韻に敢えて注目した上でもOfficial髭男dismのPretenderが名曲過ぎてやっぱり書きたくなった。
Official髭男dism、もうずーっと売れてますよね。スパイファミリーの主題歌ミックスナッツも相変わらずアニメの世界観を踏襲した上で、かつ結構攻めた構成の歌でとんでもないなと思っております。
それで、とてつもなく今更なのはわかっているのですけどね、過去何度かOfficial髭男dismの歌詞でとりわけ韻について書いてきた僕も改めてPritender、書きたいなって思ったんですよ。
今まで書いてなかったのは、元々いろいろな方が解説してるので、僕があえて触れる必要もないと思ってたんです。
ただ、先日の「関ジャム」若手アーティストが選ぶ“最強平成ソングベスト30曲”でも10位にランクインしてましたし、結局いい曲って擦っても擦り尽くせないなって。
そんなわけで、音楽的な部分はさておき、韻に注目して書いていきます。
出だしで韻を踏んできましたね。
「ストーリー」、「よそうどおり」で「uooi」音です。個人的に単語できっちり韻を踏ますより、単語の一部分で踏ませるのはテクニカルな感じがして結構好きです。
同じメロディラインの所で韻も踏んでくるところが実に髭男。
「アイムソーリー」、「はいつも通り」。先から続く「uooi」音と見せかけて実は「aiuooi」とさらに韻を伸ばしてきてます。
アイムソーリーを「は」を絡ませて完踏みするのはラップの観点からも中々テクニカルです。
もっと違うと同じ言葉を強調しつつ「設定で」「関係で」と「eie」音で脚韻。「世界線」の「en」を間に入れて「性格で」「価値観で」を「aue」と「ane」で踏ますテクニック。「eie」で踏ませてからその後の韻に「n音」を入れ込んだからこそ、あとの「aue」と「ane」がより気持ちよく聞こえるわけです。
サビに持っていく盛り上げのタメ所なだけにここのリズミカルな歌詞は非常に効いてますね。
はい、来ましたね。もうここまで切なさを爆発させたタメ爆エモーショナルなサビで、こんなに韻を踏んで、かつくどい感じがしないサビは天才と言えましょう。
皆さんお分かりの象徴的な「グッバイ」から基本的に「ai」音を脚韻として落としていきます。
その分、グッバイ直後の「君の運命の人」が言葉としてスムーズだし綺麗すぎる。これはすごい。
母音で表すと「iiouneioio」と「io」で踏みまくり。
そこから「僕じゃない」「否めない 」と分かりやすく否定語で踏み「離れ難い」とテクニカルに踏ませる。しかもじゃないの「aai」音という丁寧ぶり。
「その髪に触れただけで」もさらっと髪の「ai」で踏み、本当に油断も隙もないです。
そしてサビの後半に向けて怒涛の「ia」音踏み。
「痛いや いやでも 甘いな いやいや」
これの何がすごいって「痛いやーいやーでも甘ーいなーいやーいやー」とフローすることで「ia」音で踏みつつ「ai」音踏みにもつなげているんですよね。
だからこそ再度出てくる食い気味の「グッバイ」のグッバイ感が引き立つ。
引きずるものはありつつも、マジで「グッバイ」なんだなって思わせてくるんですよね。
そこから「君は何」「分からない」で「aai」と丁寧に脚韻にする。何なら「分からない」に至っては「aaaai」とこの後の頭韻が「a」音になる布石まで打ってますからね。
そして、サビの最後
「分かりたくもないのさ たったひとつ確かなことがあるとするのならば」
今までさんざん脚韻を「ai」で踏ませておいて、今度はさらっと「a」音で始まり「a」音で終わらす。
勿論中に、ナチュラルすぎて気づかないレベルで「分かりたくもない」「たったひとつ確かなこと」と散々「ai」を入れたうえで。
そして
「君は綺麗だ」
ですよ!!
全般「i」音で強調して、最後はあまり韻を踏まず「a」音で落とす。しいて言えば「綺麗だ」の「ia」音が痛いやの辺りを踏まえているとも思えますが。
さて、二番に移ります。
「偉そうに」「論理」一番と同様「ooi」で脚韻を入れてくるところ、丁寧ですよねー。結構J-POPはここらへん妥協したりするんですよね。
「何ひとつとしてピンとこなくて」が「飛行機の窓から見下ろした知らない街の夜景みたいだと」ある通りピントが合わないというダブルミーニングですよね。
髭男は歌詞にダブルミーニングも良く入れてくるのでここはにんまりポイント。
また、髭男のタイアップはよく1番で世界観をぶち上げて2番で結構ネガティブというか「他人の善意による余計なお節介さ」が表現されたりするのですが、これもその系統。
「見下ろした」「夜景みたいだ」と最後まで脚韻して、ダブルミーニングまで放り込んでこのリリックですからもはや天才というか変態的。
一番同様の歌詞から始まり、「e」音や「a」音で落としつつ、ここはあまり韻を意識しておりません。
ここからのサビに向けて、叫びのような気持ちを表現している故でしょう。
グッバイから同じ言葉を使わず、「ai」音で韻を踏んでます。個人的にはエンドラインが特に秀逸。
そして同様のサビ。前の歌詞も含めてこれだけ「ai」で踏んでるのに一番サビ前の「愛を伝えられたらいいな」しか、本命ともいえる「愛」が出てこないのも凄い。
それを考えるとサビ前の「愛を伝えられたらいいな」は韻の意味では布石だったのでしょう。
そして最後の余韻を残すような「とても綺麗だ」。
何がすごいって「それもこれも」と「とても」が韻踏んでるんですよ。さりげなさ過ぎて気づかないレベル。「君は綺麗だ」でもいいんですけどね、あえてそうしない。
じゃあどの言葉を入れ込むのかで「とても」にして、歌詞の頭を「それもこれも」とする。ワードセンスと歌詞を音はめ込むテクニックがえげつなさ過ぎます。
韻で見たとしてもこれは流行るのも頷ける結果となりました。
以上を踏まえて皆さんもまたPretender,聴いてみてください。
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