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映画感想メモ/すずめの戸締まり

きっかけ

見ようと思ったきっかけはTwitterで話題になっていたからと、震災を取り扱っている作品だと知ったから。

わたしは東北出身者で震災当時は東北(岩手県・沿岸では無い)で暮らしていたので、見てみようという気持ちでした。

私と震災経験と子どもたち

※ここから本編・インタビュー等ネタバレあります。

もっと詳しくきっかけを話すと監督の何らかのインタビューで「震災当時のことを知らない世代が増えている。今、作品として出さなければいけない、数年先では遅い。」というような発言を見たからでした。(引用元、見つけたら貼っておきます。)
わたしは数年前に地元の小学校へ教育実習に行きました。小学1年生のクラスに入ったんですけど、震災の話をなにかの授業でした時に「あ、この子たちは当時のことを知らないんだ」と思ったんです。自分的には結構衝撃で。この校舎が一時的に避難所になったことも、隣のスーパーマーケットが3日休んでその後電卓手打ちで営業したことことも、この街が停電・断水したことも全部経験していない。知らない。
それはきっと幸せな事だけど、伝えていかなければならない歴史ではあるよなあと思っていました。
自分のこの経験が監督の言葉と重なった事がきっかけで見に行きました。

本編感想

一言で言うならほぼ全ての要素が全私に刺さった。そんなことある?まとまらないので個人のメモだと思って読んでください。

・鈴芽と草太が互いに迷惑をかけるような失敗もしながらそれでも想いあってるところが人間臭くていいなあと思う。
・神話や怪異というファンタジー要素の中のわかりやすい地震の仕組みのメタファー。「日本の裏側に潜んでいて」「歪みが生じる」みたいなの、もろそのまんまやんけ!と思いながら見ていた。
・出てくる土地、まあそういう映画なのでそうと言われればそうなんだけど全部大きい地震があった土地だよね?
・その土地から聞こえる「思い」、その土地には確かに暮らしがあったんだって思わせられて辛い。こういうの本当に辛い。泣いた。
・鈴芽の死生観、(死ぬのが怖くないのか!?→怖くない!(即答)の所)いつ死ぬかも分からないしなんならあの時死んでいたかもしれない、じゃあ生きてても死んでも変わらないじゃん?の価値観狂っててキャラクターとして好き。あの時生かされたんだから、周りの人間に愛されてここまで生きてきたんだから精一杯生きよう、の方向にはならなかった子。
震災でお母さんを失った時点で歪に壊れてしまっていて、エンディングで自分に語りかけるまで自分が周りから受けとった愛に無自覚。そういう所はまだまだ高校生(子ども)って感じが良いですね。
・お母さん繋がりで言うと鈴芽のお母さんは看護師さんで、お母さんが看護師だったから鈴芽の夢が看護師なの、情緒がぐちゃぐちゃになる。
鈴芽が無事でお母さんが亡くなってるの、多分お母さん仕事中だったんだろうね……。
震災の時、老人ホームで働いていたスタッフが入居者守って一緒にホームに残って流された……みたいなニュースがあったと思うけど連想してしまいました。
そもそも看護師って命に直接関わる仕事で生と死に直面するわけで。その仕事を全うして死んで残した娘の死生観がこれなの、浮かばれないね。途中から妄想を話してるね。
・エンディング時には死生観が変わっていて「それでも(好きな人と)生きていたい」に変わっているの良いよね。きっと看護師を志す理由も「お母さんが看護師だったから」だけじゃなくなってると思う。
・ダイジン、サダイジンはちゃんと神様で、鈴芽が現れるところで商売が繁盛するのもダイジンのおかげなんだろうな、描写が細けえ。
・草太はダイジン(神様)を敬うつもりがないところと草太のじいちゃんがサダイジン(神様)を恭しく扱うところの対比、多分草太の勉強不足なだけじゃなくて「実際に知らない(経験がない)」ことなんだろうな……。要石としてのそれが持っている役割を知ってはいるけれど、実際見たことは無い。おじいちゃんは見たことある。そういうこと。
・おじいちゃん繋がりで言うとベッド四点柵で笑いそうになりました。たぶん、病院ではスタッフ目線、動けない癖に動こうとする面倒くさいジジイなんだろうな。(そういう描写もあったよね?)そこを見るのは職業病ではある。
・環さんは震災孤児を引き取って立派に育てて一緒に歩もうとしてくれる愛の人。
・芹澤、お前いてくれてよかったよ……。知らねえ女の子の発言を信じてスポーツカーで東北まで10時間程度掛けて行くお前の友人への愛は重すぎるが……。
・「いってきます」は私にとって(震災とは関係ない文脈で)大事な言葉なので無数の「いってきます」「いってらっしゃい」は、しんどかったです。
震災の文脈で捉えるならば「いってきます」だけ言って帰って来れなかった人がいる。そんな何気ない日常が一瞬にして消えてしまうこともある。「ただいま」も「おかえり」もない。
こんなつらいことがあるかよ。(これに似たエピソードは震災から~年とかの新聞やらテレビやらの特集でよくエピソードとして語られていますよね)
・物語の始まりとエンディングがほぼ同じ構図の同じ描写なのは日常が変わらないこと、それが幸せなことであることの描写かな?と思いました。
・そんなエンディングでちゃんと「おかえりなさい」「ただいま」が出来て良かった。


あとはまあこの大学生たち教員養成系かよ仲間じゃんとか黒塗り絵日記うわあ……とか色々あるけど書くの疲れたし初見の感想だしそろそろやめます。面白かったのでネタバレ見てから映画を見る派の人はぜひ見に行ってみてください。私ももう1回見に行こうかな。


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