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風が吹かないので

風が吹かないので ごわついて 顔が
ひっきりなしに たたいていた 雨が
闇の中に隠れてしまった

音も熄んで
水が引いて
のばした梯子を 上っていいのか
降りたらいいのかも
わからなくなってしまった

ここが暗ければ もっといいのに
周りの闇と 同じくらい
暗かったらいいのに

遠くにある息づかいを
耳をそば立てて きこうとしている

そうやって手に入れようとして
疲労こんぱいだ

内なる潮騒に 身をまかせる
ゆだねる

そうした後で のろのろと
しかもすばやく 行えばいい

身の節々が 病む
耳をそば立てすぎて
身のありかを 忘れてしまったようだ

平たい石の上で
冷えていく接触部分を
ひき剥がそうとするように
生きてしまった

とどこおりなく どこまでも
歩いていけるようにと

私は平たい石のことを
どれぐらい知っているんだろう

私は石を抱かなくてはいけない
私の身体の熱で
石の
熱などなかったかのように
石と
同じ冷たさになっても

私は石と共に在ることを
忘れてはいけない

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