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漫画「ゴールデンカムイ」最終章直前に寄せて。全話無料を見逃すな。感想

め~め~。

ゴールデンカムイといえば、日露戦争で生き残った男と、アイヌの少女が隠された金塊をめぐって北海道やその周辺を含めて歩き回る壮大な漫画となっています。

財宝を探す云々といった物語は枚挙に暇がないほどですが、ゴールデンカムイは、実在する人物をつかいつつ、どちらかというと表舞台に登場することの少ないアイヌの文化も含めて、理解が深まる作品となっており、必見の漫画となっております。

最終章に入るのを記念して、全話無料公開などもありますので、ぜひ、当記事の感想も含めて、「ゴールデンカムイ」を読み返すための一助となればと思っておりますので、お願いします。

ネタバレもしていきますので、気になる方は、平行して読み進めていただけるとありがたい限りです。

具体的な話に入る前に、ゴールデンカムイにおける大まかな魅力を語りつつ、人物への感想にも迫っていきたいと思います。

北海道ロードムービー


実を言いますと、北海道という土地はやたらに広いわりに、名所と呼ばれる場所が多くない土地だったりします。

知床で世界遺産をみて、旭川動物園に行って、小樽で海鮮ものを食べて、札幌で時計台をみるなんていうと、あっという間に行けそうですが、一週間ぐらい行くつもりじゃないとかなりの弾丸ツアーになってしまいます。

「ゴールデンカムイ」は、1900年あたりから物語がはじまっており、大正以前の時代設定になっています。

しかしながら、現代の北海道にもある歴史的な事柄や建造物の面影含めて残っておりますので、現代人がみることで、北海道という場所の魅力を再発見できる漫画ともなっているところです。

「冒険・歴史・文化・狩猟グルメ・ホラー・GAG&LOVE! 感情闇鍋ウエスタン」

というキャッチフレーズが掲げられるだけあって、食べ物についても語られますし、作品をみるだけで、狩猟してみたり、ゲテモノを食べてみたくなるから不思議です。

基本的には、ギャグも満載な漫画となっているため、ヒロイン?であるアシリパさんが、動物の脳みそを執拗に食べたがったりしますが、自分の知らない未知の食材があると思うと面白いところです。


各地の残されたもの

新選組の土方歳三が生きていたら、という設定であることも、一部の歴史好きの人であれば気持ちが昂ってしまうのではないでしょうか。

架空の話かもしれませんが、「ゴールデンカムイ」は、アイヌの文化監修も含めて、かなり考証にも力をいれており、漫画の知識だけを信じて恥をかくなんていうこともないので、人生をより豊かにするためにも一役かってくれるところです。

作中ででてきた、外輪式蒸気船の上川丸にいたっては、北海道江別市の防災ステーションで実物大のレプリカがありますし、重要な場所となっている現月形町の刑務所、樺戸集治監なども見ることができますので、北海道旅行がよくある旅行から聖地巡りの旅になってしまうという利点も備えています。


さて、概要ばかり話していても感想にはなりずらいところですので、内容にも入っていきたいと思います。

各キャラクターの魅力


冒頭でも書きました通り、物語におけるメインの主人公は、アイヌの少女であるアシリパと、日露戦争における最大の作戦となった旅順攻略において生き抜いた兵士である杉元佐一という二人のキャラクターによって成り立っています。


ですが、本作品は、群像劇となっており、杉元佐一とアシリパ、脱獄王と異名をとる白石らを中心としたメンバーと、土方歳三たちのメンバー、そして、第七師団と呼ばれる鶴見中尉率いるメンバーが存在しています。

大きく三つの勢力がある中で、どのグループが一番先にアイヌの金塊を手に入れられるのか、ということが物語の進むべき点となっているのです。


300話近く物語がつくられてくると、キャラクターというのは増加傾向になるのですが、「ゴールデンカムイ」では、各キャラクターたちもちゃんと、その後に生きているということを示す描写が多いところも好感が持てます。

時代的にも物語的にも人の生き死にが強烈に描かれる作品ではあります。

谷垣という男と、インカラマッという女性の関係なども、本来であれば、サイドストーリーの中でひっそり終えるような内容になるはずのところを、二人の成長などを含めてきっちり描きつつ物語に必要な内容にしていたりします。

卓越した占いの力によって自分の死期までみえたインカラマッが、谷垣ニシパで出会うことによって、その運命から逃れることできるという点。

谷垣という男が、熊撃ち名人である二瓶鉄造から受け継いだ意思(村田銃も含む)によって、色々な人の運命が変わっていくということも含めて、人間が人間に影響を与え続けていくということもわかる内容となっています。


影響し合う人たち

「ゴールデンカムイ」は、敵と味方がハッキリわかれているわけではないところもまた魅力です。

三つのグループは、それぞれ、離反したり戻ったりするものたちがいます。

各キャラクターが大変な魅力を持っているため、主人公たちがどこについていったとしても不思議はありませんし、また、それらの人々に影響を受けることで、成長していく姿もみることができます。

特にその成長が顕著なのは、脱獄王白石であり、当たり前ですが、一人で脱獄をしていた白石が、結果として、みんなと協力していくようになったりしていく姿は、胸が熱くなるところです。


囚人たちの身体に描かれた刺繍を剝いでいくのが当初の目的となっていましたが、その囚人たちの個性派っぷりにも目をみはるところです。


特に、シートン動物記でお馴染みシートン博士をそのまんまもじった名前の男、姉畑支遁(あねはた しとん)に至っては、もう、ここでは書けないほど個性的な人物です。

個性というか、変態も行きついたところまで行った人物であり、その姿には、一周まわって心打たれるほどです。

絵面的に、あまりにひどすぎて、笑ってしまう、という経験をした人も多いのではないでしょうか。

他には、暴力を自己表現の一つとして拡大させてしまったキャラクター、岩息舞治(がんそく まいはる)もまた、途方もない変態ですが、これだけ、とんでもない囚人たちをみていると、何がまともであるかわからなくなってくるぐらいです。

しかし、あまりに個性が強すぎて逆にモテてしまう人物もいたりしまして、牛山辰馬(うしやま たつうま)に至っては、登場初期こそ女性に対してひどい扱いをする人物かと思いきや、確たるポリシーを持った男であり、チ〇ポ先生と作中で呼ばれて、アイヌの人たちからモテモテになってしまうというエピソードまであって、人物の掘り下げがとんでもないところにいっていたりもします。


日露戦争後


さて、本作品を理解するうえでぜひ見ておいてもらいたい映画があります。

それは、他記事で詳しく説明しておりますが、映画「二百三高地」です。

「ゴールデンカムイ」において、絶対にはずすことのできないキャラクターである杉元、そして鶴見中尉率いる第七師団。

いずれにしても、日露戦争の中でももっとも重要であった二百三高地での戦いが描かれた大作映画となっており、日本映画の歴史の中においても重要な役割を果たす作品となっています。

どういった人たちが、アイヌの隠された金塊を探しているのか、ということが前提知識としてわかるだけでも、「ゴールデンカムイ」をより深く理解するための補助線となることでしょう。

アイヌ文化について

また、欠かすことのできない要素として、アイヌ文化というものがあります。

北海道が命名されて100年が過ぎ、あまり盛り上がった気配はないものの、北海道にも歴史が流れていることを感じさせてくれるところです。

物語後半に至っては、榎本武揚といった北海道の歴史において欠かせない人物もゴールデンカムイには関わってきますし、アイヌ文化というのは、北海道のいたるところにその影響がみて取れます。

地名一つとってもアイヌ語をもじったものが大量にあります。

しかし、アイヌは文字を持たない文化であるため、なかなか文化を知る機会というのは少ないのが実情ですし、その精神性も含めて理解できる漫画は、今後も含めてでてくることはないでしょう。

ちなみに、熊による獣害事件については、吉村昭による熊嵐が有名ですが、熊という存在が北海道においてどのようなものかも含めて、よくわかるのではないでしょうか。


キャラクターに対する感想

キャラクターについて、改めて総括して感想を述べてみます。

「ゴールデンカムイ」のキャラクターたち、とくに、囚人たちについては、自分たちの個性というものに疑いを持っていません。

弟が目の前で死んだことがトラウマで、自分も無残に殺されたいという欲求と性欲が結びついてしまった辺見和雄。本来であれば胸糞悪いぐらいの殺人犯ですが、彼らは彼らなりのポリシーに基づいて、それをまったく偽っていないところがポイントです。

自分の欲求や欲望に対して忠実であれば忠実であるほど強い、というキャラクターでいうと、鬼滅の刃のキャラクターたちも、そんな風になっておりますが、キャラクターが存在するにあたり、欲求の強さというのはどこまでも大事なのでしょう。

それぞれが自分たちの目的や欲求を明確に持っており、実は、主人公である杉元や、アシリパ達のほうが、揺れ動いていたりします。

杉元に至っては、アシリパを大事にするあまり、本来の自分の想いに気づけなくなって、白石に怒られたりする場面もありますし、アシリパ自身もまた、自分がどうすればいいのかで悩みます。


とはいえ、「ゴールデンカムイ」は、キャッチフレーズにあるとおり、ギャグ&ラブ! そして、なにより、感情闇鍋ウエスタンと銘打たれるほどに、むちゃくちゃだけれど調和がとれています。

最終章に突入することで、物語は決着にむかっていくわけですが、一気見してこそ面白い作品ですし、先が気になる物語となっていますので、無料公開されているうちであればそちらを見つつ、どうしようもなく好きになった人は、全巻大人買いをしていただきたいと思います。

以上、漫画「ゴールデンカムイ」最終章直前に寄せて。全話無料を見逃すな。感想でした!


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