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承認の魔力と、良い距離感をとる

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2015年12月24日、東京都渋谷区で開業届を出しました。

「変革の前夜を影になり日向になり支えるプロでありたい」と思いを込めて、同じ前夜の意味を持つ12月24日に開業してから5年。

その間ずっと、これから起業やプロジェクトを行う人たち、すでに事業を立ち上げて成果を出す活動している人たちの支援が生業です。数えられるだけでも、4,000人を超える個人・法人の想いや事業構想を心で聴き、問いを編み、その挑戦が変化が生むまで触媒として伴走する仕事をさせて頂きました。

そこで、これから事業やプロジェクトを始めたい方(妄想段階〜試作テスト段階くらい)と外部評価の関係性について思うところがあり、そのステージの意識の持ち方の一助になればと筆を取らせてもらいました。

起業ブームと「わたし」の物語

目線を世の中に向けて見ると、この5年だけでも、「事業やプロジェクトを立ち上げて、世界を変える私」の物語をSNSに発信する人の数はぐっと増えたなと感じています。テレビの向こうの誰かの物語に心を寄せるよりも、自分の物語をTwitterやInstagramに投稿することに楽しさや高揚感を見出している人が増えたように見えています。

その流れに呼応するように、企業・個人が行う創業支援プログラムや選抜制のアクセラレーター、コミュニティと呼ばれるものも確実に増えました。

新しいことに挑戦する人とそれを応援する人が増えたのは本当に喜ばしいと思いつつ、なまじスタートアップや起業支援の現場にいると、「自分の外側にあるプログラムやコミュニティに認められたかどうか」で一喜一憂する風潮もまた、加速度的に強まっているように感じています。

例えば、まだ名も無い若者がある日突然、何かのプログラムに採択される。名だたる大企業や信頼のおける公的機関、著名な起業家やクリエイターから評価、承認される。そのことをSNSに投稿する。そして、ソーシャルネットワーク上の「ともだち」たちは、幅の広い「いいね」を押す。

誰だって嬉しくなるし、凄い人に認められたい気持ちがあって当然。この承認がきっかけになり、人生や事業のフェーズがガラッと変わる場面を、私もたくさん見てきました。

承認が敗者を生み出す構造

しかし、誰かに評価、承認を与えるのは、評価されない誰かを生むことでもあります。

選ばれなかった人、日の目を見なかった人は「自分の物語や存在そのものに価値がなかった」と認知し、萎縮やあきらめ、自己否定をする危険を孕んでいます。

実際、こういったプログラムものは、主催者側の意図や目的があって運営されています。応募者と企画意図の相性によって生じた結果を、個人の想いや取り組みの普遍的な価値否定として捉える歪みが生まれているのだとしたら、それは残念だとずっと思っています。

少なくとも、人口が減少している日本で、せっかく立ち上がった人の声がどこかに消えて行く状況は、本質的じゃないし、もったいない。

承認の魔力が、歪めているもの

承認が名もなき若者を引き上げる効用がある一方で、この魔力の危うさは何なのでしょうか?

それは、認知の歪みです。

本来、事業は「人の役に立って対価をもらう取り組み」のはずなのに、選ばれた人も選ばれなかった人も「特定のプログラムやコミュニティあるいはSNSで承認されたかどうか」が自分の存在と行為の価値を決めるかのように無意識に誤解してしまう。

承認欲求の呪縛にとらわれて、SNSのアルゴリズムや特定のコミュニティ、業界の第一人者(的な人たち)に認めてもらう活動に無意識のうちに没頭してしまい、本当に自分が作りたかった世界や理想、それを応援してくれる仲間をおざなりにしていく罠が、そこには存在します。

承認欲求には、私たちが本来持っている輝きをくすませてしまう危険性があります。川端個人としては、この魔力と適切な距離感を自覚的に取るのを推奨しています。

では、この承認欲求の魔力と、どのように付き合えばいいのか。

真実の瞬間づくりに専心する

少なくとも、これから何かしらのプロジェクトや事業を立ち上げる人たちにとっては、「顧客に価値を届ける自分の物語」に意識を集中させることだと考えています。

事業をつくる本質は、「顧客を特定する」「顧客に価値を届ける」「価値提供を続けながら進化させる」、シンプルにこれの繰り返しでしかないと思っています。この工程を何度も何度も繰り返し、少しずつ世界の色を変え続けた結果、どこかの誰か、しかも何かすごそうな肩書のついた人たちに認めてもらえるのならば、それに越したことはないでしょう。

けれど、誰かに認めてもらうことが、わたしたちの物語のゴールではないはず。あくまでも、わたしたちの身の回りや社会、世界を少しでも良い方向に変えるのが物語の筋書きだとすると、やることは一つ。

届けるべき人たちに価値を届けること。
その繰り返しこそがわたしたちの評価を高め、新たな機会や資産をもたらし、少しずつ事業のステージや挑戦の規模、質感が変わっていくものだと、私は思っています。

承認の魔力と適切な距離感で付き合い、うまく扱うコツは、わたしたちの「真実の瞬間」に意識と行動を振り向けること。

もうすぐ2021年がやってきます。
望む未来をつくるために、2021年、どんな瞬間を作り出したいですか?


※本稿の意図は、これからプロジェクトや起業(社内起業的なもの含む)に向かっていく個人が、雑音に惑わされずに前に進む一助になればと書いています。事業のインパクトを拡大する段階においては、戦略的に受賞や採択など外部評価やブランティングに力を入れたり、エクイティファイナンス等の大きな資源を受け入れることも必要ですので、所謂アクセラレーター等の価値を否定する意図はありません。
※上記の内容は、川端元維個人の意見であり、関与する法人や事業の意見を反映するものではありません。
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