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成長する人としない人を分ける思考習慣「グロースマインドセット」

こんにちは。
モチタン運営チームで日々人々の学習やモチベーションの研究をしているボウです。

みなさんの周りでも同じ勉強をしてもぐんぐん成長する人としない人はいないでしょうか?しかも成長する人に限って、人柄もポジティブで、友達との関係も良好なことが多いかと思います。

今回は、そんな成長する人とそうでない人を分ける思考習慣「グロースマインドセット」について、基本的な概念から、最近の研究成果まで紹介したいと思います。

あまり日本の教育現場では知られていない概念だと思いますが、特に日本の中高生には知ってほしいと強く思います。

グロースマインドセット(Growth Mindset)とは

グロースマインドセットは、米スタンフォード大学心理学部のCarol Dweck氏が提唱した概念で「人の能力は変化するものだ」という信念のことです。

ここで以下の表を少し時間をとって見てみてください。みなさんはどちらの考えがしっくりくるでしょうか?

Dweck氏は、グロースマインドセットは人生のさまざまな場面で人の成長やモチベーションに関係している著書で主張しています。

例えば、中学・高校受験での不合格通知。これは辛い経験で、特にフィックスドマインドセットの人にとっては「OO学校に落ちた人」という失敗者として生きていかなければなりません。彼らにとっては頭の良さは生まれつきなので、不合格は自分が無能である動かぬ証拠です。

一方で、グロースマインドセットの人は自分に失敗者の烙印を押しません。自分の能力は今足りないだけで、今後の努力次第で変わりうる。自分の立ち位置や苦手な分野がはっきりしたから、今後はこの分野を勉強しよう、と考えます。

どちらの子供がその後成長していくかは明白ですね。フィックスドマインドセットは成長に不向きなのです。

Dweckの研究チームらが2007年に行った研究でも、グロースマインドセットを持つ中学1年生は、その後の2年間で数学の成績が向上していったのに対し、フィックスドマインドセットを持つ中学1年生は数学の成績が漸減したことが報告されました。

グロースマインドセットの効果に関する最新動向

Dweckらの研究で注目を浴びたグロースマインドセットは、その後多くの教育現場で取り入れられ、グロースマインドセットと学業成績の関係について盛んに研究が行われました。

しかし、実はこれらの研究からは、グロースマインドセットと学業成績の関係が実はそこまで大きくないことが示されていきます。

僕も読んでびっくりしました。

2018年の論文では、過去に行われた129の研究 (n=365,915) をまとめて分析し直したところ、たしかにグロースマインドセットと学業成績は正の相関があったようです。しかし、その相関はあまり大きくない(r=0.1)ことが判明しました。同時期に行われたいくつかの研究も、似たような結論を主張しています。

これは衝撃的な結果で、Dweckらが主張してきたグロースマインドセットの重要性が真っ向から批判されています。

それではもうグロースマインドセットに注目する意味はないのでしょうか?科学に否定された過去の遺物なのでしょうか?

たしかにグロースマインドセットは平均的には学業成績との関係は弱いことが示されましたが、同時に生徒の特徴によってもグロースマインドセットの効果の強さは大きく変わることもわかってきています。

具体的には、大学生や大人よりも、小中高生の方が、グロースマインドセットが強く学業成績と相関していました。また、貧しい家庭の子供の方がグロースマインドセットを持つことで学業成績が上がりやすいことも報告されました。特定の子どもにしぼると、グロースマインドセットはやはり重要であるのかもしれません。

さらに、そもそも学業成績を上げることが教育の1番の目的なのかという観点もあります。

2022年の論文では、学業成績以外にも、メンタルヘルス社会的スキルにグロースマインドセットは関係していることが強調されます。グロースマインドセットを上げる介入を受けた人は、メンタルヘルスや社会的スキルが向上し、その効果は学業成績に与える効果の約2.5倍にのぼると報告されています。

グロースマインドセットは、単に成績だけでなく、その後の人生での幸福や良好な人間関係につながる可能性があり、今後はこのような観点での研究が増えていくでしょう。

終わりに

自分がはじめてグロースマインドセットの考え方に触れたのはアメリカ留学中にスタンフォード大学の研究者と話した時で、すぐにDweck氏の本をKindleで買って読んで感動したのを覚えています。

自分も成長の過程でいつの間にか「基本的な頭の良さはあまり変化しないもの」という考え方が身についていて、他人の学歴や成績でその人を評価してしまう傾向があるのだと反省しました。

日本の教育を受けた人は誰しも少しはフィックスドマインドセットが染み付いてしまっているのではないでしょうか。

今回の文献調査でグロースマインドセットは学業成績との関係はあまり大きくないことは驚きでしたが、それでもなおメンタルヘルスの向上や周りと良い人間関係を築く上ではより大きな効果があり、重要な考え方だと思います。

この考え方が日本の学校教育の中でも教えられると良いなと思います!


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