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『あはらまどかの静かな怒り』衣笠竜屯監督&川村正英プロデューサー&キャストインタビュー

2022年末、私たち映画チア部神戸本部は全編神戸撮影の映画『あはらまどかの静かな怒り』の撮影現場を見学に伺いました。
それぞれの場面がどう撮られているのか、緊張感ある瞬間から和やかな時間まで多くの人が関わる撮影現場のすべてを見せていただき、とても貴重な経験でした。


本作は11月11日(土)から元町映画館にて1週間限定上映されます。そこで衣笠竜屯監督、川村正英プロデューサー、主演の西村花音さん、片山瑞貴さんを始めとする出演者の皆様にインタビューを行いました。映画鑑賞のお供にお読みください。
(文字起こし内では敬称略とさせていただいております。)

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チア部:続編ということですが、本作の製作の経緯を教えてください。

衣笠:川村プロデューサーとキアロスタミ監督の『友だちのうちはどこ?』を観て、どこかへ出かけて何かを持って帰るような映画を撮りたいと話し合ったのが最初です。思春期という子供が大人になる危うい時期の映画を撮りたいというのはずっとありました。

川村:子役の問題もあって中学生くらいまで年齢を引き上げて製作することになりました。『友だちのうちはどこ?』に着想を得ていますが、少年を少女にするのは監督のアイディアでしたね。

チア部:思春期のプレッシャーなどがテーマとしてありましたが、思春期の子供を撮りたいという思いからテーマが決まったということでしょうか?

衣笠:キアロスタミ監督のように思春期の話で社会性があるような物語、というテーマは始めからありました。思春期から大人になるまでの話は児童文学でもよくありますが、そこに社会性を加えてどのように今を生きていけばよいかということを描きたかったのです。

衣笠:今作をご覧になった皆さんはこれだけのことを汲み取ってもらえないと思いますが、それこそが児童文学なんですよ。『スターウォーズ』や『風の谷のナウシカ』を観てなぜ感動するかって当時の子供たちは分からないじゃないですか。でも感動する。徐々に年齢を重ねてわかってくるものです。今作もそのような形で捉えてもらうのが私たちの理想です。

川村:「子供」を中心に描きながら、実は「社会」を描写するのはかなり難しかったですね。

衣笠:「良い子になろう」とするのではなく「悪い子にならないように」しようとしている子が多いと感じています。

チア部:キャラクター作りをしていくうえでの苦労をお聞かせください。

西村:私が演じたまどかは思春期真っ最中で、たくさんの悩みを抱えています。私も今中学校三年生で同じくらいの年齢です。悩んでいることもあるので自分と重なる部分がたくさんありました。学校のシーンは自分と重ねながら演じた部分もありました。役作りが初めてだったのですが、早くまどかになりたいという一心でした。

川村:撮影前はオンラインミーティングをしましたね

西村:そこで台本を読んだ私の解釈が監督の考えと合っているか確認したり、私の考えや思いを伝えたりしました。

衣笠:「中学生はこんなことあるよね」とすり合わせもしていました。主人公と同い年の子たちと話すことで気づかされたところもありますし、西村さんの意見で台本が変わったこともあります。

チア部:片山さんはまどかに対する壁のような役で豊かな表情が印象的でした。

片山:元々は別の役を演じる予定だったので、役作りで新しい一面を出さなければいけなくなりました。監督からは「自分が思うように演じればいい」という助言をいただいたので「笑う」ということを取り入れました。表情一つで伝わり方は変わるので、どうすれば臨場感が効果的に伝わるかを考えて撮影に臨みました。

チア部:「笑い」を片山さんから提案されたとき、監督はどのように思われましたか?

衣笠:提案されたということは片山さんの中にもうイメージが出来上がっていたということだと思うので、これを活かさない手はないなと採用しました。笑い方の種類が違うのでは?と撮影中にアドバイスをしたことはありました。このように2人で共通理解を持ち始め、1つのキャラクターを作り上げていくことが出来ました。

チア部:監督と役のすり合わせをしたときに、自分の考えとのギャップはありましたか?

西村:まどかは不思議なキャラクターで、台本を初めて読んだときに人物像をつかめませんでした。とにかく自分の感情を表に出せない引っ込み思案な女の子だという印象でした。劇中ある人物と出会ってから心を開いて良く話すようになります。それはその人物にだから言えることで、単に話し相手が欲しかったということは監督やほかのキャストさんと話していく中で気づけたことです。

チア部:まどかのお母さん役を演じられた泉さん(泉希衣子さん)は1日だけの撮影だったとお聞きしました。その中でかなりインパクトを残されたように感じましたが、どのように撮影に臨まれましたか。

泉:壁のような、捉えられない母親の存在として私の中では「強い母親像」というイメージを持って臨みました。ただ、監督からは「娘に接する時はもっと気を遣って喋ってください」と言われ、たしかに映画全体で考えると、まどかの成長が母親の成長にも繋がっていて「あ、そういうことか」と腑に落ちました。

そのぶん、まどかの夢の中に出てくるシーンでのまどかの母親に対するイメージはメデューサのようで。実際の母親とまどかの持つイメージのコントラストのようなものをどのように印象づけるかというのも学ばせてもらいながら演じました。

衣笠:怖いんだろうなというのはうちの娘と妻とを見ていても若干思いますし、娘からするとそう見えてしまうのも母親からするとそんなつもりはないのも横から見ていて感じます。結局それって子供が成長する問題じゃないですか。親父が嫌だったりお母さんが嫌だったり、自分の思い込みだったりする。
ちなみに最初のオーディションの時、泉さんはめちゃくちゃ怖かったです(笑)

泉:ありがとうございます(笑)

川村:そういった環境に西出さん(西出明さん : 校長役)のようなお方、おじさんがいると場が上手く回りますね。若い人たちとそれを見守るおじいちゃんでバランスがとれてすごくやりやすい。突然じょうろが宙に現れても、西出さんだったら納得できる。

チア部:じょうろはどういったところから生まれたんですか。

川村:まどかは山の中でも笑顔が気になってしまうけど山には鏡がない。それなら水面を作って覗かせればいいということでじょうろにしました。

西出:ほとんど撮影がアウトドアでしたので、テストも含めて山道を右や左や、一体何㎞歩いただろうと(笑)

川村:ちなみに山でのシーンですが、妖精の声を担当した川久保さん(川久保まりさん)も登っているんですよ。アフレコではなく、西村さんが演技している横、カメラがフレームアウトしているところの声を拾っていました。

チア部:そうされた理由は何ですか。

衣笠:やっぱり、あの花は重要ですから。なんなら恋人役なので、この2人が上手くいかないとと思ってそうしました。花役はいろいろと注文を出しましたよね。

川久保:いえいえ。私は少年声をしたくて声優になったので、こういった形で出していただいて恋人役にもしていただいて、すごい宝物のような経験になりました。

衣笠:最後の台詞も3テイクか4テイクくらいやりました。

川久保:楽しかったです。電気をカチカチと消して4人くらいで密集して、小屋の中でちっちゃくなりながら撮ったりもしました。あそこは監督の気持ちを全部乗せたかったところだったので。

チア部:監督自身が学生時代に触れておいてよかった作品はありますか。

衣笠:そういうことだと大林宣彦監督の『ねらわれた学園』です。あれ見てなかったらこの映画できてませんので。映画として成り立つのであれば現実から離れて無茶をしても良い、映画の中のリアリティがあるのだから。それで映画を好きになりました。

チア部:片山さん、西村さんはまだ学生途中かもしれませんが、いかがでしょうか。

片山:私はこの作品を撮るにあたって一番最初に『赤毛のアン』を読み直しました。雰囲気や作品の作り方は違うんですが、『赤毛のアン』の序盤は主人公が自分を乗り越えていく場面がすごく多く、自分自身が役を演じる上でどうすればよいかを考えることができました。
撮影が始まる前や空いている時間は読み直して、もらった台本を読み合わせながら、語りかける場面が多い役としてどうすればもっと心の中に入り込めるかをイメトレしていました。

西村:私も撮影が始まるまでに1冊、一番好きな小説でもう6回くらい読んでいる『鏡の孤城』という小説を読み直しました。
その小説が、お母さんと上手くいっていなくて学校でもいじめに遭って不登校になっている主人公が謎の世界に入り込むというお話で。その世界のお城には同い年くらいの子たちが7人ほどいて、その子たちも主人公と似た境遇で悩みを抱えている。そんな彼らも、はじめはどう接していいか分からなかったのが何回も会って打ち解けるうちにそれぞれの悩みも解決するようになるんです。
今回の映画の、まどかとかれんの近づききれない関係だったり、お母さんとの葛藤だったり、そういった気持ちをこれを読み直すことで思い出したいと思って読みました。

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映画『あはらまどかの静かな怒り』は11月10日(土)より元町映画館にて1週間限定上映。全日19時10分スタート。

《舞台挨拶予定》
11(土) 衣笠竜屯(監督)、西村花音(主演)、片山瑞貴(助演)、川久保まり(助演)、夢香(助演)
12(日) 衣笠竜屯(監督)、西村花音(主演)、片山瑞貴(助演)、川久保まり(助演)
13(月) 衣笠竜屯(監督)、西出明(助演)
14(火) 衣笠竜屯(監督)、片山瑞貴(助演)、川久保まり(助演)
15(水) 衣笠竜屯(監督)、泉希衣子(助演)
16(木) 衣笠竜屯(監督)、泉希衣子(助演)、篠崎雅美(助演)
17(金) 衣笠竜屯(監督)、西出明(助演)、川久保まり(助演)

公式HPはこちら↓
映画『あはらまどかの静かな怒り』公式サイト (minatokan.com)

執筆:映画チア部神戸(ユーキ)(おく)

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