見出し画像

報道に振り回されてよけいに不健康になっている。ニセ科学「マーガリンは食べるプラスチック」のデマに関して知っておくべき事実

米国では既にマーガリンは販売禁止になったなどというデマを信じている人が未だに多数存在する。

マーガリンは食べるプラスチック?だから買わない?トランス脂肪酸は病気になるリスクの高いものです。でも、マーガリンの代わりにバターで解決する問題ではないんです。気をつけるべきは脂肪分をとりすぎないこと

健康志向の高まりで健康にいい食べ物、悪い食べ物への関心が高まっています。それはいいことです。でも、マスコミやネットの情報にはいいかげんなものが多く、そんなニセ科学を本気で信じている人が多いことも事実です。

ここでは、いまだに後を絶たないトランス脂肪酸の誤解やウソについて見ていきましょう。

トランス脂肪酸はマーガリンの製造過程で作られる油。マーガリンはバターの代わりになるものとして発明された。バターとは乳製品の一種で牛乳に含まれる脂肪分を集めて固めたもの。100gのバターを作るのに4.8リットルの牛乳がいるので値段が高くなるので、入手のしやすい植物油をもとに作り、高価なバターの代わりになるものとして作られたのがマーガリンです。

植物油は「不飽和脂肪酸」の仲間で不飽和脂肪酸にはトランス型とシス型の二種類があります。

不飽和脂肪酸は固まりにくいので普通の温度では液体。固まりやすいように飽和脂肪酸に変えます。現在は水素添加という方法で作るのが一般的で、水素添加でつくると、一部の不飽和脂肪酸が残ってしまい、ただ残るだけではなく最初のシス型不飽和脂肪酸とは違うトランス型不飽和脂肪酸になるものがいます。製造過程でできてしまったトランス型不飽和脂肪酸が現在問題になっている「トランス脂肪酸」

トランス型不飽和脂肪酸を取りすぎると動脈硬化、心臓疾患になる危険性が上がるといわれています。悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らすといわれています。糖尿病のリスクが高まるといわれています。

ガンになるという報告はありません。アトピーの疑いも出ていますがまだ因果関係はわかってませんので、アトピー、キレる子供という言葉が出てきたら疑ったほうがいいです。科学的には関係は証明されていません。

欧米のように脂っこいものを大量に食べている国では動脈硬化、心臓疾患になる人が多く、死亡原因を減らす方法を考えます。欧米の方がトランス脂肪酸対策に熱心なのはそのためです。アメリカの死亡原因の1位は心臓疾患。一番大きな原因の対策を急ぐのは当たり前かもしれません。

WHOではトランス脂肪酸を全カロリーの1%以下に抑えるように呼びかけています。ここで重要なのはマーガリンを食べてはいけないとか、マーガリンに含まれるトランス脂肪酸を1%以下にしろとは言っておらず、全カロリー、つまり人間が食べたものに含まれるトランス脂肪酸を1%以下にしなさいということです。

2015年、アメリカではマーガリンが製造禁止になったという噂が流れました。その正体は「水素添加で作った油を食べ物へ使用することを禁止する」というもの。マーガリンを禁止してるわけではない。

わざとなのか無知なのかわかりませんが。トランス脂肪酸は間違った情報が広まり誤解を広めています。

嘘1:自然界にはない油
トランス脂肪酸は人工的に作られた油で、自然界にはないので危険な油というもの。しかし、自然界にもトランス脂肪酸はある。牛、羊、ヤギなどの反すう動物の脂にはトランス脂肪酸が約2~5%入っている。牛肉や牛乳にも入っている。つまり牛乳から作るバターにも入っています。マーガリンをやめてバターを食べても解決にはならない。

ショートニングを使ったお菓子が問題だという意見もあるが、世の中からトランス脂肪酸の入った製品をなくしてもトランス脂肪酸が私たちの口に入ることを防ぐことはできない。

嘘2:不飽和脂肪酸は液体なので血液をサラサラにするが、トランス脂肪酸は融点が高いので血液をドロドロにする

「血液がドロドロ、サラサラ」というのは「例え」で使ってるだけで医学的には意味はない。トランス脂肪酸の融点は43~45℃なので体温より高いように思えるかもしれませんが、シス型脂肪酸の融点は16から17℃。

でも、動物性の脂、肉に含まれている油の融点はもっと高い。肉の脂身が固まっているのはそのためで、バターがかたいのもそのため。食品中に含まれる主な飽和脂肪酸の融点は、ラウリン酸:44℃、ミスチリン酸:53℃、パルチミン酸:63℃、ステアリン酸:69℃。

飽和脂肪酸の方がトランス脂肪酸よりも融点が高く、トランス脂肪酸よりも動物性油のほうが融点が高い。この理屈なら動物性脂肪分のバターの方が危険ということになる。融点を問題にする人達は動物性脂肪分も全面禁止にしろという言い分になるので、油が直接血液の中に入ってドロドロにするわけではない。

嘘3:トランス脂肪酸は体内で分解されない
トランス脂肪酸は体内で分解できないという人もいますが、実際にはシス型脂肪酸と同じように体内で分解される。

嘘4:天然トランス脂肪酸はいいけど合成トランス脂肪酸はいけない
牛や羊にトランス脂肪酸が含まれていることはすでに書きました。アメリカでも牛肉を食べることは規制していません。禁止するのは「水素添加で合成した油を食べ物に使うこと」です。

そのせいなのか「天然トランス脂肪酸はよくて人工トランス脂肪酸はだめなんだ」と思った人がいるようです。

でも、それは間違いです。牛肉産業はアメリカ、オーストラリアにとっては大切な産業。下手に規制することはできません。禁止しないのはトランス脂肪酸はとる量を減らせば解決できる問題だから。

牛や羊の油からトランス脂肪酸を減らすことはできない。加工食品なら代わりの手段が見つかったら規制できる。アメリカの規制で「合成した油」とわざわざ言ってるのは酪農産業に影響はでないようにとの配慮。天然か人工かの問題ではなく、純粋に経済的、政治的な問題。

嘘5:食べるプラスチック
「食べるプラスチック」のキャッチフレーズは、主婦、OL、学生にもウケたようで、かつてアメリカのジョン・フィネガンという人が、「プラスチック化したオイル」と言ったことから始まったという説があります。

植物油を水素添加する工程を「plasticize」と呼んでいたことから「プラスチック化」といわれるようになったのかもしれません。

ちなみに「plastic」とは「力を加えたときに変形してしまうもの」(専門用語的には、可塑的な物)という意味。「plasticize」は「可塑化」ということ。変形しないものを、変形するものに変えるという意味です。つまりプラスチックの本当の意味は「柔らかいもの」という意味。

化学的な知識のないものが日本語訳すると「可塑化」とせずに「プラスチック化」としてしまったのでしょう。

プラスチックは庶民にとっては劣化しない人工物の代表のようなイメージで、この言葉の使い方が変化しない硬いものにしてしまうという誤解を生んだのでしょう。

嘘6:人工物だから腐らない
トランス脂肪酸の入っているショートニングで加工したフライドポテトが腐らないとか。マーガリンが腐らないことを理由にして人工的に作られたプラスチックだから腐らないと主張する人がいます。

もともとオリーブオイルやサラダ油は微生物の栄養分になるような成分が入ってません。だからオイルでで加工した物は腐りにくいですし、オリーブオイルは放置してても腐りません。シス、トランス関係なく脂肪酸を使えば腐りにくいのはあたりまえです。微生物が繁殖しにくいのですから。

嘘7:トランス脂肪酸は食品添加物
誰がトランス脂肪酸は食品添加物だと言ったのでしょうか?トランス脂肪酸は意図的に入れるものじゃないです。製造過程でできてしまった副産物。以前は危険性が知られてなかったので、入ったままになってるんですね。現在はメーカーの努力もあって、トランス脂肪酸も減ってます。

あとは「高くてもいいから健康にいいものを選ぶ」という選択ができるかという問題です。

もちろんトランス脂肪酸には動脈硬化、心臓疾患などのリスクがありますので食べないほうがいいのは間違いありません。でも、程度の問題です。少しくらい食べたからと言って病気になるわけじゃありません。

マーガリンやショートニングだけを叩いてすむ問題ではないんです。まして、マーガリンをバターに変えてもリスクは変りません。

トランス脂肪酸をできないように完全に飽和脂肪酸にしたマーガリンをつくると、飽和脂肪酸による病気が増えます。現実に日本人のトランス脂肪酸摂取量は減少傾向にあるかわりに飽和脂肪酸の摂取量は増えています。

厚生労働省の資料によると、日本の飽和脂肪酸摂取量の基準値は7.0%ですが、30代、40代女性は7.6%と超えています。トランス脂肪酸を気にしすぎるあまり、よけいな脂肪をとっているということではないでしょうか。

報道に振り回されてよけいに不健康になっている。マスコミは視聴率や発行部数が優先。本当かどうかは二の次です。すべて信じるのは危険です。

読んでくれてありがとうございます! 頑張っているチームのみんなに夜食をご馳走しようと思います。