マンション投資のウソ・ホント その1 「年金代わり」編

※当記事は、過去に私自身が「GAGAZINE(ガガジン)」に投稿したものを
 加筆修正したものです。

親愛なるnote読者諸兄。ごきげんよう。
今日は「マンション投資」の話でもしてみよう。

『自分はマンション投資ができるような、社会的地位も金銭的アドバンテージもないよ!』とお嘆きのあなた。
 そういう人ほど雑な営業にひっかかって泣きを見る世界なので、まあ雑学として知っておいて損はない内容かと思う。
 もしくは知り合いなどで、新規に不動産投資を始めようという人がいたら、この記事を紹介してもらってもいいだろう。

 さて、ひとくちに「マンション投資」と言っても、あまりピンとこない人も多いだろう。

 しかしある一定以上の収入があったり、属性が良い仕事(上場企業や公務員、大学教授など)に就いていたり、特定のエリア(都心5区など)に住んでいる人なら、1度ならずマンション販売の営業電話を受けたことがあるのではなかろうか。

 かつてはハイソなお金持ちの道楽というイメージであったが、最近では「年収300万円台から始められる」「月々1万円から始められる」などと謳い、貧乏人に夢を見せて金を毟り取ろうという営業も少なくない。

 ではそもそも「マンション投資」とはどういったものなのか。それを解説していく。

 まず、「投資」というからには、なにがしかの金銭的な利益を得られるのが大前提だ。(逆に言うと、金銭的利益がなくなってしまったら、もうそれは投資として破綻している)

 ※余談だが、割とこの前提を理解していないオーナーが多い。年金代わりだから投資じゃないとか平気で言う人が多い。
 それが投資なんだよ、あんたがやってるのは投資なんだゾ って教えてあげても全く理解できないのだ。

 そういう意味ではマンション投資は毎月の家賃収入により、定期的な現金収入が得られる。株や為替と違って、家賃は突然の暴落で半額になったりはしないし、入居者がいる限りは、ゼロやマイナスになることは無い。
 そういう意味では、本来であれば不動産は非常に安定している投資商品である。

 よくあるマンション販売会社の代表的な営業トークも
1「月々の家賃収入により、安定した年金代わりになる」
2「税金対策(節税)になる」
3「生命保険代わりになる」
 といった、金銭的メリットを主に説いたものだ。それに加えて
「憧れのマンションオーナーになれますよ」といった、ステータス的なメリットも説く。

 しかし、これらのメリットは真実なのだろうか?

 先に結論から書いてしまうが、ちゃんと自分で考えた買い方をしていなければ、ほぼ100%といってよい確率で、毎月の現金収入がなくなり、むしろ金を払うはめになる。現金収入を得るために所有するマンションで、毎月お金が出ていく状態になったならば、それはもう破綻しているのだ。「月々1万円から始められるマンション投資!」などという広告を見かけたことがあるが、月々お金を払わなくてはいけない時点で、それは既に投資ではない。
 さらに、詳細は後述するが、日本における不動産資産とはすなわち土地のことなので、2000万ぽっちで買えるちっちゃいワンルームマンションごときに資産価値はない。おまけに、長く持てば持つほど売却時の金額が下がっていく不動産は生命保険代わりにもならない。

 そういったことをより具体的に解説していこうと思う。要点だけ知りたい人はここでブラウザバックしてもらっても構わない。
 
 テストケースとして、東京都江東区亀戸の平成24年築19平米のワンルームマンションを、利息2.8%の30年ローン2070万円で購入したと仮定しよう。
 この場合、月々のローンの支払いは85000円程度である。賃貸管理手数料は5%、管理費・修繕積立金は当初8500円とする。

 なおこの話をしていく上で予め解説しておくが、自分が不動産オーナーになった場合、自分と入居者のほかに、登場人物が2人登場する。
 それが「建物管理会社」と「賃貸管理会社」だ。両方『管理会社』と付くので混同しやすい。事実、投資用マンションを所有しているオーナーの4割くらいがこれをきちんと理解していない。

建物管理会社

 読んで字のごとく、建物を管理している会社。略して建管(タテカン)と言ったりする。
 マンション全体の修繕計画を立てたり、修繕のための費用を全オーナーから毎月徴収し、積み立てている。廊下の蛍光灯が切れたり落ち葉で汚れたりした際に、交換したり掃除したりするのはこの建物管理会社。管理人さんだと思えばよい。
 そのため、1つのマンションに対して、建物の管理会社は常に決まった1社である。

賃貸管理会社

 こちらは、オーナーと入居者の間に入っている管理会社。略して賃管(チンカン)と言ったりする。
 エアコンが故障したり、お湯が出なくなったなど、部屋の中で起きたトラブルについては、入居者からこの賃貸管理会社へ連絡をする。場合によっては24時間対応してくれるサービス(有料オプションだが……)もあったりする。
 オーナーは大体が本業を持っているので、自分の仕事をしながらこういったトラブルに対応するのが難しいので、賃貸管理会社に部屋の管理を委託することになる。※もちろん、自分で直接管理をしてもよい。
 賃管はそういったトラブル対応や更新手続きなどを代行してくれる代わりに、管理手数料を毎月取っていく。
 まず入居者が家賃を賃貸管理会社に支払い、賃貸管理会社が3~5%ほどの小銭を管理手数料として掠め取り、残りが賃貸管理会社からオーナーに振り込まれるという形式になっている。家賃が10万円でもほんの3000~5000円だが、管理している戸数が1000戸とか5000戸とかの単位なので、なにもしなくても毎月数十~数百万円が入ってくるのだ。

 では、解説に戻ることにする。

1.毎月の定期収入・年金代わり

 最も基本的なメリットはこれだろう。
 誰だって不労所得で世の中舐め切って生きていきたい。筆者だって、実家の庭が高速道路の予定地になったという理由だけで、永続的に年間400万もらえるような人生を歩みたい。
 新築時の家賃はいわゆる「ご祝儀家賃」「プレミア家賃」といった塩梅のもので、新築に住めますよというプレミア感から、かなり高めの家賃設定になっている。『新築』の定義は一般的に「提供開始から1年間」だ。
 亀戸であっても新築の分譲マンションなら9〜10万円台の家賃が取れる。

 仮に新築当初、家賃共益費込みで10万円だったとする。上記の仕組みにより、賃貸管理手数料を引いた95,000円が、賃貸管理会社からオーナーへ振り込まれる。

 すごい、毎月95000円も!
 2070万円÷95000円=218ヶ月。つまり18年ちょっとで最初の2070万円を回収できる計算だ。
 購入資金を回収出来たら、そこから先は全部プラスじゃないですかヤッター! 毎年95,000円+12か月=114,000円が不労所得だ!

 んな訳ぁないのである。
 なんだその理論は。貴様販売会社の回し者か?

 まず、オーナーは毎月の家賃がもらえる他に、毎月支払わなければならないものがある。
 建物の管理費・修繕積立金である。これは、建物の外壁や共用部(廊下、階段、エレベーター、エントランスなどなど)を定期的にメンテナンスするための費用である。
 なので10万円の家賃から5000円を賃貸管理会社に支払い、8500円の修繕積立金を建物管理会社に支払った残りの
86500円が毎月の収入となる。

でも95000が86500になったところであんまり変わらないじゃん! 年間で1038000円だよ!

そんなわけもないのである。
8月に気温30度なら12月には50度やで! というのと同じレベルの理論である。
 マンションを新築で購入する人(させられる人)の殆どが30年や35年払いのフルローン(頭金なしの全額ローン)で購入している。
 借りた金はもちろん毎月払わなきゃいけない。
 上記の例では2070万30年の年利2.8%なので、毎月の支払いはおよそ85000円だ。86500円の家賃収入から85000円のローン支払いを引いて、1500円。 これでも一時期に比べればかなり低金利だが、年間で18000円ぽっちの利益だ。これが真の収入となる。

 しかし不動産オーナーにはさらに重くのしかかるものがある。
 それが「固定資産税・都市計画税」だ。略して固都税とか言ったりする。

 とは言えワンルームや1K程度の広さであれば大した金額ではないので安心して欲しい。およそ年間4〜50000円程度である。

 年間収入が18000円、固都税が50000円。
 おや。既に年間で32000円のマイナスである。

 しかも大前提として家賃は下がる。
「ここは場所がいいから家賃が上がりますよ」という営業トークがあるらしいが、それを真に受ける奴については「正気か!?」という感想しか持たない。常識的に考えて、築年数が経過していくのに家賃が上がるなんてことはほぼありえない。あるとすれば周辺環境の向上(高輪ゲートウェイやスカイツリーなど)などによって全体的に家賃相場が上がることくらいである。

 自動車で例えれば、5年落ちの自動車が新車より高いわけないということは誰でも理解できるのに、不動産になると途端に勘違いをする人が増える。これはおそらく、際限なく不動産価値が上昇していったバブル期の記憶を引きずっているのではないかと思う。

 おまけにワンルームマンションなんかに5年も10年も住む奴はいない。統計上、ワンルームの入居者はおよそ2〜3年で退去する

 入居者が退去すれば次の入居者を探さなくてはならない。その時には築年数が進んでいるため、退去した入居者と同じ家賃は取れない。そのため、家賃を下げて募集をかけなくてはならない。つまり、2~3年に1回は必ず家賃が下がるわけだ。
 家賃が5000円下がれば月の収入が5000円減る。年間収入は6万円減る。そうなれば毎月のローンすらもはや家賃収入で賄えず、自己資金を「持ち出し」してローンを支払わなくてはならなくなる。
 マンションを持っている限り毎月赤字が出るという状態である。

結論
年金代わりになる!
(年金代わりになるとは言ってない)


分量が増えてきたのでここまで。
次回以降、残りの二つのメリットについて解説していく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?