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トマトのシチュー

 十数年前の夏、3人きょうだいの末っ子の娘は、小学校低学年でした。学校のこと、習い事、家事、仕事、、、。私は毎日忙しく子どもたちの話をじっくり聞けていませんでした。

夏休みが終わるころです。
娘が、
「先生が、トマトのシチュー持ってきてねって言ってた。」
と言います。
え?と思いつつ、スーパーでトマトの入ったハヤシライスのルーを買いました。当時の娘の担任の先生は、いつも楽しい授業をしてくれるので、何か面白いことで使うのかなと深く考えませんでした。

「はい、トマトのシチュー。」と渡すと、娘はけげんそう。
もしかしてトマト缶?混乱しました。

もう一度、よくよく娘の話を聞いて、やっとわかりました。

食べる「シチュー」ではなく、トマトの「支柱」だったのです。種から育てたミニトマトの鉢を学校から持って帰ってきていました。おそらく、夏休み明け、学校にトマトを持って行くときに「支柱」を忘れる子が多くて、先生が強調したのだと思われます。
 娘の頭の中は「シチューを忘れてはいけない。」でいっぱいだったのでしょう。

自分のとんでもない勘違いと、可愛い娘に笑った笑った。娘よ、ちゃんと話を聞いてあげなくてごめんね。

今、子どもたちは全員成人して家を離れました。
昔は、こんな「子ばなし」があふれて、ダイヤモンドみたいな日々だったなあと懐かしく感じています。

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2021年8月1日の北海道新聞「いずみ」に掲載していただきました。

ハヤシライスはシチューなのか?! 二段階で大ボケです。
たまに、思い出しては微笑んでしまうエピソードでした^o^


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