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◯ 新作篇『Boze Cialo』

邦題:『聖なる犯罪者』
監督:ヤン・コマサ / 2019年 / ポーランド・フランス合作


いま個人的にもっとも「キテル」と思う映画監督、ポーランドのヤン・コマサさん。
なんでしょう、これこそ上手く読後感がまとまらないというか。下手な文章で矮小化するのが憚られます。

とりあえず主人公を前科者に設定することで、「聖」とは、「罪」とは、と、ちょっと考えちゃいますね。
主人公ダニエル役の俳優の、ちょっとヤバい感じ — 痩けた頬に、ギョロリと向いた眼、血の色の透けたような涙袋 — が説得力に拍車をかけています。

そんなダニエルは、過去に「いろいろと」やらかした犯罪者。
彼は少年院で過ごすうちに敬虔なクリスチャンとなり、仮放免中ふとしたきっかけで司祭として振舞うこととなる。

何も知らない村人たちはダニエルを慕うようになりますが、村で一年前に起きた悲劇をダニエルが知った事で、村人にもダニエルと同じく“聖”と“罪”の二面性がある事があぶり出されていく。
偽神父とはいえ、ダニエルは確かにあの瞬間、少なくとも死にゆく老婆にとっては本物であった。逆に、村人たちの敬虔な振る舞いの下には、隣人に牙を剝く残虐さが隠されていた。

“反社会的属性”を備える人物を中心に据え、その周囲に“一見まともな”人々を配置する事で、それらが出会って起こる化学反応っぷりがグサグサきます。
これは同監督の最新作『Sala samobójców: Hejter』(※)にも同じ事が言えますが、善悪の二極化に終始せず人間の二面性を丁寧に描くことで、
誰もが被害者にも加害者にもなり得るという、ヒトの掴み所のなさを見せつけてくれるのがヤン・コマサ映画なのです。

それでいて最後の最後で「全部例え話だし、まあ話半分で聞いといてや」とバッサリやるのも気持ちいい。
映画ばっかり見て満足してるとバカになるよー……と言われた気分です。

※邦題:『ヘイター』(2020年製作 / ポーランド)。Netflixにて配信中。


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