら街を周らなければならなかった。歴史的背景も地政学的事実にも興味がなく、ただ街を散歩したかっただけだった私は少しばかり落胆した。女性バスガイドはシグナギの町の名前の由来やいろんな彫刻について熱心に話してくれたけれど、今となっては全然覚えていない。だからガイドってそんなにいらないんだよな。
 とにかく、この街は街自体が城のようになっているので、城壁が街の周囲をぐるりと取り込んでいる。東側の国境に面しており、自衛の必要性が高かったためだ。城壁は基本的に登ることができないが、北側の一部の城壁には登ることができる。とんでもない風の強さで、そのまま吹き飛んで行ってしまいそうだった。隅々までくまなく晴れ渡った空がはるか遠くまで続いていた。

 ガイドに連れられての街歩き(私が世界で最も嫌いなもののひとつだ)は瞬く間に終わり、再びバスに乗って昼食場所に向かった。最初にオーダーをして、作っている間に隣接しているワイナリーの見学ができるようになっている。非常に合理的だ。
 ジョージアワインの伝統的な作り方――地中に埋めた素焼きの壺に葡萄を放り込んで発酵させるというシンプルなものだ――を習い、たっぷりと試飲する。ジョージアの乾杯といえば「ガウマルジョス!」という掛け声なのだが、なんとその場にいるツーリストはだれもその言葉を知らなかった。なんてことだ。おまえら、ジョージアで何してたんだ。私は少しばかり憤慨しながらも、改めて全員にガウマルジョスを教え、乾杯の音頭を取った。ガイドかよ。

 その場で買う必要はなく、食事をしながら考えてよいということだったので、一旦レストランに戻った。今回オーダーしたのは、「kupati(クパティ)」というジョージアのソーセージである。個人的には、たかがソーセージ、いくらジョージア版とはいえさほど大差ないだろうと思っていた。ところがこれがまた想像を絶する美味しさで、まったくジョージア料理ってやつはどこまでポテンシャルがあるんだと思った。通常のソーセージは、ミンチにした肉を腸詰にして作ることになると思うが、ジョージアのソーセージは、四角く切ったモツを腸詰にしており、甘辛い味付けになっている。ぱつんと薄皮をかみ切ると、詰められたモツがポップな食感を生み出している。忘れられない味になった。

 帰りにしっかりとワインを購入し(観光地価格だったがおいしかったので良しとする)、バスに乗り込む。最終日にして全く観光客すぎる過ごし方をしてしまった。

大体チャチャ飲まされる
この穴の中で発酵させるそうな
綺麗な色なのでみてください
クパティ!


 長くなったので分けます。

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