予感はイナズマのように走っていく

年下の彼との話だ。彼とは、昨今流行っているマッチングアプリで出会った。見た瞬間、何かが起こる予感はしていた。

一回目のデートは、サウナに行くことになった。どんな人かちょっと期待が高まる。
待ち合わせで会うと、身長も高くモテそうな雰囲気だった。冷静沈着という言葉が似合う人だと思った。初めて会ったのにも関わらず、口数が少ないので、何を考えているかも分からない。

サウナ後、2人で飲み物を飲んだ。横に並ぶ椅子に二人で座った。飲み物を飲んでいると、彼がいきなり、「癖強い人間だって言われませんか?」とかなり失礼な言葉を言ってきた。いきなり言われたので、返す言葉が見つからず、「よく変だって言われます。」と言うと、
さっきまで無表情だったが、顔が崩れ、笑った。すごく素敵な笑顔だった。改めて見ると、まつげが綺麗で目がキラキラしているように見えた。
サウナの話、趣味の話、幼少の頃の話。短時間でありとあらゆる話をした。
話をする中で、この人と感覚が似ているな。となぜか心が躍った。もう少し、この横顔を見ていたいと思った。

あっという間に時間は過ぎ、帰りの時間となった。よくドラマや本で男女がデートする帰り際は少し離れ難いと言うが、このことかと理解ができた。
連絡先を交換をした。意外だった。変なやつだと言ったくせに、連絡先は聞いてくる。謎だった。




2回目のサウナデートにたどり着いた。この時期は、私の事情で心が安定してなかった。気分は落ち込まないようにと張り切るが、なぜだか心はモヤモヤ。せっかくのデートが台無しになると気負っていたのかもしれない。
車内は、前半は楽しかったが、後半になると、口数も減り、相手に気分を害してしまったのかもしれない。それが分かったのは、さっきまで普通に話していたのだが、いきなり敬語になったからである。そこで、更衣室で別れた。

サウナに入ってから、自分の感情の揺れ動く様に反省していた。サウナから上がると、お互い、優しい表情になっていた気がした。副交感神経がリラックスされたんだろう。その後、夜ご飯を食べた。客数は夜にも関わらず、若者が多い。座る席がなかったので、また横で座る席だった。海外旅行の話をしてくれたのだが、全然集中できなかった。頭は完全に上の空だった。申し訳ないと思ってはいたが、寂しそうな顔をしていた。

車内でなぜデートに誘ってくれたのかと問うと、答えてはくれなかった。
少し疑問だった。
彼の家族構成と自分のことについて話してくれた。さっきまで何も話さなかったが、顔が緩んできているようにも見えた。車のBGMはロマンチックな曲だった。その曲中、彼と目がぶつかった。お互い、何かを欲しているような眼で、熱い視線だった。ロマンチックな夜だった。そして何もないまま、その夜は終わった。




そこから、連絡が何件か来たので、楽しくなっていた。2回もデートに誘ってもらっているのだからとこちらから桜デートの提案をした。返答はあっさりOK。相手の考えていることが分からないが、嬉しかった。「女は、男ができると綺麗になる」と聞いたことがあるが、本当なのかもしれない。髪も切り、流行りのメイクと洋服に着替えて出かけた。

彼は、今まで一番、目から光線がででいるかのように美しかった。その日は桜満開予想日だった。車の渋滞に巻き込まれたが、会話は弾んだ。
桜はライトに照らされ、人々はメインスポットに向かい、賑わっていた。屋台もたくさんあった。団子を二人で分けることにした。団子を食べながら、お互いの近況報告などをした。偶然にも、横に座る席だったので、また横顔を独占できた。

桜を見ながら歩いていると、いいものあげると彼は言った。そして、私の手を握った。驚いた。喉の奥が詰まったような感覚になった。目も少ししか開けることができず、まるで蕾が花に変わる時のようだった。
その時の記憶は少ししか覚えていない。桜を見る暇なんてなかった。恥ずかしかった。顔を見て欲しくないと思った。この時間がずっと続けばいのに。別れ際、熱い視線がまた私の目を襲った。それ以上、何もなかったが、ホットなナイトだった。

数週間後、彼は呆気なくなった。連絡も来ないので、こちらからデートの誘いをするが、断られてしまった。彼は稲妻のように早く走って行ってしまった。


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