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Web3が変えるもの レンタルから所有へ

先日、「クリエイターエコノミ勉強会」に宮武徹郎さんが出演され、同氏が運営するオフ・トピックというメディアを知りました。

Off Topic(オフトピック)は、米国を中心に最新テックニュースやスタートアップ、ビジネス情報やカルチャーまで、ゆるく深堀りしながら解説するポッドキャスト番組。

という触れ込みですが、全然「ゆるく」ない(笑)。宮武さんの知見があまりに最新かつ広範で、同氏が発する言語の大半がカタカナ。米国在住で、比較的テック系の情報をフォローしている私でも、100%理解することは困難なレベル。

今回は、「#106 Web3のアイデンティティについて考える」について紹介させて頂きます。

宮武氏は「ウォレットにアイデンティティが集約されることで、これまでウェブ上のプラットフォーム毎に分散していた様々な情報を一元管理することができ、シングルサインオンを通じて著しい効率化が図られる」という趣旨の説明をされています。

これ自体、かなり難解なのですが、このアイデンティティという言葉にすごく違和感を感じました。ここで言うアイデンティティとは、多くの日本人が想起する「存在意義、精神的な拠り所」ではなく、英語本来の「素性、識別」という意味なんだろうなと、通勤時に車で聴きながら考えていました。

そうしたら、最後に宮武氏が自らアイデンティティに関し、全く同じ説明をされていて、妙な以心伝心、シンパシーを感じた次第です。

アイデンティティとアバターは違う。同一人物に対し、異なる複数のアバターが存在して良いが、アイデンティティは一つである。という話も興味深かったです。

これ、実はリアル世界でも同じで、一人の人間が、会社で見せる顔、家庭で見せる顔、趣味の世界で見せる顔、地域社会で見せる顔って、それぞれ、異なりますよね?アバターもそれと全く同じと考えると違和感ないです。

例えば、リンクトイン用の真面目なアバター、フェイスブック用の気取ったアバター、ツイッター用のやんちゃなアバターという感じでしょうか。

そして、あまりに多重人格になると、「果て、ここではどの人格(アバター)だったっけ?」となるので、Web3上のウォレットで一元管理しておく。それぞれの人格(アバター)での発言履歴、行動履歴も一元管理されるので、混乱することもなくなります。

なにより、シングルサインオン(ひとつのIDであらゆるサービスに接続できる)の実現は待ち遠しい。先日も、知人たちと、複数のID/PWをどうやって管理しているか?と盛り上がったばかりです。

もう一つ、現在のウォレットはレイヤーがひとつなので所有しているNFTを、どう見せるかをアレンジすることができない。部屋であれば、自分が他人にどう見せたいかで、棚に飾るもの、玄関に飾るもの、引き出しにしまっておくもの等、自らアレンジ可能。ウォレットに関しても、近い将来、マルチレイヤーが導入され、優先順位をつけて見せたり、個別に閲覧範囲を設定したり等のアレンジが可能になるというのが宮武氏の見立て。

ということで、ウォレットやアイデンティティに関しては、なんとなく理解したものの、肝心のWeb3が何なのか?は結局、良くわかりません。

そこで、過去にWeb3について解説したシリーズに遡り復習しました。

要するに、Web2.0はレンタルの世界。Netflixが所有する動画を月額課金で視聴する。YouTube動画は、スポンサー(広告主)からの広告収入で成り立っているので無料で見られるが、これもYouTubeが所有するものを見せてもらっているレンタルの世界。

クリエイターサイドから見ると、YouTubeの場合、広告収入の約55%が還元されるが、動画の所有権はYouTube。つまり、規約違反等でアカウント停止となれば、収益も自ら制作して投稿した動画も失うこととなる。

フェイスブックやインスタグラムに至っては、クリエイターには一切還元されず(←今はインスタもクリエイター還元を一部開始)、単に「いいね!」がもらえるだけ。自己の承認欲求を満たすだけで一切、稼ぎにならない。

要するに、インターネット上の大地主であるGAFA(今は、GAMAと言うのかな?)が圧倒的に有利な世界。

それに対し、Web3はブロックチェーン技術により、各参加者が分散所有することになり、大地主は不在となる。イーサリアムの様なサービスは、インターフェイスを提供しているだけで、場(プラットフォーム)自体を所有している訳ではない。

2.5%程度の少額の手数料を徴収し、参加者の活発な活動を促す。実社会で言うとクレジットカードの様なものという説明はわかりやすかったです。

対するiPhone上のアプリは、通称「アップル税」と呼ばれる30%のコミッションが売上から徴収される。「30%抜かれて成立するビジネスってそうそうないよね」という話には、「その通り!」と大きく頷きました。

改めて、「ブロックチェーン技術により、各参加者が分散所有することが可能になった」というのがポイント。月額料金を払ってNetflixからレンタルしていた映画に対して、DVDを購入して所有すると考えるとわかりやすいでしょうか。

そのDVDに相当するのがNFT

これまで、仮想通貨やNFTは「なんだか怪しげな投資物件」という印象が強かったのですが、この説明はしっくり来ました。自分の好きなアーチストのCDや好きな映画のDVDは所有したいですよね?それが数量限定のビンテージものであれば尚更。

宮武氏も「特に音楽業界は、大きな影響を受け、ビジネスモデルが変わっていく」との見解を示されており、私もそう思います。

ここから先は、私個人の見立てとなりますが、NFTという形で音楽を所有することが普及した際、アーチストは一斉にSpotify等のサブスクリプションから引き上げる。音楽は、再び、所有するものになるのではと考えます。

一方で音楽におけるTikTokの役割は一層高まると考えます。TikTokで「視聴」し、気に入ったらNFTを購入する。ご存じの通り、TikTokは曲の一部しか聴けないので、全部を、かつ、好きな時に聴きたければNFTを購入する。という風になっていくのではと思います。

Web3の普及に伴い、アートにしろ、音楽にしろ、あるいはスポーツやコンサートといったものまで個人が「所有」するものとなる。そして、クリエイターが直接、個人と繋がり、NFTを販売することで収益を得る。

今、既に大きな潮流として起き始めているクリエイターエコノミーへのシフトは、Web3の普及と共に加速し、確立ていくものと思われます。

<併せて読む>

クリエイターがファンと直接繋がる世界がすぐそこに。クリエイターエコノミーが生まれた背景及び成功事例について紹介しています。

日本発NFTプロジェクト「新星ギャルバース」。Zombie Zooの生みの親でありNFTアート成功の方程式を熟知した草野絵美さんが仕掛け人。世界中に散らばった8,888人のギャルの素性が徐々に明かされ、最後はアニメとして公開予定。

【追記(3/26)】

大内裕未さんが、「NFTが音楽ビジネスの救世主になる」(←勝手にタイトル変えてすみません)という記事を書かれていて、大変わかりやすいのでご紹介致します。

Spotifyの話は、Off-Topic内で宮武さんもコメントされています。現状、大半のアーティストにメリットがない仕組みなので、サステナブル(持続可能)でないと思います。今は、他に手段がないので楽曲を提供していますが、どう考えてもNFTの方がメリットが大きい

Twitterで告知、TikTokで音源配信、YouTube・インスタ・TikTokライブを通じてファンダムを拡大。アーカイブは残さず、NFTで販売。このモデルが確立すればレーベルも不要になります。「古参証明」というのも、物凄く相性が良いと思いました。


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