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【中世欧州料理試作】(2)パルマタルト

このコラムでは、過去試作してご紹介した中世ヨーロッパのアレンジ料理についてちまちまご紹介します。
全部実試作つき&単純に自分の感想や所感なども書きなぐってます。基本的に全部美味しいんですけど、一部「?!!?(なんともいえない味)」ってものもありますので、そのあたりも正直に書いときます。



豚肉と松の実を使った「パルマタルト」

中世ヨーロッパで使っていたお肉の種類に関してのご質問は比較的多いんですが、よく使っていたうちのひとつが豚肉です。特に極寒の冬期間には欠かせない食材でして、本格的な冬が訪れる前(概ね11月頃)に、いわゆる塩漬けや燻製用に豚さんいつもアリガトウ(意訳)しておりました。
日本でも人気がある「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」にも11月の風景でその光景が描かれています。

挿絵を見ると、地面にある何かを食べさせていますがこれは木の実(どんぐり)と思われます。雪が降る前にたんと食べてもらって、モリモリに太った状態でうんぬんかんぬんということですね(濁しすぎ)。1頭でもけっこうな量のお肉がとれますので、いろんな意味で大事な存在でございます。

そんな豚肉を使った中世ヨーロッパ料理ですが、上級階級の宴会メニューにも作り方なるものがいくつか記録されています。
西洋ファンタジーの世界では、憧れの料理(なの?)として「豚の丸焼き」がパッと挙げられます。クルクル丸焼き、いいですよネー。
史実方面も同じですよネー!って言いたいんですが、さすがにそんなにコンスタンスにはやりません。むしろ宴会や特別な客人がきた時に数日かけて準備してたんじゃないかと思います。

というのも、実際にリアル豚の丸焼きクルクルを何度か経験しているので分かるんです。
とにかく焼くのに根気と時間がかかるのヨーーー!(叫)
なんでそんな経験あるの?っていう説明は長くなるのでまた今度。

話を元に戻します。
その豚肉ですが、料理指南集上では煮込むスープ系よりタルトなどに加える焼き料理系の食材として多く使っていた傾向が見受けられます。もちろん、地域や時代によって若干の違いはあるんですが、しっかりと火を通してから提供していたのはどこの地域も同じかなと思います。

パルマタルト(真ん中~左上部分の黒っぽいところ)
油分を多く含む松の実と甘いカラントレーズンを使っているのが特徴

「パルマタルト」は、豚肉のブロック部分と鶏・獣脂・松の実・カラントレーズンという小粒のレーズンを混ぜ合わせて焼き上げた一品です。15世紀頃のフランス方面が発祥とされますが、もしかしたらそれより50年ほど前には原型となるものが登場していたのかもしれません。
試作で作った時は、塩気の強い豚ベーコンがちょうど残っていたのでそれを使ったんですが、塩味のお肉と甘いカラントレーズン、コリっとした松の実が絶妙によくあいました。ぶっちゃけふつーに美味しかったです(真顔)。

松の実とカラントレーズン

惣菜系のタルトによく登場する食材として「松の実」と「カラントレーズン」2種類があります。松の実はその名の通りそのまんまなんですが、特に油脂を多く含むため、熱を加えると良質な油分が多く出ます。これがまた美味なのでございます。
一般的なスーパーの中華料理系食材コーナーに置いてあることが多いです。ただ少量でもちょっと高いんですけどね(昔から高級品かも)。

松の実(Pine nuts)
特に中世フランスの料理指南集によく登場するナッツ類の一種です

もうひとつの「カラントレーズン」。レーズンと聞くとアメリカの方にあるレーズンパンに入っているアレ(まんまやん)というイメージがあるのか、中世ヨーロッパにはないという認識が強いようですが、干しぶどう自体は昔からヨーロッパでよく用いられていた食材でした。
現代の甘々レーズンのように大きくなく、糖分も比較的低めなんですがお菓子系はもちろん一般的な肉料理とも相性がいいです。
けっこう高確率で各地域の料理指南書に登場するので、大袋で買っていることが多いです。製菓専門店にはだいたい置いてありますので探してみて下さい。

カラント(カレンズ)レーズン
小粒で甘味が少ないのが特徴。現代ではシュトレンをはじめとしたクリスマススイーツに欠かせない食材でもあります

作り方

基本的にお肉類は一度お湯でしっかり茹でて水気を切ってからお好みの大きさに切り、他の具材と一緒に混ぜ合わせてタルト生地の中に詰めます。お好みで砂糖を少し加えてもいいですが、そこそこ甘じょっぱい感じになります。
できれば手作りの中世風パイクラストを使うのが無難ですが、難しい場合は製菓専門店や輸入食品屋さんなどにある市販のタルト台を使って頂いてもよいです。冷凍パイ生地はサックサクなバターの香りが満載なので、あまりおススメしていません(お魚系だったらまだワンチャンあり)。

パルマタルトの作り方は拙著同人誌『深き中世欧州の食レシピ(タルトまたは総集編)』に収録されておりますので、もしご興味ありましたらパラパラご覧頂ければと思います。

※通販サイトの同人誌取扱いは9/30(土)でいったん終了しますのでご注文の際はお気をつけ下さい。

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