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エッセイ:手繰り寄せてバンクーバー

いつの間にか、僕はカナダを置いて行っていた。
一年前はあらゆるものが新鮮だったけれど、二年目になると、もはや一時的な滞在者という感覚から抜け出して、ようやく生活拠点みたいな意識に変われた。

変われたというのは、良いこと。
1年しかカナダにいられないと思っていた僕は、1年間ずっと寂しかった。

日本よりも過ごしやすかったからなおさらかもしれない。
毎日河沿いを歩いて『置いて行かないでバンクーバー』って思っていた。

人生が100年あるとしたら、僕がカナダにいられるのは1%。
バンクーバーの街並みを彩っているのは、自由を謳歌している笑みを湛えた人々のオレンジ色の世界。
僕はその端っこを歩いているのがとても好きだった。
同時に傷ついていたけれど、とても好きだった。

傷ついていたというのは、僕はきっと、彼らみたいに両手離しで幸福を享受できない自分の心の性質を彼らを通してありありと再確認させられた気がしたから。

それでも、「あぁここは自由でいいんだ」と思うだけで救われていた部分って沢山ある。例え煙草を持っていなくても喫煙所を見て、どこかで買えさせすれば吸えるように。

多くの日本人とも会った。経営者、スタートアップ、語学留学生、現地の大学生。
みんな夢を持ってキラキラ金平糖。

僕は彼らに対して強い拒否感を抱いた。

例えば現地の大学に通っている人なんて、親が某有名企業の幹部で4年で3000万の学費とプラス生活費も出してもらっている。
そのくせ彼らは「自立しなきゃ」といって自分の携帯台を払うために「アルバイト」をする。

何が嫌だって、彼らに擦れたところが一つもないってこと。
恵まれている人間は、神様のお気に入りなんだってわかるくらい、性格が良くて捻くれた部分がない。その分会話は薄っぺらい傾向にあるけれど、神様に気に入られているのだから、内容を伴わない会話の方が天界では受けがいいのだろう。

たまに彼らが人生で「最悪だった瞬間」に耳を傾けるけれど、高級な服に醤油がかかったとか、寮に入れなくて、少し離れた所に住むことになったとか、ドラッグでバッドに入って吐いたとか、その程度のことで、それもきっと神様のお気に入りだから。

誰も幼少期に母親がドラッグで捕まったり、親から殴られたりした様子はない。
人生で自分一人では太刀打ちできないどうしようもなかった挫折感もなく、大事に大事に育てられてきたのを知ると、僕はその場にいながらいつも、自分の座っている椅子だけがとても冷たいように感じる。

生活に慣れてきた最近はそんなことばかり考えるようになってきて、カナダをどこかに置いてきたしまった。

気づいたときにはカナダにも夏が訪れ、眩しいなと思った拍子に僕は空を見上げた。

「やべ、ここ海外じゃん、バンクーバー感じないと勿体ない!!」

と思って、すぐに行動。
バンクーバーを歩き回った。

携帯のカメラの調子が悪くて、白飛びしているのが残念な写真群。
(本当は一眼レフで撮れれば良かったのだけれど、ちょうど手元になかった)


イングリッシュベイ→スタンレーパーク→カナダプレイス→バンクーバー私立図書館の順番で2万歩あるいた。


イングリッシュベイまでのバス


ビーチで食べるアイスクリーム
毎回胡散臭い日本語で話しかけてくるホットドックの店主

5ドルのホットドックを買うと「カネモチ、カネモチ」と言ってくれる、自己肯定感爆上げおじさん。



こう見えてめちゃめちゃうまい




ビーチにテントを張って絵を販売している。

販売者がテントの中で寝転がっている。
僕は話しかけて最近僕のなかで芽生えている『芸術とは』ということについて、夜が更けてもそれに気がつかず6時間くらい熱く語り合ったような気もするし、テントの写真だけ撮って一言も話さなかったような気もする。

スタンレーパークへ続く道
溶けたアイスクリームとそのアイスの棒に見えた

海が溶けたアイスで、木がアイスの棒


占領されたお気に入りのスポット

冬の間や6月は静かだったのに、夏になった途端に群がる人びと。
本当はしばらくここで物思いに耽りたかったのに。

スタンレーパークの入り口?

バースデーパーティをしている人々もいて賑やかだった。

スタンレーパークまでの案内者
彼らは誰よりも勇敢だから、渡りたいときに道路に出て車を停めてでも横断する。僕もおこぼれに預かって、彼ら一団の団員として誇りを胸に行進に続く。

リス。

僕に興味があるみたいで10分くらい見つめあった。

オオアオサギ?鳥図鑑で調べた
看板

最初見た時、汚れがそれっぽすぎて、『パズル』かと思った。

友達
スタンレーパークの歩く看板、とても便利
カナダプレイス
バンクーバー私立図書館

たまには本も読まなくちゃと思いながら、腰が重い。
置いてきたカナダを当たり前ではないと再認識。
細々と生きて行こうっと。


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