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シアター・ムヴィオラPICK UP(3)『春江水暖〜しゅんこうすいだん』

驚嘆の映画。ずっとながく胸のどこかに残る映画。『春江水暖〜しゅんこうすいだん』をピックアップ。

若き新人監督の長編第一作にしてカンヌ国際映画祭批評家週間クロージング作品に選ばれ、東京フィルメックス審査員特別賞やキネマ旬報ベスト10入りを果たした傑作をぜひご覧ください。

『春江水暖〜しゅんこうすいだん』本編 配信ページはこちら:https://mirail.video/title/5230019


■この映画を配給できたことに感謝したい----と心から思える作品です。

2021年2月に公開した『春江水暖〜しゅんこうすいだん』。これほどに、この数年で出会えたことに感謝したいと思えた映画はありません。もちろん素晴らしい作品は数々ありますが、この映画が1988年生まれのまだ年若き監督の長編第一作であることが、出会いの鮮烈さを印象深くするのです。新しい才能との出会いとはこんなにも心を躍らされるものなのか。その思いゆえ、監督のグー・シャオガンに初めてZOOMでインタビューしたとき、なんと7時間30分も話してしまったのです!話しても話しても、まだ聞きたいことがある、そんな監督でした。そして、この映画への驚嘆をnoteに連載しました。こんなことは珍しいのですが、全13話、よろしければどうぞお読みください。この映画の素晴らしさをぎっしりと詰め込んだつもりです。

【配給会社ムヴィオラの映画一本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』
①停電とロウソクと扇子 
②お皿の中身と汽水域のスズキ
③汽水域と借景のキャスティング?
④ジャ・ジャンクー、アピチャッポン、イニャリトゥ、ワン・ビン以来の…
⑤「これは驚いた」「これは映画史に残る」。10分53秒の自由。
⑥10分53秒のシーンを何十テイクも? 鬼ですか?
⑦山水画の絵巻を映画にする、と簡単に言うけれど。
⑧“音”の良い映画は信頼できる。
⑨声フェチ発動!
⑩シャオガン監督の好きな映画10本が届いた
⑪「河(川)の映画」というものがある気がする
⑫パンフレット完成間近。目から血が出そうな公開前。
⑬公開前日。明日は春節。人事を尽くして…「天地」に祈る!

*7時間30分にわたるインタビューの詳細はパンフレットに掲載しています。
パンフレットはBASEにて販売中です。 

■大河・富春江が流れる街。変わりゆく世界に生きるある大家族の四季。あらゆる世代の観客に開かれた映画。

映画の舞台はグー・シャオガン監督の故郷、杭州市富陽区。はるか昔から大河・富春江が流れる江南の水郷地帯。しかし、街は大規模な再開発で急激に変わろうとしている。変わりゆく世界の小市民の生。映画ファンならホウ・シャオシェンの『悲情城市』、エドワード・ヤンの『ヤンヤン夏の思い出』、ジャ・ジャンクーの『長江哀歌』を思い出すかもしれない。しかも監督は14世紀の山水絵巻の傑作「富春山居図」にインスピレーションを得たという。そういう意味で、劇場公開時には映画歴が長そうな方、年配の方々がたくさん足を運んでくださった。あの「吉永小百合さん」も見にいらしたと聞く。一方で、この映画は極めて新しいのです。その自由なショットの構成、ディテールへのこだわりとカメラポジションの大胆さ。今まさに映画を学んでいる若い方にも大きな刺激になることは間違いありません。なんとも幅広い世代に開かれた、こんな映画を、なぜまだこれがデビュー長編であるグー・シャオガン監督が撮れたのか、今見ても不思議でなりません。

■映画公式サイト
詳しい情報はこちらでご覧ください。
https://www.moviola.jp/shunkosuidan/

視聴ページ:https://mirail.video/title/5230019


■ここ見て・聞いて

◎監督が中国山水画の傑作絵巻「富春山居図」にインスピレーションを得たと言う、息を呑むような横移動スクロールの超ロングテイクや壮大なロングショット。特に、10分以上も横移動を続ける孫娘のグーシーの恋人が河を泳ぐシーンや、山の上の墓からおりてくる家族の姿をとらえる超ロングショットは必見。

◎「市井の人々の民族誌」のように、人々の生活を長い絵巻物のように見ることができる映画にしたいと考えたシャオガン監督。丁寧に描かれた中秋節や春節、清明節、様々な行事や風習は、なぜか日本人にも清廉な懐かしさを感じさせる。

◎音楽は、中国ロック界のカリスマ、ドウ・ウェイによるもの。ウォン・カーウァイ監督『恋する惑星』の主演でも知られる人気シンガー、フェイ・ウォンの元夫と書かれることも多いが、今やロックミュージックだけでなく、アンビエント音楽や映画音楽の第一人者。そのアンビエントな音楽は映画に現代性をもたらしていて必聴。

◎映画の最後に現れる文字は、「一の巻 完」。この映画は絵巻映画三部作の第一作として構想され、監督はすでに第二作にとりかかっている。その詳細はこちらの記事で。
『春江水暖〜しゅんこうすいだん』グー・シャオガン監督次回作『草木人間』製作発表全文


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