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#元町の上で Interviews②「喫茶ポエム」

『愛がなんだ』『あの頃。』などの今泉力哉監督が東京・下北沢を舞台にひとりの青年と4人の女性の出会いを描いた群像劇『街の上で』。新型コロナウイルス拡大による上映延期を経て、ついに当館でも5/1(土)より公開いたします。公開を記念し、映画と合わせて映画館がある「街」を楽しんでもらうために近隣の書店や喫茶店の協力のもと、noteにてオンラインマガジンを刊行します。タイトルは「#元町の上で」。お店の人が観た本作の魅力、オススメの書籍やドリンクの紹介、さらに映画館スタッフによるお店へのインタビューなどで〈元町〉という“街”の魅力を伝えたいと思っています。映画も街もお楽しみください。


店舗の皆様から見た映画『街の上で』をご紹介してきましたが、今回は映画館がそのお店の魅力を発信します。


喫茶ポエム

「創業1969年.神戸元町商店街路地裏にある喫茶店.先代が畳もうとしていた店を引き継がせて頂きました.老若男女が集い.憩いの場となる神戸の喫茶店文化を残していきたいと思っております」。

(喫茶ポエム公式サイトより)

喫茶文化を残していく。この言葉の魅力に吸い寄せられた私。
現在、喫茶ポエムを含めて4店舗を経営する代表の山﨑俊一さんにお話を聞いた。

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(喫茶ポエム代表の山﨑俊一さん)


現在に至るまでどんなお仕事をされていたのですか。

―大学の時からお話しすると、1回生の時に大学を辞めています。その後に一旦、自分の人生を「0」に戻すために「バックパッカー」をしていました。

どんな国を回ったんですか。

―まずは19歳でオランダに行きました。理由は特になかったですね。日本と違う、それだけで良かった。その後はヨーロッパを回りました。野宿、ホームレスも経験しました。その後も沖縄に1年行ったりと様々です。職も転々としていましたね。

意外です。すぐに珈琲の訓練のために喫茶店で修行をされたのかと思っていました。


―喫茶店はプライベートでよく利用してましたが、まだですね。
喫茶店という場所が好きだったんです。でも今の職業に通じると言えば、23歳ごろに勤務した書店「ヴィレッジヴァンガード」の経験が大きかったかもしれません。

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(取材中にもお客様の珈琲の注文が)

喫茶店と書店、似てるような似てないような気がしますが、どんな経験をされたんですか。

―働きはじめて、2年半くらいで店長になれたんです。

店長!。店長って経験を積んで初めてなれると思っていたのですが、違うんですか。

―最初はマンガ担当になりました。僕自身もマンガが大好きで働く時は「好きなものを思いっきり売る」ことを徹底的に行いました。最初にヒットしたのは東村アキコさんの『ママはテンパリリスト』だったと思います。おバカな画像を掲載した「バカ本」とかも、全国の雑誌売上一位になったと思います。ゴミ箱に破って捨てたりして、お客さんの興味を引く、商品の魅せ方を研究していましたね。
同時に店長だったので、人の動かし方や経営についても勉強していました。この時期の経験が今に活きています。

『ママはテンパリリスト』

(集英社コミック公式S-MANGAより)

ヴィレッジバンガードを退職後、飲食店などを転々とした山崎さん。29歳の時にポエムに出会ったという。

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(赤と白のカラーが印象的な看板)

―喫茶店を始めたいと思って最初はおじいちゃんの一軒家を改装して作ろうと思ってたんです。そんな時に今のポエムの場所が貸店舗になっているのを見つけました。店内も含めて自分のイメージとピッタリと重なり、そこからの開店は早かった。準備期間とかありますが、仕事を辞めた三日後にはオープンしていましたね。

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(ぎっしりと並べられた漫画。これらすべて山崎さんの私物だそうだ)

店内には山崎さんの私物であるマンガがぎっしりと並べられている。しかしまだまだ新刊は増えていく。置けないマンガはおじいちゃんの一軒家が倉庫代わりになっているんだとか。


そんな山崎さんに、喫茶店にしかいない魅力を聞いた。

―なんで壊すんやろうなって思うんですよ。

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(店内の様子)

山崎さんは冒頭の「純喫茶宣言」をはじめ、閉店した純喫茶の店舗や家具を買い取るなどして純喫茶文化を守り続けている。

―60、70年代の純喫茶て本当にオシャレなんですよ。今の喫茶店とかカフェにはないこだわりがいっぱいある。それを壊して新しくするより、その場所や店内の雰囲気を残しつつ10年後、20年後も残していくのが面白い。おかげさまでお客様も喜んでくれてます。今の目標は純喫茶という場所を守りつつ、ちょっとずつでも良いので、店と自分が成長することですね。

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(珈琲を準備する山崎さん)

純喫茶の魅力をお話しいただいた山崎さん。今回の企画にも喜んで参加していただいた。話を聞くと思い出の映画もあるそう。

―元映(元町映画館)さんは街の中に溶け込んでいる。僕も映画が好きでお世話になっているので。この企画も参加できて良かったです。僕も映画が好きなので。

お好きな映画はなんでしょうか。

―思い出に残っている映画は『鬼畜大宴会』(監督:熊切和嘉/1997年)ですね。

(『鬼畜大宴会』DVDトレーラー 株式会社オデッサ・エンタテイメントYouTubeチャンネルより)

あれぞ日本人の美学みたいなのが詰まっていますよね。あとは森達也さんのドキュメンタリー映画とか好きです。

映画『街の上で』の話では映画を見終わったあとに、主人公の荒川青に「青、お前モテるやろ」と思ったそう。さらに「終盤のドタバタに引きこまれました」と感想をいただきました。

そして読書のお供におすすめしたい一杯には「ミックスジュース」を選択。

ミックスジュースも他の料理も含めてすべて山崎さんがレシピを考案するそうだ。
果物や牛乳に加えてマンゴージュースを混ぜるのが美味しくなる秘訣。
そしてこのミックスジュースにはほとんど氷がほとんど入っておらず、ジュースのもとを凍らせて保存している。注文後でも氷要らず。冷たくて果実の甘みと酸味が組み合わさったミックスジュースを飲みながら映画のことを考えるのも良いかも。


青もここに来れば、読書もはかどるかも。煮詰まったら、たまにはマンガを読んで。


劇場から徒歩1分。喫茶ポエムの情報はこちら。

喫茶ポエム


【住所】兵庫県神戸市中央区元町通3丁目11−15

【電話番号】078-958-5892

【営業時間】火曜日~金曜日10時~20時、土曜日・日曜日8時~20時

【定休日】毎週月曜日

映画『街の上で』5/1(土)公開

(c)「街の上で」フィルムパートナーズ

文責:映画館スタッフ 宮本

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