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出張ミニシアター巡り🚄【THEATER ENYA】(佐賀県・唐津市)後編

前編記事はこちら🔽

後編の最後にはTHEATER ENYAならではの映画体験についてもお話しいただきました⭐️
最後までお見逃しなく…!!

(聞き手:さや)

チア部:大林宣彦監督『花筐/HANAGATAMI』(2017)では唐津を舞台として映画も製作されていて、THEATER ENYAでは現在も月1回上映されています。この映画を市民の皆さんは、どのように観て感じているのかお聞かせください。

甲斐田さん:2017年のこの作品の唐津での封切の先行上映会では、ほとんどの全ての関係者がこの映画を観ました。この映画には3000人もの人がエキストラだとかボランティアだとかで関わったんですが、約12万人の地方都市で先行上映会のチケットが1万枚売れたんですよ。単純計算では、10人に1人くらいの計算です。

それで、感想はどうだったかというと、もともとがちょっと難解な檀一雄の純文学小説が原作だったのに加え、大林監督独特の世界観が加わって、地元の人は正直「あまりよくわからなかった」って思われた方も多かったように感じました。この映画に携わるときの期待値が、エンタメ作品のように思っていた人もいて。当時唐津には、映画館がなくて、映画をみるとしたら、近隣都市のシネコンにいくしかないから、こういうアート系の映画を、ほぼ初めて観る人も多かったんじゃないかな。だから、みんなはすごく、「わけがわからない」という感じだったと思う、正直(笑)

ただ「何かすごい映画ができた」というのは、皆ものすごく感じていて、それを証明するように、毎日映画コンクールで日本映画大賞とか、高崎映画祭で最優秀賞を受賞して、やっぱりすごい映画だったんだ!ってなりましたね。その後も、いろんな映画祭に招待されて、日本の片隅で製作した映画が、有名無名合わせて世界20カ国以上の映画祭で招待&上映されて、しかもイギリスや香港、台湾ではDVDも発売されました。大手の配給の手も借りず地方で製作した映画で、こんな成果を残せた映画って、たぶんないんじゃないかな(笑)

チア部:オール唐津ロケで、皆で資金も集めて市民の多くの方が協力してくれたからこそできた映画だと思います。月に1回映画化で上映されている理由を教えて下さい。

甲斐田さん:製作当時は、唐津の産官民が一体となって映画製作を支援しましたが、時がたてば記憶が風化していくのも世の常。この作品は、唐津の人が成し遂げた世界に誇れる文化遺産、レガシーだと思っていて、それを次世代に語り継いでいくために、毎月1回上映し続けています。そして、昨年(2021年)からは、観光庁の事業で、映画を見た後に映画のロケ地めぐり、聖地巡礼する観光の取り組みを始めました。私たちにとっては何回も見た映画だけど、観光客の方にとっては唐津で製作された世界的に評価された大林監督の映画を唐津の映画館で観て、映画の舞台になったロケ地をめぐりグルメを堪能する。特に海外でこれだけ評価されているたから、将来インバウンドにもすごく繋がる映画なんじゃないかなと思っています。あとは、将来当時の記録をまとめた本を出したいねなどと市民サークルの皆さんと話しています。関わった人たちがいなくなっても、このまちはこういう映画を皆で作ったまちなんだよ、っていうことを後世に語り継がれたらいいですね。それだけ価値のある映画が残せたんだから。

映画『花筐/HANAGATAMI』公式サイトはこちら🔽


チア部:年に1度開催されている映画祭
「唐津演屋祭」についてお聞かせください。

甲斐田さん:唐津演屋祭は、もともとは佐賀県の“Lives beyond”というコロナ禍でのクリエイターズ支援事業ではじまりました。映像クリエイターへの支援を映画館がするという事業だったんだけど、私たちは映像を作る専門家ではないので、結局映像を作る製作会社に委託をして、それを納品するだけになるんだったら、面白くないと思って。映像を作る人を応援する映画館になろう!と全国のクリエイターのみなさんから映像を募集しました。そしたら思いのほか応募があって。小さな地方の映画館で、はじめての公募でしたが、クリエイターの人たちがコロナ禍の中で発表する場を失っていて、その場を渇望されているのがすごく伝わってきました。そして、素晴らしい映像作品に沢山出会う事ができて、私達も勇気をもらったし、集まった作品を1人でも多くの人に見てもらいたいなって純粋に思いました。

それが1回目で2回目からはちゃんとコンペ形式にしました。審査員に映画監督やプロデューサもお招きしたりして。映画祭で感じることは、クリエイター支援でありながら、結果的には私たちの成長にもすごくつながるってこと。普段の商業映画では見ないような映像を見て刺激を受けて、映画に対する先入観や固定観念がどんどん壊されていくから。

あとは10年以上続く映画館を支える市民同好会の方たちやまちの人が、唐津にクリエイターの卵の人たちが集まって来てくれるっていうことにとても誇らしい気持ちになってくれたり、一方で全国から唐津に来てくれたクリエイターの皆さんはSNSで唐津にきていることを発信してくれたので、私達の映画館や唐津のことをすごく知ってもらえる機会になったんですよね。

通常、映画館が情報発信で意識するのは、映画館に来ることができる近隣都市の皆さんで近くの施設や飲食店にチラシを配布するんだけど、映画祭となると一気に全国、全世界が情報発信の対象になるから、全国の映像学校や大学、もしくは映画館にポスターやチラシを送るのから、そういう情報発信からも唐津が全国とつながって私達を知ってもらえます。

チア部:第2回目の唐津演屋祭には100をこえる応募があったそうですね。どんな方が応募され、映画祭の様子はどのような感じでしたか?

甲斐田さん:はい、第2回では110作品の応募がありました。一番多いのは東京で、あとは大阪が圧倒的に多かったです。人口比率や映像学校(の数や立地)によるんでしょうね。映画祭では、実際ノミネートされた方が唐津に来てくださり盛況で、映画祭のあとには、ゲスト監督やプロデューサー、地元の人と作り手の人と交流会を開催して、ああだこうだって感想を言い合ったりしてました。そういったことが地域の文化力を底上げしていくんだろうなと感じています。

また、そういう人たちが来てくれるのにふさわしくいようと、更に皆さん映画を見るようになりました(笑)。本当に映画祭は、良い循環を作ってくれます。将来は、優勝者に次回の作品がつくれるような奨学金制度を設けれたらいいなと思っています。それが映画祭の次のステップ、夢かな。

チア部:すごく素敵な夢ですね。是非実現して欲しいです!


「唐津演屋祭」公式サイトはこちら🔽


チア部:THEATER ENYAならではの映画を見る体験、映画館で映画を見る体験についての甲斐田さんのお考えをお伺いしたいです。

甲斐田さん:「THEATER ENYAならでは」ですか…。うーん、立地的にも唐津の「まち」と一緒に映画館を楽しめるという事ですかね。唐津は江戸時代から続く城下町で、唐津おくんちという祭りや唐津焼などの伝統文化が豊かですし、海山川の自然にめぐまれ食材が豊かで、とにかくグルメの名店も多い!映画館の前後に唐津のまちをぶらりと散策したり美味しいお店やカフェにいって、映画と一緒に唐津をまるごと楽しんでほしいですね。

あとは、THEATER ENYAに限ったことではありませんが、映画館で映画を見るっていうのはやっぱり特別だなと思いますね。スマホで映像見ちゃいけないとは思わないし、私もネットフリックスで海外ドラマ見まくりなんだけど(笑)映画としてつくられた作品を、暗闇の中でしっかりその映像をその世界観に入って観ると、感じ方や伝わり方が全然違う。同じ映像でも、表現されている映像が伝えるもの、物語の奥行きが映画館で観るときとそうでないときでは全然違い、映画館は時に圧倒的なに映像体験ができたりする。
同じ映画でも観ている私達が吸収できるものも違ってきますよね。気づきも、感動の量も、質も。だからTHEATER ENYAに限らず映画館で映画を観るっていうのはそういうすごく豊かな映像体験ができる側面があると思っています。

チア部:地方に映画館があるだけで、いろんな世界や価値に触れられられますね。

甲斐田さん:はい、少子高齢化社会では、価値観や生き方の多様性を感じにくくなると思います。2人に1人以上が中高年の社会ではお年寄りになれば誰でも怪我したくないし病気になりたくないしというので保守的になる。いっぱい苦労もして生きてきた人生の中で、わざわざもう新しい価値に刺激を受けたり、ドラスティックに生き方を変えたりするのは避けたいと思うのは自然な事でもありますが、そんな人たちが多くの人口割合を占める社会で、どうやって地域が多様性を保つか、自分自身どうやって多様であったり、自由であったり、いろんな生き方をする勇気を持てるか。
映画を見たら元気になったとか、自分は自分であっていいんだと勇気が出たとか…映画、芸術には、そんな力があるから、そういう映像体験を少しでも多くの人にしてもらえると嬉しいですね。


「シアターエンヤふるさと納税支援」公式サイトはこちら🔽


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