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アトツギの挑戦#6「入りやすいお茶屋をつくりたい」”入り口”から家業をアップデート!

新規事業や組織改革に取り組む筑後地区のアトツギ経営者にフォーカスする「ネクストリーダーズ」
第6回は大牟田市の製茶店から。長年地域で積み上げてきた信頼をベースに、アトツギがより魅力的なお店づくりを続けています。



地域に根差したお茶屋


有限会社 山田屋茶舗は大牟田市と荒尾市に4店舗を構える、創業78年目の製茶店。
仕入れた茶葉を自社独自でブレンドし「山田屋ならでは」のお茶を地元で販売してきた。

山田真衣さん
「山田屋にしか出せない味を提供してきたので、それが地域で愛されている理由かなと思います」

山田真衣さん(32)は10年前に家業に入った。現在は新栄町店の店長を務めており、ゆくゆくは経営を引き継ぐアトツギだ。

しかし、製茶業を取り巻く状況は年々変化している。

農林水産省が昨年発表した「茶をめぐる情勢」によると、国内1世帯あたりのリーフ茶の年間消費量は1,095g(2006年)から701g(2022年)となり、この15年ほどで約30%減少している。
生活様式の変化やペットボトルで手軽にお茶が飲めるようになったことで、伝統的なお茶屋は厳しい経営環境に立たされている。

https://www.maff.go.jp/kanto/seisan/engei/tokusan/attach/pdf/index-5.pdf

お茶屋さんって入店のハードルが高い?


真衣さんはこれまで度々、同世代の友人に「お茶屋のイメージ」を尋ねてきた。すると、よくこんな答えが返ってきた。

「お茶って高いとやろ?」
「入店したら何か買わないと出られない雰囲気・・・」

「若い人にとって、お茶屋には”何となく入りにくい雰囲気” がある」
家業に戻る前からそう感じていた真衣さんは、初めてでも立ち寄りやすい店づくりに取り組むことにした。

「入り口戦略」で山田屋は次のステージへ


真衣さんが最初に着手したのは、入り口付近の棚のディスプレイだ。
若者でも手に取りやすいライトな商品、具体的にはマグカップとお湯があれば飲めるティーバッグ等を店の最前列に置いた。パッケージもカラフルなデザインを採用している。


一方で、入店した後の動線上には従来からこだわってきたリーフ茶も並ぶ。

「本格的な日本茶を手にとってほしいからこそ、まずは入店するきっかけを提供したい」
真衣さんの根底にはこうした想いがある。

真衣さん
「父は『お茶は急須で入れるもの』という考えが強かった。そんな中、急須を持たない世代にどうお茶を普及していくのか。私はそこに対していろんな切り口が作れるのかなと思います」

もう一つの入り口戦略は、名物となるスイーツの開発だ。水害やコロナ禍の影響で街に元気がなかった2020年、抹茶を使った大判焼のイートインを始めた。
地域に根付いた祭り「大蛇山」にちなみ「大茶山」と名付け、子どもから大人まで足を止めてもらうきっかけをつくった。
急須で入れたお茶(Hot / Ice)もオーダーごとに1杯ずつ淹れる。本格的な日本茶に触れる場ができた。


「入り口」は店舗以外にもある

真衣さん
「普段の情報発信もお店に入るきっかけになるかなと思います。SNSもそうですが、お電話いただいた時の対応の仕方だったり、お客様に寄り添うことで安心して入れるお店にしていきたいです」

真衣さん自身が商品に?


この春、新たな商品が誕生した。自身の名前にちなんだ「まい茶ん」
「お茶×ハーブの一杯で日々を整える」をコンセプトに、これまで山田屋が扱ってこなかったハーブティーにチャレンジする。福岡県主催のアトツギ支援プログラムISSINに参加し、開発にこぎつけた。

・シャキッと気分を変えたいときに
・ほっと一息つきたいときに
・季節の変わり目に

シチュエーションや気分に応じて飲み分ける5種類のフレーバーを用意した。
パッケージには真衣さんの似顔絵が描かれている。

「まい茶ん」は、応援購入サービス「Makuake」で3月末まで先行販売し、その後店舗や自社のECサイトでも購入できるようになる予定。
この商品も山田屋茶舗の新たな入り口になりそうだ。

真衣さん
「本物を知ってもらえるお店にしたい。そのために、まずは私に会いに来てもらえるよう、自分自身を発信していきたいです」

明るいキャラクターで常連客から親しまれる真衣さん。
子供からお年寄りまで、取材中も多くのファンがひっきりなしにお店を訪れていた。


「まい茶ん」の商品情報はこちら(Makuakeでの販売は3月30日18時まで)

モトムットは筑後地区で新しいチャレンジを続ける事業者を応援しています。


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