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今こそSFを読んで不安になるべき

SF読んだことありますか?

 近年、SFというジャンルが勢いづいてきたように感じます。近年、というほど年月は生きてないですが、少なくとも自分が小学生のハナタレだったときよりも、SFっぽいアニメや漫画は増えた気がするし、その手の話題も聞くようになった。

 といっても超情報化社会の現代。知らず知らずのうちに情報を選び取っている可能性もあるのは否定できない。ので、なんで最近SFが活発と思うかの根拠っぽい作品を下でちょっとだけ紹介します。

2021年星雲賞受賞 ウルトラマンZ

 SFといってもわりと広義で、星雲賞では数年前にガールズアンドパンツァー劇場版もノミネートされてるぐらいですが、もっと狭義というか、古典的なSFの代表格と言えば、ウルトラマン。

 円谷プロが色々あったせいで、ウルトラマン含む円谷プロ作品って割と近年まで死に体だったんですよね。それが体制改革後はSSSS.GRIDMANとか、ウルトラマンZとか、面白い作品がいっぱい出てきました。ウルトラマンZはウルトラマン未見の方にもおすすめです。騙されたと思って1話見てください。

2021年秋アニメ、まさかの毎日ロボットアニメ

Twitterでもちょっと話題になってましたが、ロボットアニメが何故か毎日やってます。エロゲのくせに上質な絶望感ことマブラヴオルタネィティヴ、マーケティングに力を入れすぎて逆に身構える境界戦機、戦記物としての色合いが強いけどしっかりSFなエイティシックスなど、出身畑の違う作品群がこうも一堂に会することはなかなかないでしょう。

他にも、2021年3月には何年待ったか分からないシン・エヴァンゲリオン劇場版もやったし、SFってジャンルが今結構盛り上がってる気がします。

本題:古典的で怖いSF読んでみませんか

 書いてる人の頭がSF脳になってきたところで、このご時世、古典的なSFを読んでみませんか?というご提案です。

 コロナ、結局今後どう転ぶか分かりませんよね。とりあえず終息させようと人類全体が取り組んでまいりましたが、終息したあとどうするのか。執筆時点での衆議院選挙でも少なからず争点になっています。

 日中関係、最近怖いですよね。書いてる人はちょっとだけ軍事趣味があるので、中露連合艦隊の津軽海峡通過からの情勢が正直相当怖いです。

 この不安定なご時世だからこそ、古典的なSFを読むべき!というのが本記事の本題になります。

 古典的、というのも、自分の感覚的な分類なので明確な基準があるわけではありません。傾向としては戦後~00年代までに小説媒体として書かれたものに多い印象でしょうか。

 先述の通り、SFって懐が深いジャンルですので、極端な話「自衛隊の戦車をロボットに変えてソ連と戦わせるトンデモ架空戦記」でもSFとしてまかり通ると思います。そんな懐が深すぎるSF作品の中において、書いてる人の定義する「古典的で怖いSF」とは何か。

・第一に、得体の知れない恐怖を描く作品。

 例えば人類が滅亡する系にしても、滅亡する理由や、人類を追い込む存在が根本的に理解不能であるもの。意思の疎通以前の代物にどう立ち向かうかというのは、古い名作における共通項な気もします。自然災害だとか、殺人ウイルス、宇宙人、上位存在などが丁寧に描かれているほど気味の悪い恐怖が増してイイ。書いてて思い出したけど、コズミックホラーというジャンルを築いたクトゥルフの呼び声もSFだよなあ。

・第二に、なんとなく壮大な作品。

 大風呂敷を広げがちともいう。例えば地球人類の起源だとか、宇宙のいきつく先だとか。最初は日常のちょっとした怪異から始まったのに、最終的にとんでもない大風呂敷にたどり着く作品ってままあります。なんか超常現象起きたら上位存在が登場する合図。

 でもそういった超壮大なテーマを、大真面目に取り扱ってあまつさえ面白い物語なんてものがあるとしたら、それは大抵恐怖を内包しています。この感覚をなんと表現したらいいのか、言葉足らずで表現には至りませんでしたが、漠然とした、不安定な世界に対する不安というか、そういうのが想起される。

ぜひ読んで不安な気分になってほしいおすすめの傑作SF

以上を踏まえたうえで、ぜひ読んでいただきたいSF小説がこちら。

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 三体です。書店でも結構平積みされてたし、多少話題になったのでご存知の方も多いのではないでしょうか。これが結構異例な作品なんです。

 まず第一に中国の作品であること。中国はバブルと同時に、結構SF系ジャンルに力を入れ始めています。力を入れ始めるというか、三体の作者である劉慈欣が天才で一人でけん引している状態。

 日本語版の最終第三部の日本語訳版が今年刊行されましたが、本国版は2009年とかのわりと古い作品。名訳と呼ばれる英語版も2012年とかで、正直同作者の作品でもわりと古い方に入る。最近だと中国初のSF映画である「流浪地球」とかも劉慈欣が原作者。すげぇ。

 この作品の何がおすすめかというと、まず書いてる人が大好きな「古典的な怖いSF」のテイストを味わえる現代の作品であるということ。欲を言えば小松左京作品の「復活の日」とか読んで欲しいけど、なにぶん描写も文体も古くて、受け付けない人は受け付けなさそう。しかし三体は「古典的怖いSF」では最新の部類に入るし、なにせ世界的大ヒットの名作だから自信を持ってお勧めできる。...難点は分厚いハードカバーで五冊もあること。総額一万円手前。

 幸いにしろ(?)第一部である「三体」は一巻のみだし、十分面白いしここで打ち切っても不完全燃焼にはならない超素晴らしい構成なので、一巻だけでも読むのがおすすめ。

 というか試し読めるから読め。間違っても第二部の黒暗森林と死神永生は開くなよ。

 二部と三部のネタバレに極力配慮してあらすじを解説するならば、人類と地球外存在のファーストコンタクトから、数世紀に渡る人類の命運を追いかけつつ、宇宙の形を解き明かすお話。ね、得体の知れない恐怖とやたら壮大な雰囲気がセットでしょ?

 書いてる人は、この作品を読む前後で宇宙観が大きく変わりました。学問を修める過程で、ほんの末端も末端ですが、宇宙に関わる仕事をさせてもらったこともあったので、この地球をつつむ神秘の暗黒空間に、恐怖と魅力を改めて感じたのは言うまでもありません。


 名作SFって、読むなり見るなりしていくうちに、その作品が内包する世界や哲学、テーマに飲み込まれて、読み終わったあともふわふわするんですよね。読む前と読んだあとでは、世界の構造が大きく変わったような気すらする。

 SFに限らず、人の感性に大きな影響を与える作品はたくさんあって、騙されたと思って読んでみれば、今後の生涯で目に映る光景が変わったりするんでしょう。自論ですが、SFというジャンルは「科学」という現代人にとって、最も日常に触れる機会の多い人類成果を通じ、世界の理や人間の可能性に切り込んでいける存在なのではないでしょうか。

 そういった意味では、聖書や日本書紀が、書かれた当時の大衆におけるSFであったと言えなくもないのでしょうか。そっちの道の人に言ったら怒られそう。

 なにはともあれ、まだまだ先行き不透明、将来に不安の残るこの時代。ちょっと怖い古いSFを読んで、私たちに待ち受けるかもしれない試練、浪漫に思いを馳せてみませんか?

 布団の中で、人類の明日を考えて眠るのもオツなものです。

#読書の秋2021

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