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『パフィン島の灯台守』

イギリスのシリー諸島付近は航海の難所です。ある夜、嵐で船が沈み、乗客30人が岩にしがみついていたとき、パフィン島の灯台守ベンが手漕ぎボートでやってきて、全員を救出してくれました。助けられた乗客の中にいた5歳の少年アランは、この夜のことを忘れず、ベンが描いた船の絵をもらって大切にしていました。学校を卒業するとすぐ、パフィン島に向かい、なつかしい灯台守に再会します。一羽の傷ついたパフィンを看病することで、ベンとアランは家族のように絆を深めていきます。パフィン島が、文字どおりパフィンでいっぱいの島になるまでを、人と人のつながりをからめて情感豊かに描きだす物語。オールカラーのすばらしいイラストに飾られた贅沢な作品です。

評論社による紹介文より

児童文学の巨匠マイケルモーパーゴの作品。
『戦火の馬』『アーニャは、きっと来る』でおなじみですね。
本作も、人種、戦争、いのち、家族、環境など様々な要素を詰め込んだ息もつかせぬ展開で、ますます私たちを惹きつけます。
とはいえ、物語は主人公アランの視点で淡々と語られます。
その中でも灯台守ベンの友だちを信じて待つ心に、こちらも心打たれます。

「もどってくるさ。これっきり会えないわけじゃない。おまえさんも同じ。出ていく日が来ても、やっぱりもどって来る。そう思うよ。まあ、今のところは、まだ出ていってほしくはないが」

「言っただろ、もどってくるって。友だちだからな。友だちってのは、いつまでもわすれないものさ」

などなど…
どんな境遇にあっても、希望を捨てないベンの力強さ。
そのベンのそばを離れず支えるアラン。
そして築かれる新しい家族。 
ベンジーデイヴィスのフルカラー挿絵も最高です。
見開きでパフィンが飛び立つシーンときたら!
大切なことを伝えながら、決して悲壮感を感じさせません。
読後は心にじわじわと沁みてくるような幸福感を味わえるはずです。

マイケルモーパーゴ・作
ベンジー・デイヴィス・絵
佐藤見果夢・訳
ページ数:112ページ
対象年齢:小学校高学年~


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