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創作大賞感想 母すのうは、いったい何刀流なのだろうか。

こちらのノンフィクション作品を何度も読んでいる。読み直してしまう。どうしてこんなに読むのか分からない。日常が家族が「野球」というスポーツを通して変化していく過程をただ見ているのだが面白い。

文脈は記録を主に記しているので感情は極力排除されている。だから、たんたんと記録を読んでいく作りなのだが、文章の端々に「母すのう」の愛情が溢れているのを感じてしまう。努めて客観的に書いているのに子供、そして「母すのう」の成長が感じられるから面白い。日記の余白に思わず色々と考えてしまう。そもそも野球が根付いていない本田家に野球の風を吹かせたのが本田家の長男だ。

長男と同じクラスに少年野球チームに所属している子がいるらしい。その子は大谷翔平が大好きで、各小学校に1つずつ配られたグローブをそれはそれは宝物みたいに見ていたと。

アラフォー主婦が1か月野球をやり続けて得たもの【REAL ROOKIES⚾️】より

この本文を読む限り、長男が大谷翔平のグローブをそれはそれは宝物みたいに見ていたワケではないのだ。その友人の様子を見て「野球やりたい‼」となるワケだ。こんなことをもし自分が創作するのならまず書けない。カッコ良い選手を見てやりたくなったとか、そのグローブを自分が見て感動してやりたくなったとかではないのだ。「ただ友人を見ていただけ」という動機が弱すぎなのに、この日から一ヶ月一度もぶれずに野球をやり続けるのだ。長男の意志が物凄く強いのだ。

これは、物凄く可愛い。動機なんて何でも良いんだと教えてもらった。もしかしたら母すのうに伝えるきっかけとして話題に出しただけかもしれない。「やりたい」をしっかり伝えることが出来たのだからその方法なんてどうでも良くて奥にある本物の気持ちを伝えることが大切だと気付かせてくれた。子供の純粋な部分を感じて忘れていた感覚を思い出した。

だから私もキレイな女性のことを好きでしょうがなく見惚れている友人を横目で見ながら、その女性のことを私も好きになっても良いんだと思った。

この作品は、一日ごとに成長を追えるのだが、クレラップミニバットから始まり、サランラップバット、そしてカラーバットへと変化し、ホームベースを手作りしたり、雨の日は野球の本を借りてきたり、土曜日はパパと朝練をし始めたり、ずっと見ていた近所の子達が仲間として加わり、練習が試合になったりと、とにかく野球を通して日常が変化し続けるのだ。

実際に、子供の熱中に親はどこまで寄り添えるものだろうか。この作品の著者である本田すのう先生は、本当にとことん付き合っている。私はこの記事を何度も読むうちに、本田さんマジで何してんだ→すのうママってこういう人だったのね→ちょっとここまで来ると真似出来ないな→もう、こんなの先生じゃん→本田すのう先生じゃん。と心が変化した。今後私は、本田すのう先生と呼ぶ以外に考えられない。

だから、五回目を読むときなど「先生の教則本を今日もありがたく読ませていただきます」くらいの気持ちになっていた。

嘘ではない。この記録は本当にスゴいと思う。子供の熱中のエネルギーや、一途な姿がしっかり記録されているからだ。「やりたい」と言った子供がどうやってやり続けてエネルギーを傾けていったのか記してあるからだ。少しの機微でも逃さずに記してある。こんな成長日記を大きくなって自分の子供が読めることを考えるととても素敵なことだと思う。

だから、御礼と言ってはなんなのだが、私からも、ささやかながら本田すのう先生の変化を記録させてもらったのでプレゼントしたい。これを読み、私の情熱を感じてもらい、そして心のそばで、皆さんにも本田すのう先生を感じて欲しい。

本田すのう先生の野球遍歴

9日目にピッチャーをやりはじめる。
15日目には初めてのツーベースヒットに快感を覚える。
16日目には審判までこなしはじめる。
19日目にはキャッチャーになり、ストライク判定を抗議され、審判としての心構えも知る。
20日目には、めっちゃ野球しているママと呼ばれはじめ伝説を作りはじめる。
22日目には内野手をこなせるようになる。
23日目には外野手をこなせるようになる。
26日目には監督の心持ちになり、なぜか選手達を育てることを考え始めてしまう。そして、この野球熱のブームがブームで終わらないことを知る。
32日目には隣の学校の子供達をも巻き込み、ノックやフライの練習までするようになる。

本田すのう先生。あなた素晴らしいです。体験型ママの急先鋒です。私は、あなたのような先生の作品に出会えて幸せです。今後どのようなご活躍をご本人が望まれているのか全く知りませんが、本田すのう先生の体験記やレポート記事などはとても面白い気がします。

本人が望んでいるのかは全く知りませんが、この記事を読み、本田すのう先生の情熱を知るとそう言いたくなるはずです。どうか、そういうお仕事を本田すのう先生にチャンスとして与えていただけないだろうか。そして、その時はぜひ私も同席し、荷物持ち兼、ヨイショ係として大声で声援を送ります。

最初は、三人だけで野球をしていたのに伝説のママがいると噂になって14人にまで増えるんです。野球熱は冷めた。他の球技やスポーツに持っていかれたなど言われたりしますが、この記事を読むと「野球」というスポーツはコミュニケーションのスポーツというのが分かります。そして、子供達がしっかりコミュニケーションを取って成長していることが分かります。

それが今後何になるのかは分かりません。私から言えることはただ一つです。

たびたび心の中に渦巻き、いつ言おうか迷いました。私から最大限の賛辞を込めまして、このノンフィクション作品はいったい

なんのはなしですか

と贈らせていただきます。最高に楽しかったです。



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