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「アドベンチャーバラエティ」なる文言

どうもしばらくです。時間もあまりないのでちょっとだけ書くつもりです。表題の言葉、ご存じの方はいらっしゃいますか? もしくは最近どっかで聞いたなあ…という方。いたら、文〇砲のあの件か~と思ってて下さい。

これ正直、世間でどのくらい話題になったのかイマイチよくわからないんですが。某民放の人気番組で、芸能人が無人島からサバイバル技術を使って脱出して、そのタイムを競うみたいな企画で、やらせがあったんじゃないか?という疑惑が報道されたんですよね。(興味ある方は検索してみてね)

事の真偽については報道とか放送局の発表とかを見ていただくとして。ここで言いたいのはそのことではなくて、むしろ局側がつい先日、謝罪なのかと思いきや、開き直りかのように発表した公式見解の中で使われた例の言葉、「これはアドベンチャーバラエティなので」的な文言に引っ掛かって。

当番組は大自然を舞台に、番組が設定した環境の中で様々なミッションに立ち向かい、時にはスタッフと力を合わせながら、全力で頑張る出演者の勇姿を楽しんでいただくアドベンチャーバラエティです。

番組公式サイトより

な、なるほど…。バラエティなら台本があって演出もあるのが当たり前ですもんね。何も問題はないね!(…ん?)そう納得しかけて、少し検索してみたら。意外なほどユーザー側の「こっちはわかってて面白く見てるんだから別にいいじゃないか」「子どもが好きで喜んで見てる番組をこんなことで潰さないでほしい」みたいな擁護する声が多いのに驚いたんですよね。ああ、そういうもんなのか…という。

これがもし、別のネタだったら自分もそんなに引っ掛からなかったと思うんですよ。サバイバルとか、自然の中で行うアドベンチャーとかの話でなければ。だって、他のシーンだったらそうそう人が死んだりはしないから。
けど、自然はそうじゃないでしょう??
クライミングとかアウトドアの漫画を描いてたことがある人間としてこれだけはスルー出来なかったのだけど。自然が相手だと、人間って遭難とかで割と簡単に死ぬんですよね、残念ながら。これはリアルガチな事実なので。
「頑張ったから」といって、それで命が助かる世界でもないですし。

以前にも、確かあったような気がするんですが。本当はその冒険的な目標を達成するのには今は実力が足りないだろうと皆が思ってたけど「本人が真剣に頑張っているから」「挑戦することで人々に勇気を与えているから」「今さら後には引けないから…」そんなような理由で、世界的に有名な高い山に登って、帰ってこなかった人が、一人やそこらじゃなくいたような気が。

最悪、そうやって遭難したのが登山家だったとしたら、自分の意志で突っ込んだ山で死ぬんだから仕方なかったね、と言えるかもなんですが。タレントの人とか、ましてやテレビ制作のスタッフの誰かが死んだり大怪我したりしたら、どうなっていたことか…と思ってしまうんですよ。
そもそもこの件が明るみに出たこと自体、島でのロケの過酷すぎる制作環境への恨みつらみを吐き出した、無名のスタッフの内部告発メールが発端ですからね。そこには「過労死しかねない」と悲痛な言葉が書いてありました。

本来その場に求められるサバイバルのスキルを持たない人に、あたかもそれを一人で成し得ているかのように見せかけるために、舞台裏で専門家の指示を受けた少ない現場スタッフが連日過重労働を強いられて、上手く演出できたシーンだけを繋ぎ合わせて「こんなに頑張ってますよ!」と感動させる。それを見た視聴者は、普通そうにやっているから、と更にエスカレートした見世物としてのサバイバルイベントを欲しがり、さらに現場の疲弊と危険性ばかりが募って行く…。
こんなこと続けていたら、いつかきっと現実に人が死ぬんじゃないかと。

日本という国は、こんなに自然災害の多い国なのに、いつまでこういうことをやっているんだろう? と、ついまた思ってしまうんですよね。
どうせやるなら、本気で、何のスキルも持たない一般市民が、自然の中でもサバイバルが出来る現実的な啓蒙的な番組を作ってくれたほうが良いんじゃないかと。登山道で道迷いしたらどうすればいいかとか。低体温症を防ぐには?とか、そういう。国土地理院地図の読み方すら学校でもまともに教えていないのに、そんな軽々しくサバイバルとかを見世物にしてる場合じゃないのでは…我が国は? という。

じつはしばらく以前からオリエンテーリングという森の中を走ってタイムを競うスポーツを何とか漫画に描けないかな~と思って、色々と調べたりしているのですが。その競技、なにせ森の中なんで「肝心の競技シーンが観客にほぼ見えない」んですよね。もうどうしたらいいのか…などと苦悩してた時に例の「アドベンチャーバラエティ」のニュースを見たので、余計に脱力したというか(笑)自然の中で全力で頑張る勇姿!いいよね!みたいな。

オリエンテーリングは北欧が本場で、発祥の地のスウェーデンとかでは学校の授業でやるらしいんですよね。ちゃんと地図の読み方を習って、森の中を走ったりするみたいで。夏の合宿イベントみたいなのまであるらしいです。これは、彼の地では国土のほとんどが広大な森林であり、そこに迷い込んだら例え子どもであっても、自力で地形を読んで、自分の足で人里まで戻って来られない限り、遭難=即「死」を意味するから…なんだろうと思います。

今の日本の教育って、こういうことは出来てないですよね。こんなに海に囲まれてるのに、海での離岸流に巻き込まれた時の脱出方法を学校で教えてもらったりはしない。こんなに山だらけの国土なのに、どんな地質が土砂崩れを起こしやすいかとか、どんな気象条件だと表層雪崩が起きやすいかとかも学校で教えたりはしない。というか、出来る人間が教育に関わっていない。

そういう不足を、せめてテレビとかのメディアが埋めてくれるでもなくて、命を守るのに現実的に役立つ番組ではなく、やらせでお茶を濁してしまう。それを多くの視聴者が求めているんだから仕方がないだろう、と言われればまあそうなんでしょうね…。国民のほとんどは自分で苦労をしてサバイバルなんかしたくないわけですし。私だってどちらかというとしたくはないし。

でも、個人レベルでしたいか否かに関わりなく、ひとたび自然災害が起きれば皆が当事者になって、自分や大事な人の命を守ってサバイバルしなければならなくなるわけですから。それはやっぱり、教育とかのシーンで最低限の知識を与えて行く方向にそろそろなって行くべき時期だろうと思いますね。それをただでさえ多忙で過労死しそうな学校の先生に要求するな!というのは当然の声だと思うので、だったら山岳部とかの外部指導者みたいな制度化をそろそろ本気で考えるべきだろうと。いっそ他の部活動も同様にして。

なんていうところまで考えたのですが。それにしても凄い言葉ですよね、「アドベンチャーバラエティ」って…。これで通用するんだったら、あの人も別にあんな風に山で死んだりしなくてよかったんじゃ? という考えがちらと浮かんだり浮かばなかったり。。誰、とはここでは言いませんけど。

それでも、少なくとも「子どもが喜んで観ている番組だから(やらせくらいは許してやれ、潰すな)」という意見にはちょっと賛同しづらいですね…。子どもに見せるものだからこそ、現実にそのような状況に立ち至った時に、その子が何とか生き延びて無事に家族のもとに帰れるような有益な、正しい情報を与える番組であってほしいし、それを作る人たちも過労死寸前みたいな働き方はしないで健康であってほしい。でないと教育によろしくない。

「客がそれを求めているから」という錦の御旗を見せつけられたら、作り手の側は何も逆らえなくなってしまうので。こういう現状を少しずつでも変えて行く方法があるとすれば、受け手の我々自身が、どんな世界に自分や大事な人が生きたい(生きてほしい)と思うのか? そういうことにもうちょっとだけ自覚的であるしかないのじゃないかな~と考えたりしました。
大体こんな感じで結論はありません。お読み頂き有り難うございました。

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