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『ティーンエイジ・スーパースターズ』 カジヒデキさんトークショー


こんにちは、映画チア部大阪支部の(かんな、なつめ)です!

1月16日に、出町座にて映画チア部大阪支部が企画・配給したグラスゴー音楽シーンにフォーカスしたドキュメンタリー映画『ティーンエイジ・スーパースターズ』の上映後カジヒデキさんとリモートでトークショーを行いました。
リアルタイムでグラスゴーの音楽シーンが好きだったカジさんからたくさんお話を聞けました!
ぜひ、最後までお読みください〜!

(聞き手:ちこ、そう)


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カジさん:カジヒデキという名前でソロデビューして25周年になります。元々は、89年に結成したブリッジというバンドで活動をしていて、その後インディーで活動したり、メジャーで活動したりということをしていたんですけれども…。僕的には、こういったグラスゴーの音楽シーンというのが80年代の終わりぐらいから、ほぼリアルタイムでずっと大好きで!もちろんフリッパーズ・ギターの小山田くんや小沢くんのことも。元々、彼らのデビューライブを見るきっかけがあり、それからずっと彼らの活動を見てきて一緒に友達だったこともあって。彼らとはこういうグラスゴーのシーンを一緒に聴きながら過ごしたという感じだったんですね。実際にブリッジというバンドでは、90年にサラ・ナイト(サラ・レコーズというレーベルを取り上げたイベント)というのがあって、そのときにフロントアクトをやったりだとか…。また、当時にエドウィン・コリンズやモノクローム・セットが初来日した時も、実はフロントアクトをやらせてもらっていたりしたんです。BMX バンディッツ等も観に行ってサインを貰ったこともあり、結構グラスゴーのアーティストたちとの交流もありました。実際、パステルズのスティーヴンたちともその後結構仲良くさせてもらって、グラスゴーに遊びに行ったりするときは一緒にご飯を食べるということも結構していて。パステルズが僕の曲「イルミナム ソング」をカバーしてくれたこともあります!そういう意味ではすごくグラスゴーのシーンとは結構関わりがあると思います。
今日はよろしくお願いします!

チア部:ありがとうございます!よろしくお願いします!最初に、この映画を観ていかがでしたか。

カジさん:実際に僕が当時好きだった80年代後半、それこそヴァセリンズがデビューした頃ぐらいからグラスゴーの音楽を割と聴きだしたのですが、圧倒的に情報が全くなかったです。80年代に関して言えば、「英国音楽」というファンジンがあったんです。その「英国音楽」に編集者たちが実際にイギリスに行って色々な場所でライブを見たライブレポートや、インタビューが載っていて。そこからそういうシーンを感じることはできましたが、映像を見ることはほとんどできなかったんです。たまたまテレビのBSで見ることができたこともあります。この映画は当時物凄く貴重な映像がたくさん出てきて、事実としては知っているけど、初めて見た!みたいなのがありました。例えば、ジーザス&メリーチェインの暴動ライブ。一曲演奏して、その後観客が発狂して大暴動になるという。あれって当時はとても有名な話で。話としては当時から知っていましたけど実際のその時の映像がああいう風に映って、すごくびっくりしました。いずれにしてもほぼ初めて見る映像ばかりで、初めて知る事実もたくさんあって。自身の中で謎に満ちていた部分が、繋がった感じがして良かったなと。素晴らしいドキュメンタリーだと思いました。

チア部:カジさんが音楽を始めたきっかけはなんですか?

カジさん:僕自身、小学生ぐらいからレコードを買ったり、音楽を聴いたりすることが好きで、常に新しい音楽を聴きたい少年だったんです。高校生になって、パンクとの出会いがあって。僕が高校の頃って丁度いわゆるゴスっていうパンクがイギリスで流行っていたのもあって、そういう影響もすごく強かったんです。でも、やっぱり音楽系の雑誌を読んでいると、例えばアズテック・カメラ、スミスといったこういう音楽って面白いなって興味を持ちだしたところから割と、イギリスのギターポップ寄りのバンドをすごく聴くようになりました。その中でパステルズに出会って、ちょうどそこから色々なバンドがデビューしていき、盛り上がったし、さまざまなジャンルも勿論聴きましたけどやっぱりパステルズのスティーヴンが神様のような存在で…。フリッパーズ・ギターの曲にもあるようにみんなパステルズが大好きだった。まさに当時はリアルなグラスゴーシーンだったというか。90年代になると、僕もブリッジというバンドを始めて渋谷にあるレコード屋でバイトをしながら音楽活動をしていたので。それこそBMXは最初の可愛らしいインディーポップという感じから、もっとビーチ・ボーイズだとかアメリカのサンフランシスコ的なサウンドを入れて変化していく様子もこの映画では描かれていて、最初BMXって良い意味でへっぽこな、ユーモラスな感じがあったんですけど、より洗練されたポップスをやるようになったのはなんでなんだろうなって思っていたんです。映画をみ、ダグラスとティーンエイジのノーマンとショーンが幼馴染というか、すごく仲良くしていて彼らが同じスタジオで会話していくうちにこういう音楽もいいよなって感じで変化していったんだということがすごくよく分かったし、ティーンエイジがああいう感じのサウンドになったのは、他の人たちもそういうことやろうかなと思うだろうなと思うところがあって。あれはすごく面白かったなと。

チア部:確かに映画の中でもダグラスが作るBMXの音楽は結構ユーモラスな感じはします。星に自身の証明写真を貼ったジャケットをつくったりだとか。

カジさん:そうですね!当時、この映画ではインタビューでダグラスの部屋を映すシーンがありますよね。好きなレコードを紹介しているシーンを昔どこかで見たことがあって。パステルズのスティーヴンが一番みんなに影響を与えたと思うけど、インディーポップの可愛らしさというものはやっぱりダグラスなんだなとこの映画を観てよく分かりました。

チア部:例えば映画の中ではダグラスがユーモアのある感じで描かれていましたが、当時持っていたイメージと映画を観てからのイメージで違った部分はありましたか?

カジさん:結構色々ありましたね。
スープ・ドラゴンズの最初の頃の曲ってインディーポップの中では代表的で当時自分もかっこいいなと思っていたんですけど。あの当時って流行りが流行りというか、例えばプライマルはファーストの頃はフォークロックみたいなサウンドをやっていたのがセカンドになると急にガレージロックになって、それがまたすぐ後にロールズ、カムトゥゲザー、スクリーンズマドリカみたいになっていくみたいに、たった3年くらいの間の出来事としてたくさんの変化が起きて、おのずと他のバンドも同じようになっていった。スープ・ドラゴンズの「アイム・フリー」という曲を当時自分たちも好きだったんですけど、でも何となく魂を売った感は何なんだと思って、スープ・ドラゴンズって何となくかっこ悪いバンドだと思っていました。この映画を観ると、ダグラスとノーマンと同郷ですごく仲良くて、ボビーが始めたクラブイベントで衝撃的なデビューを飾ったりその後もどんどん人気が出たりワム!のマネージャーになってあんな風にビッグになっていったりしたということが分かった。実際彼らも言っているように、自分たち自身もそういう風に思って、アメリカで成功もするんだけど最終的には解散してしまう。でも時を経て今は良い友達として付き合ってるという。スープ・ドラゴンズにはこんな流れがあったんだというのは驚きましたね。
あとは、プライマルとジーザス&メリーチェインと、他の例えばパステルズとかティーンエイジ・ファンクラブとかBMXとかヴァセリンズとか、当時からちょっと違うなと思っていたけど、映画を観ることでよりチームが違う感じがしました。特にジーザス&メリーチェインは、当時から尖っていることはよく知っていたけど、あんなにも尖っていたんだというのは驚きでした。ジョイ・ディヴィジョンなんてくそ食らえって言ってるような映像は当時も観たことがなくて、あんなこと言ったらイギリス中の嫌われ者になるだろうなっていうぐらいビッグマウスっていうか。あれはけっこう衝撃的でしたね。もちろんジーザス&メリーチェインは好きだったし今も好きなんだけど、ああいうこと言ってると今だお寂しい感じがするじゃない(笑)。仲間があんまりいないというか。まあロックスターは尖ってるほうが良いとは思うけど、色々考えさせられるものがありますね。いずれにしてもボビーという人はあのシーンの中ですごくビッグな存在だったんだなと思う。昔クリエイション・ストーリーっていう本を読んだり映画を観たりしたけど、あの中でもティーンエイジ・ファンクラブについてよく書かれていて。彼らは本当はもっとビッグになれたはずだけど、ロンドンに行くことを拒んだ。グラスゴーの人たちは基本的にはロンドンに行かずにグラスゴーでいいじゃんみたいな。プライマルはロンドンに行くけれど、ティーンエイジ・ファンクラブはロンドンに行かなかった。実際それでよくて、自分たちのペースやスピリットを大切にしながら音楽をやりたかったんだなって。実際両者とも良かったし、ティーンエイジ・ファンクラブはそれで良かったんだなと感じました。

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チア部:これからお客さんからの質問を受け付けたいと思います。

お客さん:カジさんが2年前の3月に出町の商店街のイベントに来られるはずだったということで予約していたんですけど、コロナで中止になってしまったことがありまして…。

カジさん:ありました!

お客さん:カジさんはフランス映画などにお詳しいので、また出町座でカジさんのおすすめする映画とかでコラボするなどして出町座に来てほしいです。

カジさん:とっても嬉しいです、ありがとうございます!
そのイベントの前の年くらいに、堀江博久くんっていうキーボーディストの友達と、出町座の何軒か先にあるお店でライブをやったことがありました。そのときの空き時間に素敵な映画館があるんだって出町座に行ったりお茶をしたり古本を買ったりしたんですけど。こういう映画館は素敵だなって思ってたので、こうして今回このお話をいただけて嬉しかったです。また機会があればそういうことができたら良いなって思うし、そのときは映画を観る時間がなかったので、今度出町座にいけたときは映画も観たいなと思います。

お客さん:グラスゴーのシーンで、今でも交流がある方はおられますか?また、その方はどんな方なんでしょうか?

カジさん:今もずっとメールのやりとりとかをしてるのはパステルズのカトリーナぐらいですかね。
特に2000年代だとカトリーナとかアギーとか、パステルズのサポートキーボードをやってたインターナショナル・エアポートっていうバンドのトムと交流があって、何度かグラスゴーに遊びに行って、スティーブンとも何度か一緒にご飯を食べに行ったりライブを見に行ったりしました。いずれにしても彼らはみんな本当に優しいですね。
僕が知ってる他でいうと、ヴァセリンズが再結成して10年くらい前に来日した際にライブが終わった後に一緒に飲みに行ったりしたんですけど、ユージン・ケリーとかフランシスとか、ティーンエイジ・ファンクラブのノーマンとか、みんなとにかく優しいオーラに包まれていて話すことも丁寧で優しい。ユージンは、この映画を観ても思うんですけど、元々本当にかっこいい街の少年だったんだろうなと。ちょっと斜めに構えている感じとか。今でもずっと朗らかな感じの人ではないけど、すごく気の利いたかっこいいことを言ったりする。とにかくみんなすごくいい人ばかりだなっていう印象です。
僕はスウェーデンのバンドの人たちとも交流があって、特にタンバリンスタジオっていうスタジオの周辺のバンド、カーディガンズとかエッグストーンといったバンドの人たちも同じ空気を感じる。みんなすごく優しい感じの人たちっていうかね。やっぱりいわゆるメインの街ではない、例えばイギリスだとロンドンとか、スウェーデンだとストックホルムとかの人だと、もちろん良い人は沢山いると思うけど、「東京的」っていう感じがあると思うんですけど、グラスゴーとかスウェーデンのマルネっていう町とかだと地方都市の良さがあるっていうか、人も穏やかな人が多いのかなっていう感じがあります。

チア部:本日はお忙しい中お時間をいただき、ありがとうございました!

カジさん:ありがとうございます!話したいことも沢山あるんだけどなかなか。皆さんきっと本当に素晴らしいドキュメンタリーを観られたなっていうのは自分も観てみてそう思ったし、こういう音楽が好きな方は沢山おられると思うので、いつかみんなが観られたらいいなと思いました。

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