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「新型コロナウイルスと反アジア系差別」 〜新歓イベント報告〜

当日のアーカイブ映像は以下です:

 新型コロナウイルスのパンデミックの流行とともに、世界各地でアジア系への差別事件が多発しており、3月にはアジア系女性ら8人が射殺された事件なども起きています。

 そこで、Moving Beyond Hateでは、現在のアジア系へのレイシズム(人種差別)の背景について考えるため、米・カリフォルニア現地のアジア系アクティヴィスト、James HuỳnhとKourtney Nham両氏をよび、4月24日にオンラインイベントを開催しました。

以下、イベントの内容を軽く紹介します。:

①現状・背景を理解するためのキー概念の説明
 まずアジア系差別の問題を理解するために重要な三つの概念が紹介される:
・人種化 (Racialization)
・オリエンタリズム
・黄禍論


②歴史的背景

 次に、過去に遡り、公衆衛生の言説に注目し、歴史的にアジア系がいかに病気・不衛生・病原菌と結びつけられ、人種化されてきたかについてを振り返る。現在でもアジア系を名指して「コロナ!」と叫ぶような差別事件が起こっているが、アジア系の身体そのものを伝染病を結びつけるレイシズム(人種差別)の起源が19世紀末にあることがわかる。


③現在のアジア系差別(2020年Stop AAPI調査分析から)
 さらに、コロナ禍におけるアジア系差別事例を調査したアジア系の反差別団体、STOP AAPI HATEのレポートを分析することで、実際どのような差別が起こっているのか、そしてそれらの差別の特徴を見出す。

差別事例の分析から見えてきたコロナ禍におけるアジア系差別の特徴:
❶アジア系には道徳・倫理がなく、意図的にコロナを広めようとしているという考えの浸透。
❷地政学的覇権争いの影響
→特に米中覇権争いの米国政府高官、大統領による反中言説・行動の影響。
→過去の米帝国主義の影響。朝鮮戦争、ベトナム戦争など、数々のアジアにおける米軍の軍事介入によってアジア系が危険分子として日常的に表象されてきた。
❸アジア系の文化習慣、特に食習慣への偏見
❹アメリカ人への同化・相応しさ
→通報者自身による、自分は中国系でもないのに差別を受けることはおかしい、自分は立派なアメリカ人だ、という主張が見受けられた。
→こういった主張では全く差別に対抗できず、むしろアジア系への偏見を再生産する。


④アジア系への暴力に抵抗するためのオルガナイジング(組織化)
 最後に二人は現在アメリカで行われている具体的な運動を紹介する。

 JamesはChinatown Community for Equitable Development(CCED)という団体を紹介する。チャイナタウン地域のボランティア中心で、黒人、ラテン系、さまざまなアジア系から成り、多様な構成をとっている。現在はロスアンジェルスのチャイナタウンを守る運動を行っている。特に、最近チャイナタウンでは安価な住居を買い上げられ、高級住宅が建設され、何世代も住んでいる労働者階級や貧困世帯のアジア系、黒人、ラテン系の住民がチャイナタウンから締め出され、活力のあるコミュニティが破壊されている(これはしばしばジェントリフィケーションと呼ばれる)。そこで、運動側は手頃で公正な住居価格、賃借人の権利を求めて活動している。私人間のアジア系への暴力が問題となっているが、住居からの強制退去や地域からの締め出しといった構造的なアジア系への暴力こそを念頭において組織化を行わなければいけないと言う。

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 次に、Kourtneyは東海岸におけるアジア系への暴力に反対するためのさまざまな団体による連合つぐりの事例を紹介する。非アジア系団体を含め、さまざまな運動団体がアジア系差別に対してどのように連帯していくべきかを模索している。アジア系への暴力は単に人種化されているだけではなく、ジェンダー化され(特定のジェンダーに最も暴力が向けられる)、かつ労働者階級に対して最も向けられている。それゆえ、これらの団体は労働者階級のアジア系女性の声を運動の前面に押し出す。

 また、アジア系への暴力が私人間の問題に限定されていることに警鐘をならし、国家暴力の対象が人種化されていることとの関連でとらえなければならないとする。特に警察廃絶(警察廃絶、警察からの投資引き上げはBlack Lives Matter運動の要求の一つ)の問題や海外における米軍の軍事介入と国家権力によるアジア系への暴力を結びつけて語る。アジア系への暴力事件の頻発に対して、政府は警察権力の増加をその解決策として提唱している。 ニューヨーク州 ではヘイトクライムを調査し、処罰するためのニューヨーク警察ヘイトクライム対策部隊が結成された。しかし、これらの団体はこのような動きに反対する。警察権力の強化は黒人やラテン系コミュニティへの警察暴力・収監、レイシャルプロファイリングの増加をもたらすだけではなく、アジア系の貧困層、セックスワーカー、非正規滞在者への脅威ともなるからだ。

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報告後の質疑応答

 報告後の質疑応答の時間には、報告に出てきたカリフォルニアのチャイナタウンのジェントリフィケーション(再開発とともに労働者階級が地域から締め出されること)に反対する地域の運動を日本におけるジェントリフィケーションの問題と比較する議論が行われました。また、日本における欧米の概念の受容についてのディスカッションも行われたり、大盛況のうちにイベントが終わりました。


最後に
Moving Beyond Hateでは今後も海外の運動から学んでいきます。普段は勉強会、ミーティング、差別に反対するアクションを起こしています。興味ある方はぜひ連絡ください!

fin.




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