SONY α7S Ⅲ、ワンオペシネカメラという言葉の裏側。
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SONY α7S Ⅲ、ワンオペシネカメラという言葉の裏側。

Motoki Kobayashi 小林基己/ Cinematographer

10/9に発売するSONYのα7S Ⅲというカメラに関する記事をPRONEWSという映像系Webメディアに書いた。使用期間として4日間借りている間にトレイラー風ショートムービーや友人のYouTube撮影など、いくつかの場面で登場してもらった。

**[OnGoing Re:View]Vol.105 解像度を捨てて「S」の称号を引き継いだ4Kシネカメラの完成形「α7S III」 - PRONEWS **https://www.pronews.jp/column/20201005170032.html

そして、この記事はこんな文章で締めくくられている。「このα7S IIIは約1210万画素というα7S初代から続く解像度を維持する事でα7Sの「S」の由来にもなるSensibility(高感度)を突き詰め、成熟した使い勝手を持って、ワンマンオペレートできるシネカメラとしての完成形への道を独自に歩んでいる印象を受けた。」
この”ワンマンオペレートできるシネカメラ”というフレーズが自分で書いていながら気になってしょうがない。

冒頭に書いたことは後述するとして、ライターが本職でない私は、どうしても使用評価動画に気合が入ってしまう。
自分の中では、良い画を撮っている人の言葉は無条件に納得してしまうが、どんな画を撮ってるか分からない人の言ってる事は信用できないという考え方なので、自分を信用してもらうための免罪符のようなものかもしれない。

さて、この「Tokyo Night Drift」と題したショートムービー。夜の渋谷を舞台に、ミシェルエンターテイメントの協力で8人の俳優陣に出てもらって4時間で撮りあげた。詳しくはPRONEWSの記事を参照してほしいが、スクランブル交差点などの明るい状況以外は殆どiso12800を使用している。フィルム時代はiso500でも使うのを躊躇っていたし、最近でもiso4000とか入れるとドキドキしてしまうのを考えるととんでもない数字だ。
もう一つ特徴的なことは全編オートフォーカスでの撮影ということだ。これもちょっと前までのAFは使い物にならなくてチャンスを逃すことが多く仕事には使えないレベルだったのが、自分で送るよりも明らかに正確になっているし、カメラマンの意図も読んでくれているのでは?と思うほどの自然な送りだ。
とにかく高感度の画質が良いのとAF性能の良さがα7S Ⅲの真骨頂だ。

この高感度と高性能のAFが、一人撮影部を可能にしてくれた。
撮影スタッフは照明に大島洋介さん、手伝い的に鈴木くんという3人体制で、キャストの方が明らかに多い。役者陣も出演シーン以外は協力してくれるがカメラ周りのことは自分だけでしなければならず、その状況でも進められる事に驚きつつも、新しい撮影スタイルの可能性を感じた。

ただ、その新しい撮影スタイルというのが、作品のレベルの低下につながるように思えてならない。
現場がコンパクトになるということは、表現の幅が広がる事につながるので歓迎したいのだが、アシスタントがいる事で撮影の最低限レベル、ちゃんとRecされているか? 設定は前のカットと同じになっているか? フォーカスは合っているか? 画面の端にバレているものは無いか? バッテリー残量は足りているか? など。
自分以外にそういったことに集中してる人がいてくれていると思うだけで、画面の中で起こっている芝居や画角、明かり、カット構成に意識を持っていくことができる。映画撮影はそういうものであって欲しいという思いもある。

そう考えるとワンオペシネカメラという言葉は、矛盾した暴力的な言葉だったのかと後悔している。ただ、ミラーレスカメラから動画を始めた世代はこういったスタイルがスタンダードになっていくのだろう。
自分もこういった方法を選択肢の一つには加えながらも、オールドスタイルの撮影現場も踏襲していかなければ、なんて、、、そんなことを悶々と考えつつ、カメラマンとは何をする人なのか?という根源的な問題まで想いを巡らせながら編集をしていた。

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Motoki Kobayashi 小林基己/ Cinematographer
CM、MV、映画、ドラマの撮影監督。バーチャルプロダクションに造詣が深いVFXスーパーバイザー。映画「夜のピクニック」「パンドラの匣」など、ドラマ「素敵な選TAXI」など、2017NHK紅白オープニング映像。MVでは、スピッツ、ウルフルズ、椎名林檎、リップスライム、欅坂46など