VTuber(特ににじさんじ)同士のTwitterでの会話を簡単に見れるアプリをつくってみた
タイトル通りのWebアプリを個人開発しています。目指していた最低限の形になったので、公開しました。ぜひ使ってみてください!
特に、二次創作をする方に便利に使っていただけるのではないかと思っております。
デモ動画をつくりましたので、まずはこちらをご覧ください
アプリはこちらです
TwitterのAPI仕様などの制約から、いったん「にじさんじ」をまずは対象にしています。まだ全員カバーできていませんが随時追加しています。
2019/09/08 追記 アイドル部・ハニーストラップ・あにまーれ・四天王も見ることができます
(最初のアクセスで画面が真っ白で動いてないように見える場合があります。その場合、10-20秒ぐらいそのままお待ちください。これは、30分以上誰からもアクセスされない場合、サーバーが寝てしまうので、その時にアクセスすると起きるまでに時間がかかるためです。)
この記事では、以下のことを紹介します。
- このアプリはどういうものか?
- なぜこのアプリを作ろうと思ったのか?
- 今後目指す未来
1 バーチャルYouTuberのTwitter上の会話を深掘りできるアプリ Karel Capek をつくってみた
こんにち令和!…まって、ブラウザバックしないで!
……こんにちは!沃波もとそと申します。
バーチャルYouTuberにどっぷりハマった1人です。特に「にじさんじ」1期生をよく見ています。
あるきっかけから、冒頭のアプリ「Karel Capek」を開発しはじめて4ヶ月になりました。JavaScriptの勉強からはじめたのでとても時間がかかってしまいましたが、便利かどうか判定できる最低限の機能ができたと思っています。
1.1 このアプリの特徴
Karel Capekの現時点での特徴は次のとおりです。
- VTuber同士(特ににじさんじ)の過去の会話を簡単に見ることができる
例えば、剣持刀也さんと森中花咲さんの会話をみてみると下図のように表示されます。
1.2 想定ユーザー
次のような方に利用していただくことを想定しています
- にじさんじの二次創作をしている方
- 過去のあの会話、なんだっけ…!?を探せます
- 夏コミの原稿制作にも便利かもしれません
- 関係性の変化が会話に与える変化に尊さを感じる方
1.3 アプリの使い方
アプリの使い方は紹介ページにまとまっていますが、ジャンプするのが面倒ですよね。次のGifアニメを見てください。
1. トップページからVTuber(月ノ美兎さん)を選択します
2. 月ノ美兎さんが最近よく話すVTuber(このときは剣持刀也さん、えるさん)が出ます。
3. 剣持刀也さんを選択すると、その2人の過去の会話を見ることができます。
もちろん、Twitterの元のツイートに飛ぶこともできます。
(現実装ではTwitterのスレッドすべてが表示させることができていないので、詳しく見たいときにはジャンプをして見ることになると思います。)
2 なぜKarel Capekを作ったのか?
わたしがKarel Capekを作ろうとしたきっかけは、次の2点です
- VTuber Wikiの編集が大変だった
- 関係性の面白さに気づいた
詳しくご説明します。
2.1 理由1. VTuberに起きたできごとをまとめていたが、Twitterの会話をまとめるのが大変だった
「バーチャルYouTuberに起きた出来事をまとめるWiki」を編集しているのですが、それが大変だったので楽ができるツールがほしいと思ったのです。といってもなんのことかわかりませんから、少し長くなりますが、Wikiの成り立ちをご説明させていただきます。
2017年12月ごろからVTuberを見始めてまもなく、わたしはこう思いました。
バーチャルYouTuberやそのファンの間での話題はコンテキストが深いので、できごとをまとめていかないと、あとから来た人やちょっと離れて戻ってきたときにわからなくなってしまう
例えば、すでに懐かしい単語になってしまいましたが、「エルフの森を燃やせ」「ムカデ人間」「虚空」といった単語は、にじさんじ1期生をよく見ている人なら馴染み深いものですが、それ以外の人には何を指しているのかすぐにはわかりませんでした。はじめて見た人は、「どうして銀髪のヤンキーはエルフの森を燃やしているの?」と困惑するかもしれません。
また、VTuber自身も他のVTuberの放送を見ていて、その放送を見た視聴者と共通の話題で盛り上がる(例「○○ちゃんの放送で△△の話が出てている」ことを話題にする)、といったことをしていたため、コンテキストが深くなることは容易に想像ができました。「分かる範囲で元ネタを記しておきたい……!」と思いました。
そこで、2018年3月ごろから、「バーチャルYouTuberに起きた出来事をまとめるWiki」をはじめました。そのとき、すでに非公式Wikiがいくつかありましたし、すでに更新が停止しているものもあり、自分も更新を続けられるとは思っていませんでした。
しかし、このWikiに利用しているScrapboxというサービスの仕組みが、既存のWikiよりも、VTuber同士の関係性を記述するという点で優れると確信していたので、手探りで始めてみたのでした。
こうして、毎日帰宅してはVTuberの放送を見て、Wikiを更新する日々がはじまったのでした。(このあたり詳しくはバーチャルYouTuberのWikiをはじめた経緯に書いています)なお、編集に協力してくださっている方々のおかげで2019年5月時点でいまも地道に記事が増えており、1300件ほどの記事が存在しています。
VTuberの間で大きなイベントが有った際には(例えば大規模コラボ企画や地上波出演など)、Twitter上でも様々なドラマがあります。Wikiにはそれをまとめたりもしていました。例えば次のような記事です。
この際、Twitterのハッシュタグからファンの反応の代表的なツイートやファンアートへのリンクを張ったり、VTuberのイベントに対する反応をまとめるということをしていました。
しかし、これはあまりに大変でした。ある程度自動化できないか?と考え始めました。
2.2 理由2. バーチャルYouTuberの面白さは関係性にあると感じた
VTuberの放送を見る中で、「関係性」の面白さがひとつはある、と感じるようになりました。
ここでいう関係性とは、「誰が、誰と、どんな体験をして、どのように関係性が変わっていったのか」などを抽象的に表した言葉です。交流の中で関係性は変化していきます。もちろん動画内での絡みもありますが、Twitterでの絡みもあります。
Twitterでの実例を挙げれば、月ノ美兎さんと樋口楓さんの会話が楽しいとか、ママと剣ちゃんの会話が微笑ましいとか、そういうことです。そのようなツイートには「いいね」がよくついていますから、わたしだけではなく、多くのファンがこのような会話を楽しみにしていると感じています。
さて、VTuberのファンの皆さんは、Twitterで次のようなことがしたいと思ったことはないでしょうか?
- Twitter上の過去の会話を見たい
- 例:委員長とでろーんの会話が見たい、トリガーの会話が見たい
- 推しのVTuberが最近、誰とどんなことを話しているのか知りたい
- 過去のイベントでのVTuberの会話を振り返りたい
- 例:ニコニコ超会議2018参加VTuberの会話と、ニコニコ超会議2019の参加VTuberの会話が見たい
このような欲求は、例えば「二次創作をするために過去ログを見たい」というとき発生すると思います(自分はおきました)。また、「見逃してしまった場合に追いたい」ということもあるでしょう。
バイトや仕事、学校で忙しくて少しみられなかったとき、後から簡単に追いかけられたら嬉しいと考えました。
2.3 上記の問題解決のためにKarel Capekを作った
上で述べた問題のうち、主眼となるのは理由2です。
理由2で挙げたようなことが簡単にできるようになれば(Twitterの会話を簡単に見ることができれば)、理由1は自ずと解決します。
そこで、まずは次のことができるアプリを作ろうとしました。
機能1. ある2人の間の会話を見ることができる
基本的にこれが最小の機能になるのですが、これだけだと、誰が誰とよく話すのか知っている前提でしか使えません。それは使い勝手が悪いので、次の機能も最低限つけることにしました。
機能2. 最近よく話している人が誰かを知ることができる
これを推しのページに表示しておけば、推しがよく話している人との会話を見ることができて便利です。
実はTwitterには「高度な検索」という機能があり、これを駆使すれば、機能1を満たすことができます。アプリを作る必要もありません。
しかし、この機能は気楽に使えません。どれぐらい面倒なのか例をあげてみます。えるさんと樋口楓さんの会話が見たいとき、次のようなクエリをTwitterの検索窓に入力すれば会話を見ることができます 。
(from:Elu_World to:HiguchiKaede) OR (from:HiguchiKaede to:Elu_World)
これをスマホでいちいち打つのは無理でしょう。私にはできません。
Karel Capekを使うと、これを簡単に実現することができます。
このように、機能1, 2を満たすアプリを制作したのでぜひ使ってみてください!(๑´ڡ`๑)
3. 今後目指す未来と課題
現状は、便利かどうかを試すために最低限の機能しか実装していません。
使い勝手がいまいちなところもたくさんあります。ぜひ、フィードバックをこちらからよろしくおねがいします。
今後、次のような課題を解決したいと考えています。
1. 3人以上のグループのツイートをみられるようにしたい
- 例:トリガーのツイートが見たい
2. イベントに紐付いたツイートをみられるようにしたい
- 例:ニコニコ超会議2019のVTuberの会話が見たい、KANA-DERO開催前後の参加VTuberの会話が見たい
3. にじさんじ以外もカバーしたい
- TwitterのAPIとデータベースの料金の制約上、対象メンバーはにじさんじをメインに置いていますが、本来はにじさんじ以外に増やすことも可能です。今後できる限り対応していきます。
1に関しては、Twitterのスレッドのような概念を取り入れようと考えています。
2に関しては、実装よりも、イベントをシステムに登録するのが難しいです。登録は自分一人では不可能なので、第三者の協力が必要不可欠です。
このアプリを使って便利だと思っていただいたファンの方々が、自分でデータを登録できる(=その人達が便利になる)ような仕組みを整備する必要があります。
最終形としては、ツイートを時系列に読めて、放送のアーカイブを見ていると、進行に合わせてイベントに関わりのあるVTuberのツイートが表示されるというような風にしたいですが、道は遠いです。
3に関しては、システムに登録するVTuberさんを増やしたいということです。ただ、増やすと次の問題にあたることがわかっています。
1. TwitterのAPIの仕様上、一定時間内に一定数しかツイートを取得できない(ので一定以上人が増やせない)
2. ツイートのデータベースへの保存にお金がかかる
1は多少のお金では解決できない問題です。頻度を落として、15分毎に取得するユーザを変更するといった複雑な処理の実装をすることで人数を増やすことができるので、そういうことをしていくことになると思います。
2は直近の課題で困っています。現状のホスティングには月額1000円程度かかっているのですが、本腰を入れて数百名に増やすことを考えると、近い将来に月額5-6000円ぐらい払わないと維持できないことがわかっており、若干資金が心もとないです。(便利と感じていただけだたら、ご支援お願いいたします!)
アプリケーションについてお伝えしたかったことはここまでです。
ここから先は、制作者であるわたしの内面的なことを少し書かせていただきます。
おわりにかえて:平成最後に自分の代表作を貼れなかった人の話
わたしがバーチャルYouTuberをみはじめたきっかけは、のじゃおじでした。当時コンビニバイトで、収益化にも言及していたのじゃおじが、バズった後に投稿した動画は、自分の宣伝ではなく、所属コミュニティ(VRChat)の紹介でした。
その時の動画に写っていたものはカオスでした。動画単体としては(失礼を承知で言うと)すごく面白いというものではなかったと思います。でも、やっている人たちはとても楽しそうでした。
きっとそのようなコミュニティだからこそ、この人はリスペクトを持っているのだろうと感じました。
このとき、2007年ごろからはじまった、ニコニコ動画でボカロなどのUGCムーブメントが起こり始めたときのワクワクした感覚を思い出しました。
そのような当時と状況は異なっています。ただ、根底にある熱気や、試行錯誤の末に現れる新しく粗削りな未知に対して、毎日なにか面白いことが起こるかもしれないという未来への期待をいだきました。
そのあとは今に至るまで、YouTube上での企画や、Twitterやニコニコ動画、pixivでの二次創作、boothやFANBOXなどでのマネタイズ、地上波や芸能事務所、様々な企業を巻き込んで大きなムーブメントになってきています。もちろん、まだまだ道半ばではありますが、わたしは、VTuberもボカロと同じく「以前と以後をわけるもの」だと信じています。
ボカロ黎明期の私は何もできない学生で、なにかしたいなと思いつつ、何も続けることができませんでした(学生でも作っていた人はたくさんいたので、やる気の問題でした)。時の流れは早く、結果として、何もできない大人が1人出来上がりました。
みんなで作るムーブメントに、つくり手として参加できなかったという事実は、ずっと胸の奥底にひっかかっていました。このアプリを作り始めたときは、そんな事は考えていませんでしたが、いま振り返ってこの記事を書いていると、それを思い出します。
平成が終わりました。
Twitterでは 平成最後に自分の代表作を貼る で素敵な作品が流れてきましたが、自分には代表作などありませんでした。それが事実でした。
過去の行動はやりなおせませんが、令和のはじめにリリースしたこのアプリを通じて、VTuberのみなさん、ファンのみなさんの盛り上がりに少しでも貢献できたらいいなと思っています。今後作るソフトウェアも、そういうものでありたいです。
このアプリの制作チャンスを与えてくれたのは熱中させてくれたVTuberのみなさんです。本当にありがとうございます。足を向けて寝ることができません。(バーチャルだからどこに足向けてもセーフ(?))
作る癖がついたこと、それが本アプリ制作を通じた、私にとって最も大きな収穫でした。
「今回」は私も参加するぞ〜!