見出し画像

『おとぎ話を忘れたくて』(Nappily Ever After)の感想 ~ありのままじゃ愛されない?~

Netflixで『おとぎ話を忘れたくて』(Nappily Ever After)を観た。ルッキズムに苦しむ主人公に共感しすぎてボロボロ泣いた。

「ありのままじゃ愛されないの?」

主人公のヴァイオレットはアフリカンアメリカンの女性。髪はサラサラ、スタイルも抜群、結婚間近の彼氏は医者。一見完璧なキャリアウーマンに見える彼女だが、実は臆病な女性である。「綺麗なストレートヘアじゃなきゃ愛されない」と思いこみ、毎朝彼が起きる前に髪にストレートアイロンをかけている。

完璧であろうと心がけていたのに、彼氏に「2年も付き合ったのに、君のことをほとんど知らない。毎日がファーストデートみたいだ」と言われ、破局してしまう。

彼女は思う。「美しくいよう、完璧でいようと必死で努力してきたのに、私の何がダメだったの?」

髪にコンプレックスを抱くようになったきっかけは、幼い頃から母に「ストレートな髪は美しい、ウェーブがかかった髪は美しくない」と刷り込まれてきたからだ。彼女の髪が美しいストレートを保てるよう、母は何よりも彼女の髪を気遣ってきた。そしてそれは、大人になっても続いている。彼女の母は、まるで呪いをかける魔女のようだ。

作中の印象的なセリフが「アフリカンアメリカンはアメリカの人口の12%。しかしカツラとウェーヴ(エクステのようなもの)の購入者の70%がアフロアメリカンなんだ。」

白人至上主義の影響なのか、サラサラのストレートヘアが美しいという認識はアメリカに根付いている。

職場でも美しさは求められる。美容の広告を仕事にしている彼女は毎朝、完璧なメイクとファッションで出社する。周りの男性社員の態度は「美しくないと女性じゃない」と言わんばかり。

いつから女性のマナーとして化粧をすることが当たり前になったのだろう?

言葉は、魔法にも呪いにもなる。人生を変えてしまう力がある。

人に言われた言葉が今の自分を作っているといっても過言ではないと思う。

誰かから言われた一言がいつしかそれが自分の中に住み着いて、知らないうちに体の一部となってしまうことがある。いい言葉も悪い言葉も。

私自身も、中学生の時に人から言われたいくつかの鋭い言葉が忘れられない。一度傷ついたら、その言葉は自分の心から消えることはない。

その逆の褒め言葉も、褒められたらとても嬉しいし、忘れない。「そのアイメイク素敵だね」「笑った時の口がかわいいね」

ヴァイオレットは母に言う。「あなたの髪はきれいよ、そのままで美しいのよって言ってくれたら、私は違う人生を歩んでいたのかな」

きっと違う人生になっていただろう。人に肯定されることで、完璧じゃない自分を受け入れることができる。完璧じゃなくてもいいと思ったら、自分にも人にも優しくなれる。

だから彼女は少女に言うのだ。「あなたの髪もスタイルも美しい。そのままでいい。」少女はその言葉に勇気づけられ、自分を愛すことができるようになる。

素敵だなと思ったら声に出そう。どんどん肯定しよう。

最近は、アメリカでも日本でもモデルの多様化やジェンダーレス化が進んでいる。

「他人の批評なんか気にしなくていいの」というヴァイオレットのセリフ。

みんな本当は誰の目も気にせずに好きなことをしたいし、誰かに「ありのままでいいんだよ」って言われたいんだ。

誰もが自分の気持ちを大事に、そして自分に正直になれるような世界になったらいいな。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?