幼い私

私は、幼い。

もう20歳も優に超えた歳なのに、大人になりきれていない。

しかも、私は大人のふりすらもうまくない。

私の中には、幼い私がたくさんいる。

私は甘えたかった。小さいころは、母に甘えたくても、お姉ちゃんなんだからちゃんとしなさい、とよく怒られたことを覚えている。お姉ちゃんだからしっかりしなきゃ、お姉ちゃんだから妹ばかり甘やかされるのは当然……だけど、さみしかったな。

私はおしゃれをしたかった。でもうちではおしゃれなど贅沢で、できなかった。それに、「顔が地味だから」おしゃれをしたことで意味などない、と言われた。かわいい姿の妹はおしゃれにしなくても周りから大切にされているみたいだけど、私はそんなことない。その通りなんだと思った。

私はしたくないことをしたくない、といって勝手にやめたかった。母のすすめで始めたバレーボールも、うまくならないし、仲間とうまくいかなくて1人悲しい思いをするし、きついし監督は怖いしやめたかった。でも、やめたら怒られるし、やめなかった。頑張る自分になったら喜ばれるし認められるから、頑張ろうとした。

私は勝手に生きてみたかった。母には親や先生の言うことは守らないといけないと言われていたから、できるだけ守ろうとした。良い子になったら認められるし、それが正解だから。でも、守らない子たちがいた。注意をしたけれど、けんかになって、無視されたりいじめられるようになった。みんな、何も言わないけど、どうしたんだろう、こうあるべきなんじゃないの？

私は勉強が好きではなかった。リビングからテレビを見て笑っている家族の声が聞こえる。いいな。でも私が行くと、勉強しなさいと怒られる。確かに中学受験をしたいと言ったのは私だけど。受験勉強なんかしないで、わたしも遊びたい。学校でも勉強、帰ってからも塾に行って勉強よりは、缶蹴りで遊びたい。でも、勉強しないとまたうまくいかない周りの子たちと中学でも一緒になってしまう。「受かればなんでもできる」っていってた。何もかも許されるようになる。

小学生の時に押さえ込んだ諸々の感情やコンプレックスは、未だに幼い私として残っている。

どうしてちゃんとしないといけないの？勝手なことしたらだめなの？

認められるようにしなきゃいけない………でも、どうして自分のしたいようにいたらだめなの？成長しなきゃいけないのはどうして？

どうしてみんなは自由に生きているのに、私だけ大切にしてもらえないの？どうして私はみんなとうまくやれるようになるために辛い思いして変わらなきゃいけないの？

どうして私はかわいくないの？

どうしてそうしてまで、生きなきゃいけないの？

大人に近づくにつれてより大人になることを求められ、子どものように振る舞うことは御法度とされるようになった。子どもの時に子どもになり損ねた私は、置いて行かれた。もう甘えることもできない。なきわめき、慰めてもらうこともできない。こんな疑問も、幼稚だ。口にしたところで、意味はない。

自分の生きたいようにやりたいことをやって生きることの意味はわからなかったし、人生は成功のためにあって、認められるように頑張らないといけないと思ってそんな自分を抑えこんでいた。だから辛かった。だから、もう、この幼さを認めることにした。

哲学が好きなのは、この幼い感情でも、疑問としてもらえるから。私の好きなように、考えて、結論を出せるまで考えて良いから。無益なことだけど、口にしたところで何のスキルにもならないけど、ここだけは私のことをありのままに認めてもらえる気がする。

だから私は、私の中にいる幼い私の頭をなでて、「どうしたの？」と聞いてみる。視野の狭さも自覚してるし、もっと成長しなくてはならないことがたくさんあるのもわかっている。でも、無視してしまった、幼い私を捨てるわけにはいかない。幼い私は、もう、私しかかわいがってやることはできない。

いつか成仏するのかもわからないけど、私だけはその私を大切にしてあげたい。