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2024年6月-7月の読書日記

2024年6月-7月

こんにちは、入江悠です。
新作映画『あんのこと』の劇場公開がおかげさまでロングランしています。
嬉しいことです。


今回は2ヶ月ぶんをまとめて、2024年6月と7月に読んだ読書日記です。

1、「満映秘史」

(岸富美子・石井妙子 著)

これはすごいノンフィクションでした。10代前半で映画編集の世界に飛び込んだ少女が、戦時中に「満映」へ渡り、編集技師デビュー。そこから怒涛の半生を歩むことになります。内田吐夢などの有名監督や李香蘭などの有名女優、そして理事長として赴任してくる甘粕正彦など、数々の人たちとの出会いと別れ。敗戦後には中国で強制労働に従事し、家族で死線を漂い、やっとの帰国。いつか映画化してこの女性の歩んだ道を記録したいと強く思いました。


2、「目的への抵抗」

(國分功一郎 著)

何を読んでも面白い國分功一郎さんの薄めの一冊。と思ったら、やっぱり面白くて、内容は分厚い思想に支えられていました。<自由は目的に抵抗する。そこにこそ人間の自由がある。にもかかわらず我々は「目的」に縛られ、大切なものを見失いつつあるのではないかーー>。コスパなどというつまらない言葉に縛られがちな私たちに大いに問いかける。


3、「責任という虚構」

(小坂井敏晶 著)

映画『あんのこと』を作り、上映しながら、「責任」というものについて考えてきました。その一環で手に取った本著。大変勉強になりました。「自己責任」というものの無根拠さの一端が理論的に少しわかった気がします。著者のズバズバと論理を進めていく文体もドライブ感があって気持ちが良いです。他の著書も読んでみよう。


4、「存在消滅 : 死の恐怖をめぐる哲学エッセイ」

(高村友也 著)

いつからわたしは「死の恐怖」から解放されてしまったのだろう。子供の頃はあんなに囚われていたのに。ずっと考えていたのに。あの恐怖と今も戦っている大人が、ここにいた。必ず皆におとずれる「死」の問題から目を逸らさず、ずっと戦い続けている人が、ここにいる。そのことに勇気づけられる。


5、「43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の真相」

(石井光太 著)

凄まじい。その一言に尽きる。石井光太さんのノンフィクションにはいつも打ちのめされるけれど、本著を読了後にも激しい無力感が襲ってくる。でも、これはわたしたちの社会で起きていることの現実のひとつなのだ。


6、「増補改訂 日本の無思想」

(加藤典洋 著)

加藤典洋さんの本はすべて読もうと決めてから、こつこつ読み続けています。本著は、「タテマエとホンネ」という日本独自の嘘を剥ぎ取り、やがてとんでもない地平まで読者を連れていきます。なぜ、わたしたちは一向に進歩しないのか。なぜわたしたちは過去の失敗を忘却(しようと)するのか。ヒントがここにある気がします。


7、「スピノザ ー 読む人の肖像」

(國分功一郎 著)

スピノザの『エチカ』にはまだ挑めない。でも、スピノザの思想には興味がある。たぶん、そんなわたしのような読者に向けて書かれた本。岩波新書だからサクサク読めるかなと思ったら、そんなことはまったくなく、途中でスピノザの論理の厳密さに置いていかれそうになりました。でも、そこは國分功一郎さん。スピノザの生きた時代のドキュメントとしても面白く、命がけで思想を紡いだ人たちのことを知れます。


8、「喰うか喰われるか 私の山口組体験」

(溝口敦 著)

ヤクザや反社会組織を扱うライターとして唯一無二の存在、溝口敦。文筆家として、これまでどんな戦いや攻防をしてきたか、その一端が垣間見えます。自身だけでなく、息子も刺されたりして、うわマジか、と驚きました。誰かを取材し、何かを発表する、という仕事をするすべての人にオススメしたい一冊。


9、「「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認」

(佐々木チワワ 著)

歌舞伎町に集まる人たち(特に女の子)の実態をよく知る著者による論考。タイトルに「病」という言葉が入っているものの、それを肯定も否定もせず、自分も同じ「病」にかかっているから気持ちわかるよと、そっと寄り添っている姿勢が清々しいです。承認欲求という「病」は現代人すべてに共通の問題かもしれない、早く解脱したいよねと思ったりします。


それでは、また次回!
映画『あんのこと』の上映まだまだ続きますように。

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