不公平な核禁止は諦めるべき

地球上から全ての核兵器を消すことができたら素晴らしいことだ。しかし、国連の決議や核不拡散条約などで現在の核保有をそのままにして、新たな核兵器の開発や保有を禁止することは不合理であり守られることはないだろう。

核兵器が増えないようにするための苦肉の策であったことは理解出来る。しかし、このやり方は、「金持ちは持っているお金をそのまま持っていて良い、しかし貧乏人は新たにお金を稼いではいけない」と言っているに等しい。科学技術の進歩は誰も止められないし、止めるべきではない。かつては米ソが抜きん出て進歩していたが、今は中国が追いついている。中国はすでに自前のロケット、人工衛星だけでなく有人宇宙ステーションまで保有している。世界の国々は他国の支配に対抗するために常に技術の進歩を達成すべく努力するものである。

残念ながら人類は弱肉強食の傾向が強くなりつつある。話し合いで合意に達することができなければ軍事衝突に発展する。米ソ両大国が世界でマッチポンプを行う時代は終わった。マッチは残っているがポンプの水は枯れてしまった。もっと言うなら、マッチでつけた日に重油をかけるようなことをしているのが米英を中心とする西側の国々である。もはや水をかけられる国は中国を除けば中小の国しか残っていない。そんな状況下で不平等なことを押し付け、従わない国には“経済制裁”をかし、近海で軍事演習をやって脅かすというのは愚かなことである。

米国を含む自由主義国、民主主義を標榜する国の国力は徐々に下がっていくだろう。それは“自由と民主主義”という言葉を盾に国民が勝手放題を言い出しているからである。政治の世界ではかつては2大政党政治が機能していたが、現在はこれが壊れつつある。色々な考えの政党が乱立し、連立しないと政府が作れない国が多くなっている。米国は共和党と民主党の2大政党が続いているが、実態はその内部に亀裂が入っており、たびたび議会が機能不全に陥っている。

ドイツのメルケル前首相はロシアや中国ともコミュニケーションをとりながら政治の舵取りをし、経済交流も進めた。敵対するのではなく、お互いに利用し合う関係である。これこそ世界の平和を維持するのに必要な政策であった。ディフェンスが多少甘かった感は否めないが方向性は正しかったと思う。

ロシアが欲するソ連や帝政ロシアへの逆戻りは愚かな懐古趣味である。今回のロシア・ウクライナ戦争では双方が大きな損失を被っている。ロシア、ベラルーシおよびウクライナでスラブ連邦共和国を結成していれば強い国が出来たはずである。ロシアが頭にならず、三国が対等の関係で連邦を作るのが同じ民族でまとまる唯一の方法だったのだが、ロシアが時計を反対に巻いてしまった。そしてその原因は日側にある。旧東欧諸国をE UだけでなくNATOにも取り込んだ結果、ロシアは孤立感に襲われ牙を剥いたのである。

中国の習近平は強かである。世界の多数の国に“一つの中国”を認めさせた玄如では、国際法上では台湾問題はまさしく内政問題だろう、他国が口出しすべきことではない。武力による統一を匂わせながら台湾に大陸と友好的な政党を台湾で育てようとしている。ことを荒立てようとしているのはここでも米英の方である。中国の巨大市場を欲しい西側企業とそれに対応しようとする西側政府は習近平の掌の中で遊ばれている。中国はロシアよりはるかに賢い。

話を戻そう。北朝鮮がミサイル実験をやるたびに米韓や国連は騒ぐが、これは無意味である。 北朝鮮は米国を攻撃するためにミサイルを開発しているわけではない。彼らは米国の助けで韓国に併合されることを恐れており、その抑止力として核を開発しているのであり、技術開発は粛々と進んでいる。残念ながら米国に手足を縛られた日本は技術力において近い将来に北朝鮮に追い越されるだろう。ロシアのプーチン大統領がそうであったように、脅しを受け不安に陥った人間は何をしでかすか分からない。それは恐ろしいことである。敵対心を抑止することは必要だが、煽ってはいけない。

今年、日本では“反撃能力”という言葉が国会で議論されたが、戦争の本質を直視しているだろうか?
* 半端な反撃をすれば、次の相手の攻撃で日本は壊滅される。
* 強大な武力を持つことは日本経済に負担が大きすぎるし、憲法問題もある。
* 日本には世界に例がないくらい多くの米国軍が駐留しており、日本が費用を負担している。しかし、これはディフェンスだけでなく、攻撃の的にもなる。
* 米国の核の傘は日本防衛には使われない可能性が高い。米国の核は米国が危険に晒された時しか使えないからだ。

以上を念頭に考えれば、米国から高額な兵器を“反撃能力の保有”として買う必要はない。日本としては最小限の核兵器を保有し、自前の核抑止力を持つ必要があるのではないだろうか?日本が核を保有することは日本国民の中でもタブーとなっている。しかしながら、これ以上適切な抑止力はないと思われる。核は使うことのない兵器である。

日本はそろそろ米英の追随をやめるべきである。米国は財政的に困難に直面しているのだから、日本への駐留軍を大幅に減らせば良い。日米双方が無駄な支出を減らせる。日本はこれを財源に核開発をすれば良い。

いまだに国民から銃を取り上げられないでいる米国が核兵器禁止を言うのはジョークでしかない。核を減らし、無くすときは公平な形でなければ実現出来ないと考えるが如何。

ドイツはホロコーストの悲劇故に永遠にユダヤ人のすることを全て肯定しなければならないのだろうか?
そして
日本は唯一の被爆国として核保有を永遠にタブー視しなければならにのだろうか?
どちらも私には不合理に思える。