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Age Well Japan Day1セッション報告 | ウェルビーイング市場の拡大におけるシニア領域の可能性

9月30日〜10月1日の2日間にわたり開催したAge Well Japan 2022 Day1の各セッションについて、もっと詳しくお伝えして参ります。

本noteは、(株)インテグレート代表取締役CEOの藤田康人氏による、シニア×ビジネスの切り口から、"ウェルビーイング市場の拡大におけるシニア領域の可能性"のセッションについてです。

SDGs文脈やウェルビーイング業界の現状と展望について興味関心がある企業の方は、特に必見です!

Age Well Japanの全貌について知りたい方はこちら↓

目次
(1)ウェルビーイングとは何か?
(2)ウェルビーイングの市場の現状と課題
(3)日本のシニア領域の可能性
(4)ウェルビーイング事業の新たな取り組み
(5)まとめ

株式会社インテグレート代表取締役CEO 藤田康人氏

藤田康人氏プロフィール

慶應義塾大学を卒業後、味の素株式会社を経て、ザイロンインファーイースト社(現ダニスコジャパン)の設立に参画。
2007年5月にはIMC(統合型マーケティング)プランニングを実践するマーケティングエージェンシーである株式会社インテグレートを設立、代表取締役CEOに就任。
現在はヘルステック領域及び食品、保険などのWell-being関連業界の多数の企業のコンサルティングを手掛ける。

特に患者の定期検診を促す事に成功したキシリトール・ブームでは、医者と患者の関係性をどうしたらウェルビーイングなものにリデザインできるのかに着目。
歯科業界における治療型で有病率10%の虫歯の疾患を持った患者の数に依存するビジネスモデルから、キシリトールガムを医者と患者のコミュニュケーションツールとして利用し、キシリトール製品市場を0から2000億円規模へと成長させました。

マーケティングを得意領域とし、新規市場開拓を成功させた、藤田氏が今、可能性を感じている市場、それがシニア領域におけるウェルビーイング市場なのです。

(1)ウェルビーイングとは何か?

どんな環境下でも、自分らしく生きる、これこそが本当のウェルビーイングと、藤田氏は考えています。

WHO憲章の前文に書かれている通り、長らくウェルビーイングの定義は、”肉体的(physical)にも、精神的(mental)にも、そして社会的(social)にも、全てが満たされた状態”とされて来ました。

しかし先天的にこれらが満たされない人々もいる中で、多様性が重視される今の時代では、この定義自体を今一度見直すべきです。

また、長らくシニアのゴールは健康である事とされて来ましたが、近年着目されているウェルネスという概念では、健康は豊かな人生・輝く人生を達成するためのベースとして位置付けられています。
端的に言うと、病気の治療という範疇を超えて、予防や広義の健康促進に重きを置く考え方に変化しているのです。

では幸せを感じるのはどのような時か、いわゆるウェルビーイングの構成要素は何であるのか?慶應義塾大学の前野教授によると、幸せを感じる人間は以下の4つの因子を持っているとされています。

  1. やってみよう因子

  2. ありがとう因子

  3. なんとなる因子

  4. ありのまま因子

また幸せの三段重理論によると、
①心と体の健康につながるセロトニン的幸福
②人との繋がりや愛につながるオキシトシン的幸福
③成功やお金につながるドーパミン的幸福

の順番に幸せを感じるのだと言われています。

ハーバード大学の75万人を超える研究によれば、幸せを感じている人は皆共通して、人間関係が良好な時だと答えたそうです。
即ちウェルビーイングな状態になるためには、2層目の人の繋がりや愛によって生まれるオキシトシン的幸福が重要なファクターになっているのです。

【まとめ(1)ウェルビーイングとは何か?】
・現代社会における本当のウェルビーイングとは、どんな環境においても自分らしい生き方をし、幸せを感じる事
・「幸せ」の感情を占める大半のファクターは「オキシトシン的幸福」である

(2)ウェルビーイングの市場の現状と課題

現在、世界規模でのウェルビーイング市場は、750兆円程と言われており、physical、mental、socialの各領域では、世界各地で沢山のスタートアップ企業が誕生しています。
しかし、アメリカのウェルビーイング市場は、大きく、整備されているのに比べて、日本のウェルビーイング市場は10兆円程度と、世界に比べて遅れを取っているのが現状です。
ウェルビーイングの概念が定着しておらず、テクノロジーを活用したウェルビーイングよりも、アナログな方式が主流です。

保険制度が充実している日本社会では、国民の意識は予防・未病よりも、病気の治療に集中しています。
治療費のほとんどは国が負担してくれるので、ウェルビーイングへの意識はアメリカや他の国の人々に比べて低くなっていることが背景に挙げられます。

B2B領域は育たず、ウェルビーイングのHR領域が成熟してきたこの領域ですが、近年いくつかの企業はSDGsの次のトレンドとして、『健康経営・ウェルビーイング』を意識し始め、スマートシティの開発に着手するなどの動きを見せています。
まだ、受動的なウェルビーイング市場である日本ですが、最近はミレニアム世代を中心に、自分達の生き方や暮らし方を真剣に考えるようになり、ウェルビーイングの考え方が少しずつ浸透しているのです。

【まとめ(2)ウェルビーイングの市場の現状と課題】
・歴史的背景や健康保険制度の違いから、日本のウェルビーイング市場はアメリカに比べて未熟で、HR領域のみ発展している状態
・若者世代を中心にウェルビーイングの考え方が浸透し、SDGsの次のトレンドとして、ウェルビーイング経営を意識する企業が増加

(3)日本のシニア領域の可能性

近年、興味深いことに保険業界でウェルビーイングな変化が見られ始めています。
住友生命が実施しているVitalityという保険制度は、病気にならないためのプログラムで、健康になると保険金が少なくなるという画期的な保険制度です。
そのため、お客様は健康に心も身体も健康になるために、個として主体的にウェルビーイングに取り組む風潮が浸透しています。
若者世代の間でも、ヨガやジャーナリング、1人キャンプやサウナなどウェルビーイングを求めるニーズが顕在化しています。

食品業界では、ウェルビーイングな変化が顕著に現れ始めています。
今まではヘルスケアの観点から、脂質・糖分・塩分が高いいわゆる美味しい食品は、健康な食品とは言えず忌避されて来ました。しかし、今では美味しさや親しい人と囲む食卓で、人は幸福を感じるという視点で、美味しい食品はウェルビーイング食品であると再評価されるようになりました。
美味しさがウェルビーイングに繋がる、これはナチュラルというトレンドで世界でも浸透しています。

他の具体例としては、清涼飲料水業界で天然・ナチュラルを意識したクラフトコーラが人気を博していますし、酒業界ではアメリカ企業のバドワイザー社は、ビールを通じて、人々を集め交流を促すを企業理念に、コミュニティを創出するようなビール開発・ビールの販売を行なっています。
日本でも、よなよなビールがこれに近い活動を行なっており、定期的にイベントを開催するなどコミュニティ作成を1つの企業の方向性として位置付けています。
それ以外にも、片付け・風呂掃除・美容など人々の生活の暮らしの中や、自動車やレジャーなど様々な業界にウェルビーイングの考え方は浸透して来ているのです。

【まとめ(3)日本のシニア領域の可能性】
・日本のシニア領域でも、保険業界を中心に、主体的にウェルビーイングに取り組む風潮が生まれている
・食料品業界や自動車業界など様々な業界だけではなく、人々の暮らしの中にもウェルビーイングの考え方が浸透している

(4)ウェルビーイング事業の新たな取り組み

好きなものを食べる、好きな飲み物を飲むなど、幸せを追求し過ぎると、人間は病気になりやすくなります。
一方で、人間の体はホメオスタシスという自然の力で細胞を傷つけない能力を持ち合わせています。人間が老化したり、病気になるのは、ストレスの影響でこのホメオスタシスの機能が十分に働かなくなるためです。

ここに対して、従来は薬の処方で老化や病気を防いできましたが、最近はウェルビーイングの観点から、漢方や生薬が注目されつつあります。
東洋医学の薬膳もその1つで、台湾食養生はカップ麺や生薬出しセットなど多様な形で、広まりつつあります。

さらに、最近はライフサイエンス領域も活発化しており、お腹の中を掃除してくれるオートファジーや、傷ついた遺伝子を再生してくれるサーチュイン遺伝子の技術で、POA(老化ペース)をコントロールし、老化を遅らせたり、細胞を元気にする事も可能になっているのです。
食だけではなく、サイエンスの分野でもウェルビーイングの考え方は新しいトレンドになっているのです。

【まとめ(4)ウェルビーイング事業の新たな取り組み】
・ライフサイエンス領域の発展から、今後ウェルビーイング市場は拡大している
・日本でも、今までのようなアナログなやり方ではなく、Age Techとしての新しい進化の軌跡を辿ることになる

(5)まとめ

既存のウェルビーイング市場は、プロダクトに依存即ち物性的な性質を帯びていました。
しかし、現在のウェルビーイング市場の事業は、人・企業・ブランドの関係性を再定義し、リブランディングする事で、顧客の求める幸せ像を実現しようという形に変化しています。

どんなビジネスも人を幸せにする為に、始まった。
シニアの求める幸せ像は、どんな形なのか、それを徹底的に見つめ直すことが大切である。関係性のリデザインが必要なのです。

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