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鬼滅の刃とコロナウイルス。

久しぶりにnoteを更新。約8ヶ月ぶりのテーマはこれ。

鬼滅の刃の快進撃が止まらない。一方でコロナの状況がなかなか良い方向に進まない。まるで鬼滅の刃のような鬼と人間の長い戦いさながらである。

鬼滅の刃の爆発的な人気とコロナの状況が偶然に思えないほど一致しているのは、その因果に何かある気がしてならない。

コロナが発生する前からじわじわと鬼滅の刃の人気は徐々に上がってきたが、2020年コロナが本格的に日本を席巻してから、鬼滅の刃も社会現象になるほど爆発的な人気になった。

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鬼滅の刃累計発行部数の推移

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Googleトレンド検索指数「鬼滅の刃」

また時代背景も鬼滅の刃の舞台が明治から大正への改元時期であり、我々が生きる時代もちょうど平成から令和へと移ったばかりだ。

時代を振り返ると、元号の移行期には、不思議なほど、何かが崩れ落ちる。

江戸から明治に変わるときには明治維新があり国家体制が解体、平成もバブルの崩壊で始まり、令和ではコロナウイルスの流行により、これまでの生活様式が一変した。

これまでに日本の歴史の中でも疫病に苦しめられた時代があった。奈良時代の天然痘、平安時代の麻疹、江戸時代の梅毒、幕末にはコレラで3万人以上が死んでいる。

奈良時代の天然痘は、日本の総人口の30%、100万人以上の死者を出している。令和3年1月時点でコロナの死亡者は3000人を突破しているが、比較すると奈良時代の天然痘が脅威が凄まじいことがわかる。

芸術の役割はなんだろうかと考えるとき、その一つに心の救済があると私は考えている。

奈良時代の天平の疫病大流行の際も、疫病の収束を願い建てられたのが、奈良の大仏である。平安時代になると辟邪絵(へきじゃえ)という疫病を懲らしめる神様を描いた絵が流行した。これはまさに当時の鬼滅の刃のような役割だったのかも知れない。

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国宝 「辟邪絵 天刑星」
出典:奈良国立博物館 収蔵品データベース https://www.narahaku.go.jp/collection/1106-0.html

芸術はいつもその時代の世相を反映してきた。

鬼滅の刃のブームの要因には、緻密に設計されたマーケティング戦略やコンテンツ自体の良さなど複数あると思うが、コロナウイルスの影響も大きな要因としてあると私は感じている。

鬼を倒し、平和な世の中を実現するという希望を多くの人が望み、それがこのような形で表現されているように感じている。テクノロジーの進化により世の中が便利になっていく一方で、地球環境の急激な悪化や未知の疫病の蔓延など不安要素は日に日に増えるばかり。

そんな状況で芸術が果たす役割は心の救済ではないだろうか。

鬼滅の刃の中には、多くの力強い言葉が溢れている。

「心を燃やせ」

「胸を張って生きろ」

「頑張れ炭治郎 頑張れ」

「失っても失っても 生きていくしかないんです、 どんなに打ちのめされようとも」

いつ終わるのかわからない不安な状況で、日本中の人が鬼滅の刃によって励まされた、だから記録的なヒットを生み出せたのではないだろうか。

興行成績は、歴代1位、2位は「千と千尋の神隠し」だ。さて、ここで興味深いのは、「千と千尋の神隠し」が上映された年は2001年、この年は世界同時多発テロが起こり、またデフレが進み、失業率は5%台、大型倒産が相次いだ波乱の年だった。

「千と千尋の神隠し」の制作意図についてのインタビューの中で、宮崎駿監督はこう答えている。

「僕は彼女たち(少女たち)に『大丈夫、あなたはちゃんとやっていける』と本気で伝えたくて、この映画を作ったつもりです」

この言葉を直接伝えても多くの情報が削ぎ落とされてしまい、うまくは伝わらない。しかし映画という情報量の中で様々な感情を孕んで伝えた時、そのメッセージは、多くの人の心を打つことになった。

大きな不安が世の中が包み込む時、必然として救済とのしての芸術が花開く。これはいつ時代も変わらないのかもしれない。

日本を代表する芸術家、村上隆も心の救済が今後のアートのメインテーマになるだろうと言っていた。

その事例として、「あつもり」や「ポケモンGO。」を挙げていた。
小さくても一人一人の心に届くもの。それはもしかしたらyoutuberの作る動画もその範疇に入ってくるかも知れない。

科学がここまで発展する前までは、心の救済は宗教が担っていた。
しかし貨幣を中心とする資本主義が世界の宗教になった今、多くの人が精神的主柱を見失っている。

以前、指揮者の大野和士がインタビューで語っていたエピソードが印象的だった。大野和志がザグレブフィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者をしていた頃、クロアチアで内線が勃発。毎日空襲があるような情勢の中でも、彼らは毎週コンサートを行っていた。

コンサートには、常に危険が伴い、そして極寒の最中でも毎回、静かに、そして多くの観客が集まったきたという。演奏が始まると歓声が上がり、国籍や人種を超えて音楽を通して一つになっていた。彼らは感動を求めてた。

これこそ芸術による心の救済を顕著に記したエピソードだろう。

実際にアートに触れることは、様々な効果があることが科学的に証明されている。ここでいくつか紹介したいと思う。

・幸福度が上がる
https://psycnet.apa.org/record/2020-43610-001?CheckAccess=1
・ストレスが減る
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/07421656.2016.1166832#.V3RjQ5OLTeQ
・寿命が伸びる
https://forbesjapan.com/articles/detail/31520

などなど、他にもアートによるポジティブな効果はいくつもある。

冒頭の話からかなりずれてしまったが、1日でも早く以前のような疫病に怯えることなく生活できる日が来るのを、心から祈っている。

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