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AI活用で子供支援の未来を切り拓く|ChatGPTを使ったケース会議の革新

僕は放課後等デイサービスという施設で働いています。この施設は、発達障害を持つ子どもたちが放課後に通う場所で、学童のような役割を果たしています。私自身は、長年飲食業界で働いており、自分のお店を持つことが夢でした。30代でその夢を叶えることができましたが、テナントビルが建て替えられることで、人生の岐路に立たされました。

その後、地域活動であるダイコンこども食堂に関わり、発達障害を持つ子どもたちと出会いました。その出会いがきっかけで、児童福祉の分野に転職しました。福祉業界においては、多くの「何でなんだろう?」という疑問が浮かびました。今回はその一つについてお話しします。

障害の有無に関わらず、私たち人間はこだわりを持っています。子どもたちは、興味や関心によってその瞬間に生きているため、「今、これをやりたい!」ということを邪魔されると怒ることがあります。発達障害の子どもたちは、この特性が強く、生活に支障をきたすことがあります。僕はそんな子どもたちを見て、対応が難しいと感じています。

特に困難なのは、一度覚えたことや学習したことを修正することです。「この前教えたことが間違っていた」と言っても、受け入れるのが難しいのです。これは、子どもたちの脳に関わる特性であり、努力で解決できる問題ではありません。だからこそ、私たちは子どもたちを支援し、関わる大人は注意を払い、接する必要があると思っています。まさに、「大人は失敗が許されない」という状況です。

健常者であれば、「間違っていた」と言われても気持ちを切り替えて修正できますが、発達障害の子どもたちはそうはいきません。私が働く放課後等デイサービスでは、専門知識を持つ人が必ずしも多くない現状があります。アルバイトで働く人たちは、学生や主婦、年配の方も多く、発達障害の子どもたちを支援するための専門知識が必ずしも身についていないのが現状です。この業界は慢性的な人手不足が続いており、人員確保が優先されています。そのため、常勤で働く人たちも厳しい職場環境となっています。

学校の先生の労働環境が劣悪であるように、発達障害に関わる支援者も厳しい職場環境に置かれています。また、日本では行政が子どもにかけるお金が少ないと言われています。そのため、忙しい業務に追われる中で、勉強や意見交換の時間が取れないことが多いのです。

僕は、同じ事業所の人たちだけで仕事をしていると、世界が狭くなっているように感じます。もちろん、働く皆さんは子どもたちのためを思っていることは承知していますが、感情論だけでは解決できません。

現在、発達障害に関する論文や研究が盛んに行われており、インターネットを通じて手軽に情報を得ることができます。Google Scholarを利用すれば、論文に特化した検索もできます。インターネットを活用して有益な情報にアクセスし、それを活用してほしいと思っています。大人になっても勉強は必要です。

私たちが働く環境や子どもたちの支援を改善するためには、専門知識を身につけることが重要です。インターネットを活用し、国内外の研究成果や事例を学び、子どもたちの健全な成長を支援していくことが求められます。私たち大人には、失敗を許されない責任があるからこそ、常に勉強し続ける姿勢が大切だと思います。

話題が変わりますが、昨年11月に発表されたChatGPTは世界中で大きな話題となりました。僕はテクノロジーが好きで、ChatGPTのような AI を試して遊んでいます。特にチャットのインターフェースを介して、人間の自然な言語でコンピュータとコミュニケーションができることが新鮮で楽しいと感じています。そこで、「自分の仕事にどう活用できるか」と考えてみました。

まず試してみたアイデアは、「ChatGPTを使ってケース会議ができないか」というものです。発達障害の子供たちには、主治医や特別支援学校の先生、児童発達支援センター、放課後デイサービスなど、様々な大人が関わって支援を行っています。全員で連携して子供たちを支援することが重要ですが、現実的には時間の調整が難しいため、ケース会議は問題行動のある子供たちが優先されています。しかし、全ての子供たちに対しても実施したいと思っています。

そこで、「ChatGPTを使って擬似的なケース会議ができないか」という発想が生まれました。目的は、自分では思いつかないアイデアを提示してもらい、自分の思考を刺激することです。新たな気づきが得られることを期待して、このアイデアを考えました。

具体的には、まず AI がランダムに8人の参加者を選びます。参加者には児童相談員、公認心理師、言語聴覚士、作業療法士、小児科の医師、保育士、児童発達管理責任者、保護者や民生委員など25人が登録されています。その中から適任者5人と、議論に幅を持たせるために2名、さらに無作為に1名を選び、合計8名で議論が行われます。参加者は議題に対して立場から意見を述べたり、他の発言者に反対意見を言ったりしながら議論を進め、最終的に議論内容をレポートとして出力するというプロンプトが設定されています。この機能を簡単なWebアプリケーションにして公開しています。利用者は相談したい内容を入力し、送信ボタンを押すだけで、AI が自動で議論を進め、レポートを出力してくれます。

もちろん、本来は実際に関わる人たちが集まってケース会議を開くことが望ましいですが、それを全ての子供たちに実施することは現実的には困難です。しかし、子供たちと関わる人たちとの意見交換が重要であるため、AI を活用してサポートすることが良い方法だと考えています。さまざまな人たちの意見を聞くことで、自分の考えが偏らないように、テクノロジーを活用していくことが重要だと思っています。

この AI を使ったケース会議では、必ずしも AI が提示したものをそのまま受け入れるわけではありません。むしろ、自分の思考を刺激するために、AI の技術を活用してほしいと考えています。テクノロジーは人間を拡張するものだと思っており、ChatGPTは自分の思考を拡張してくれる装置だと考えています。何より、AI を使うことでスピードが速くなり、同じ質問をしても毎回違う回答が得られるため、自分が考えていなかった視点から意見が得られることがあります。そんな出会いを楽しみながら、ぜひ活用していただきたいと思っています。

具体的な例として、言語聴覚士がアドバイスをくれた意見で「自分の気持ちを相手に伝えられるように、会話の練習も重要だ」というものがありました。また、栄養士などが参加することで、さらに面白い意見が得られることがあります。実際の支援現場ではなかなか聞けないような意見があるため、AI を活用して支援のアイデアを広げていただきたいと思っています。

僕自身も現場で働いているため、仕事が大変で時間に追われていることを痛感しています。しかし、改善しなければ状況は良くならず、子供たちの成長は待ってくれません。だからこそ、多くの人に AI を恐れず、人間を拡張する力強いパートナーとして受け入れてほしいと願っています。

AI 技術、特にChatGPTを活用することで、ケース会議を実現し、関係者間で意見交換や新たなアイデアの提案が可能となります。これにより、子供たちへの支援がさらに充実し、成果を上げることができるでしょう。

今後も、さらなるテクノロジーの進化が期待される中、私たちはその恩恵を受けながら、子供たちや関わる人たちの支援に力を入れていくべきです。AI を活用し、自分の考えや視点を広げ、より良い支援を実現していくことが求められます。

最後に、テクノロジーを活用することは、私たちが子供たちに与える支援や教育に大きな影響を与えることになります。私たちが適切に活用し、子供たちにとって最善の環境を提供することが大切です。このような AI 技術が、私たちの努力をより効果的で効率的なものにしてくれることを期待しています。そして、子供たちの未来を明るく照らすことができることを信じています。

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