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読書の記録(16)『猿の手』

手にしたきっかけ

学校図書館司書の研修で、YA向けにおすすめの本をリーフレットにまとめることになった。私も小学生の頃に『猿の手』を読んだ記憶があって、怖かったなあと印象に残っていた。子どもたちに人気の富安陽子さんが訳したものと知り、読んでみようと思った。

心に残ったところ

『猿の手』『不思議な下宿人』『魔法の店』が収録されている。『猿の手』以外は初めて読んだ。

『猿の手』は確か薄気味悪い猿の手が出てきて、3つの願いが叶う、とかいう話だったよなと思い出しつつ読み始めた。3つの願いの内容は思い出せないまま読んだ。富安陽子さんの文のテンポに引き込まれ、一気に読んだ。帯に『11歳で初めて読んで、怖かった。今読むと、もっと怖い』とあったが、まさしくそう!子どものときに読んだ怖さとはまた違う怖さがあった。

子どもの頃は、大人の立場は想像するしかなかった。想像上の遠い世界だった。でも、歳を重ねて理解できることが増えた。自分の中の色々な感情もわかるようになった。子どもの頃に読んだ本を読み返すと、また違う物語が見えてくるから、おもしろい。特に、1つ目の願いが叶うところは「ひっ」と息を呑むような怖さがあった。

『不思議な下宿人』は部屋探しをした経験があるとさらに面白いかも。初任のころ家を借りたときのことを思い出した。振り込みではなく、毎月大家さんの家に支払いに行っていた。家を貸す方の気持ち、家を借りる方の気持ち、両方わかるとさらに面白い。

『魔法の店』は子どもとお父さんが出てくる。父の目線も楽しめるのは自分が親になったからだと思う。

まとめ

この『猿の手』は絵もいい。本文の絵はモノクロだけど、表紙のように自分の脳内でセピア色に変換される感じがある。怖いような不思議な雰囲気は大人になっても惹かれる。子どものころ、江戸川乱歩の少年探偵団シリーズにハマったことを思い出した。話の面白さと、絵の雰囲気が魅力的だった。中でもこの『時計塔の秘密』が一番好きだった。

同じく夢中になって読んだ『海底二万海里』J・ベルヌ作 福音館書店
も似た雰囲気があると思う。

何年経っても印象に残っている本。
話も絵も装丁も込みで好きだ。


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