新富町あたりウォーキン

2022年2月17日。コロナ家の第何子にあたるのか知らんが、だいぶ暴れん坊なオミクロンちゃんに日本中が手を焼く中で、密かに続く私のウォーキン。よその駅まで出かける時は、最寄駅から山手線の一番後ろの車両に乗ると終日だいたいガラガラだということも学んだので、実は先頭車両が一番近い改札から入って15 両分ホームを歩くところから始まるウォーキン…いや、最寄とはいえ自宅から1キロはある駅まで歩くところから、だな、まずは。因みにそれはずっと下りで、即ち帰りはずっと登りの1キロなのだ。ゆるゆる坂コース+短い階段コース、急階段コース、急坂コース、と、どれを選んでも帰りは息切れ。幸い人の少ない公園が続くので、隙を見てはマスクを外して深呼吸。酸素が体内を駆け巡る。ふぅぅぅ。

と、まあ、そんな日々である。

この日は日本橋の高島屋近くにあるギャラリーに、気になる作家の展覧会を観に行った。この辺りは古いビルの中に老舗画廊から貸しスペース的な展示まで、様々な自己表現と自己主張の場がひしめき合っていて、だけど、どんなに叫んでもビルの外には届かない…みたいな、なかなか混じらないエリアでもある。まあ、それを言ったら、高島屋だって裏側の車寄せ付近には表からしか入ったことがない素人一見さんにの目には決して触れることがない世界があるし、車寄せからしか入れない玄人常連さんは素人一見さんのようにフラフラと近くのカフェで一服なんて出来なさそうで、人って結局みんな井の中の蛙なのかもしれない。そして私は入っていた井戸が枯れて彷徨う井の外の蛙?

と、いったところはまた別の機会に。

そのギャラリーからの帰り道、例によって地図も見ないで適当ウォーキンを。おおよそ碁盤の目というかアミダクジというか、な町並みなので、最終的に目指す駅の方向を見失うことはまずない。安心して路上をウロウロできる。

画像9

画像10

画像11

画像12

画像13

画像14

画像15

鈴らん通り、なんていう商店街があった。商店街であることは、その名を象った街灯が並んでいなけりゃわからない。朝起きて窓を開けるのと一緒で、店のシャッターを開けるのも、店先に看板を出すのもルーティン化しているんだろう。というか、店が家族の出入り口でもあるんだよね、こういうところは。そして営業しているという意識が有るんだか無いんだか、という爺さん婆さんがボーッと座っていたり、店先で語り合っていたり、で客はいない。これは今の東京を代表する風景のひとつかもしれない。

新富町、という表示が出てきた。新富町といったら、ここにレコード会社のポニー・キャニオンがオフィスを構えていた時代によく足を運んだエリアだ。来たの、あれ以来かもしれない。けど、まるで見覚えが無い。地下鉄の駅だからね、出口がひとつ違うともう、景色が全然違う。こっち側ではなかったのかもしれないな。それに、記憶が古過ぎるよな。

ん?なんだ、あの、向こうにドーンと立ちはだかる陰気なビルは? 来た道からグイッと右に曲がって近づいてみる。足元に彼女。

画像1

あ、これ系のイスに座った細身の女性像は日本橋で他にも観た気がする。きっと同じ作者だ。えーっ、こんな断り書きがあるってことは、もったいないって苦情があったのかしら…

画像2

なるほど役所であったか。てことはライトアップも税金だろ、的な意見があったのかもね。それにしても、近年の、いろんな意味でガラス張りが進む役所の建物とは対極にある重厚さ。そして役所周りにしては全体にひと気の無い、裏寂しい一角だ。しかも道路の交差が複雑で、徒歩人の視点からでは全体像が掴めない。とりあえず一周してみる。下に見える幹線道路の寂れ具合がまたなんとも。たぶん古いってことなんだろうから、かつては最先端でクールだったんだろうけど。

画像3

画像4

隅っこに「碑」を拝見。夕刻の老眼にはキツいんだけど、こういう「碑」には発見が多いので読むようにしている。東京は尊王攘夷や大震災や空襲にまつわる切ないお話の宝庫で、だけど知らないことばかり。書かれていることに、強く胸を打たれることもある。こちらに書いてあったのは橋の成り立ちと、ここに私とは反対側から歩いてきたらしい三島由紀夫が『橋づくし』に書いたというコメントが。「中央区役所の陰気なビルがうずくまり」だって。同じこと思ったんだね。ぜんぶの電球が点灯しているわけではない「鈴蘭燈」と、とんちんかんな時間を示す「時計台」は確認できなかった。今は無いのかな。さっき通ってきた「すずらん通り」とは繋がりがあるのかしら。しかし三島もウォーカーだったか…。

画像5

ここからは北上して明るい方へ明るい方へ。そして今回も銀座で5時の鐘を聞く。ここの時計が「とんちんかん」だったことはない。

画像6

画像7

そしてここにも「すずらん通り」。調べたら、この名のストリートは都内に15カ所あるらしい。なんかこう、可憐で控えめで清潔な印象で、日本人好みなのかもしれないね、あの花。でも、毒があるんだよね、ふふふ…。

最後に、現場復帰したものの壁が透明になってしまって弓矢を隠せず、なんとなく居心地悪そうで恥ずかしそうな銀座のキューピッドさんの近況を。

画像8

12,762歩。東京駅から有楽町駅までの、山手線ひと駅を思い切り遠回りしたウォーキン。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?