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小林製薬に学ぶ、新しい商品・サービス名の考え方

とあるNPO法人で、学生さんと一緒に新しいサービスの名前を考える機会がありました。活発な議論を促しつつも、いい感じにアイデアをまとめるファシリテーション方法を考えていたところ、小林製薬さんの商品名をベースに考えたフレームが議論のインプットとして役に立ったので、紹介したいと思います。

1. 名称を考える4ステップ

新しい商品やサービス名を考えるとき、よくあるのは「アイデアに溢れた人」や「広告代理店のコピーライター」など、専門のスキルを持った人が良い感じに決めてくれるという誤解です。この誤解を解くために、以下の4つのステップを通じて、新サービスの名称を全員で考えていくのだというコンセンサスを取りました。

1. サービスの理解
2. 連想されるキーワードのブレスト
3. 取り入れたいキーワードの選定&加工
4. ポジショニング整理&評価

2. 小林製薬の事例を使った理由

小林製薬のホームページを見ると、『キズドライ』『熱さまシート』『サワデー』など、一度はお世話になったことがある商品がズラリと並んでいますが、これらの商品名をよく見てみると、その多くは、商品のコアバリューや特徴、機能価値・感性価値などに関するキーワードを組み合わせて作られています。

例:キズドライ = 傷が乾く
        熱さまシート = 熱が冷める
        サワデー = (消臭されて) 爽やかな一日

デザイナーやコピーライターが、商品・サービス名の開発やリブランディングの際に使用するさまざまなメソッドは、一朝一夕で使いこなせるようになるのは難しいですが、キーワードを組み合わせて作るこの方法であれば、初心者でも真似出来るのでは?と考えました。
(同じような価値ある商品名を考えつくか?…という話は別問題として。)

3. キーワードの選定&加工

実際に商品・サービス名を考えていく上で、商品としてアピールしたいポイントや、そこから連想されるキーワードをブレストすること自体は難しくありません。しかし、そこで出たキーワードをどのように取捨選択し、加工していくか?については、工夫が必要です。

ブレストで出たキーワードを、KJ法などの要領でグルーピングしていくという手法は一般的です。ただしこの手法は、キーワード群を一般化していくようなプロセスでは有効ですが、今回のように特定の情報だけを強調したり、濃縮していくような場合には不向きです。そこで、キーワードを取捨選択するための”軸”が必要なのではと考えました。そこで作ったのが、以下の図です。

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小林製薬の商品をよくよく見てみると、以下の2つの軸を用いて、上記の4章限に分類することが出来ます。

・結果をアピールするか、プロセスをアピールするか
・機能自体をアピールするか、雰囲気(感覚)をアピールするか

例えば、『キズドライ』は「傷口がすぐに乾く」という唯一無二の機能性をアピールしていますが、その結果として傷が早く治るとか、傷口が綺麗になる…といった点については触れていません。

逆に、『サワデー』を例に取ってみると、消臭された結果としての爽やかなトイレ…を強調して、爽やかな1日が訪れるという雰囲気(感覚)をアピールする一方で、消臭力がどうなのか?や、消臭にどういった成分を使っているのか?といった機能面については一切触れていません。

今回は、自分たちが連想したキーワードがどの象限に当てはまるか、この軸を基に考えることで、商品・サービス名のバリエーションを整理することが出来ました。
(もちろん、商品名の分類方法 = 軸の切り方はひとつではありません。目的に合わせて、軸を検討してみてください。)

4. ポジショニング整理&評価

最後に、自分たちが生み出そうとしている商品・サービスのターゲットユーザーのペルソナや、コミュニケーションチャネルの特性などを踏まえて、どの象限の情報をメインとして採用し、どれをサブ(タグライン、キャッチコピーなどのコミュニケーションで利用)にするべきか?を考えていきました。

例えば、『ビスラット』という商品は、パッケージからもわかるように女性をターゲットにしたものです。一方で、同一の機能を持った『ナイシトールZ』は、男性をターゲットにしたものであることがわかります。

このように、ユーザーやチャネルの特性に立ち返ると、感情的なコミュニケーションと、理論的な説得のどちらが有効か?や、結果として得られることを魅力的にアピールするのと、プロセスにおけるライバルとの差別化ポイントを謳うほうのどちらが良いか?を考えることが出来ます。

まとめ

以上、小林製薬さんの商品名からヒントをもらって考えた、新しい商品・サービス名の作り方についてまとめてみました。

世の中には、もっとイケてるフレームがたくさんありますが、今回の内容は、とにかくシンプルさ重視で考えたものとなっています。例えば、サークルの名前を決めたりだとか、ちょっとした社内研修・アイデアソンなどで、肩肘張らずにご活用いただければ幸いです。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。本記事の一部でも、ご参考になっていれば幸いです。ご意見・ご感想、ディスカッションも大歓迎です。Twitter もやっているのでフォロー頂けると、励みになります。

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