見出し画像

「お客様は神様です」

リタイア生活を株式投資で楽しむモト3の妄想エッセイ

今はそれほどでもないが、一昔前までは「お客様は神様です」というフレーズが氾濫し、日本のサービスの良さや日本製品の良さの根源であるかのように言われていたような気がする。

ホテルやレストラン、百貨店はもちろんスーパーやコンビニ、駅の窓口まで顧客対応の良さを競っていた。製造業では価格はもちろん納期、品質についての顧客の要求は、「お客様は神様です」の考えに基づいて最大限に対応することが企業にとって繁栄の源泉だと考えられていた。

私が勤めていた会社でも「顧客第一」と謳っていたし、HPなど見れば多くの会社が顧客第一主義とか顧客満足度重視とかの考え方をアピールしている。

確かに顧客のニーズを把握して顧客の満足する製品やサービスを提供することは商売の根本で大切なことだが、多くの日本の社会では、「お客様は神様だから偉い」に変形して浸透している。

客は、自分はお客様だからと偉そうな態度をとる。B to Bはもちろんだけど、一般人もお店では横柄かつ無愛想で、買い物の最後に「ありがとう」と言う人も少ない。

私が昔イギリスで暮らし始めて驚いたことは、コンビニやスーパーの店員が横柄で無愛想な人が多かったことだ。そして、それでも客は買い物の最後に無愛想な店員に向かって、ちょっと微笑んで”Thanks”とか”Thank you”を忘れない。身なりの良い人ほど丁寧というか慇懃なほどに  ”Thank you very much." と言うのが私の耳には残っている。

イギリスでは客と店員は対等で、「お客様は神様です」という考え方は微塵もない。その時に私は、だからイギリスの産業は衰退していったのだと思ったほどだ。

今日のニュースを見ていると、アメリカのAI用半導体を製造するエヌヴィディアは市場を独占する勢いで利益率はなんと78%だそうだ。ざっと原価の4倍の値段で売っている。だけど誰もこの会社はもうけ過ぎだとは言わない。

利益率が20%を超えれば超優良企業と言われるけれど、日本の上場企業にはこのような会社は少ない。多くの上場企業は10%以下だ。

昔、日本の義務教育では原価+利益=売価と教わった。就職してから会社では、売価ー原価=利益と教わった。つまり、原価に利益を足して売価だと言っても高ければ客に買ってもらえない。売価は市場が決めるのだから、会社は原価を低くすることに努力しなけらばならないと。

そういう思想の下、工場では利益を上げるために、無駄を省いて原価を下げることが最大かつ永遠のテーマだった。新製品や新設備の導入が頻繁にある活気のある工場では次から次へと原価削減も可能だが、古い設備で昔と同じ製品を製造する工場ではネタは枯渇し、原価削減は閉塞感のあるテーマになる。

エヌヴィディアは違う。他に真似のできない高い付加価値の製品だから値段を自分で決められる。ここではお客様は神様ではないのである。

改めて、強い企業、成長する企業は他社が真似できない高い付加価値の製品を開発することによって生まれるということを思い知らされる。

無駄を省き、コストを削減することは大切だが、そればかりやっていてはエヌビディアになれない。お客様の言葉には大切なヒントがあるが、神様ですと崇拝しているだけではエヌビディアになれない。

どんな会社が次のエヌビディアになれるだろう? 日本株に投資する私はそういう目で日本の会社の中で次のエヌビディアを探している。とりあえず、会社のHPを見て、顧客第一主義などと言う言葉を勇気をもって削除している会社の中から次の投資先を探そうと思う。
<了>


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?