さや香という漫才師


私はさや香という漫才師が大好きである。

かっこいいお二人を1年間追っかけてきた記録を年の瀬に残したいと考え、初めてnoteに手を出してみる。

個人的、かつ主観的な感想が含まれますがご了承ください。



まず、私がさや香を追いかけるようになったきっかけは『M-1グランプリ2022』である。

それまでは、「せやねん!で身体を張っている人たち」で若手のイメージがあったため「決勝に進出してるんや!?」と驚きながら見始めたのを覚えている。

"34歳で免許返納"というありえなくはないものの、ずっと変なことを言っている石井さん。
そして冷静にツッコんでいたはずの新山さんも途中から高齢のオトンや佐賀をイジりはじめる。

両者とも変人であるのにも関わらず、両者とも自身のことをまともだと思っているのが面白い。


4分間に込められた数多くのボケとツッコミ、完璧な間と声量、テンション。
見ていて気持ちいいほどの漫才だった。

今考えてもあのネタは"芸術作品"であると思う。

2本目の男女の友情ネタも「違うネタにしておけば優勝できたのに」という意見も見られるものの、数多くのパワーフレーズと終盤で新山さんが自分が変なことを言っていたことを自覚するという、こちらも面白いネタである。

放送が終わる頃には、なんとなく名前を知っていただけの漫才師のことが大好きになっていた。

そこから出演作品をチェックしてみたり、オンライン配信を購入してみたりと少しずつさや香の沼にハマっていった。

そんなことをしていると劇場に行ってみたいという気持ちがどんどん膨れ上がってくる。

初めての場所に踏み入れるという一抹の不安より
さや香を生で見たい気持ちの方が大きかった。

緊張しながらも一人でNGK(なんばグランド花月)に行ったのが2月6日である。
今でも"D列19番"という席番を覚えているぐらい印象的な日になっている。

ネタは「免許返納」

テレビで何十回も見たネタであるのにも関わらず舞台で見る免許返納は格別に面白かった。

何万人の視聴者が見ている舞台でも素敵であるのは変わらないが、やはり芸人の本領が一番発揮されるのは目の前のお客さんを笑かす瞬間だと思う。


この日から劇場に通うことが習慣になった。兵庫県在住のため、難波の劇場まで往復4時間掛かる。交通費も3500円ほど掛かる。

しかし、さや香を観るためであれば京都祇園であっても惜しむことなく出掛けた。

1時間のライブだけのために4時間掛けて劇場へ行くことも珍しくなかった。

それはやはり生で見るさや香の漫才が格別だからである。
2023年はオンライン配信を含めると丁度100公演の舞台を観劇した。



前置きが長くなったが、そんな私が考えるさや香の魅力は"全力"という言葉が似合う点である。

漫才はもちろん、ロケも平場もダンスも全力。
だからこそ、時に二人はぶつかり合うのだ。

先日行われた『M-1グランプリ2023』での2本目は賛否両論が巻き起こった。

しかし、生で見せ算を見たことがあるが、その時は新山さんの変な持論にどんどん惹き込まれていって途中から頷きながら笑う人も多数いた。

これは新山さんがありもしないことを実在しているように熱量を持って本気で話せる能力が長けているからである。

また、何度もネタを聞いているはずの石井さんが横で初見かと思うような反応をすることで、話に付いて行けなくなった人へのフォローも欠かさない。

「不仲である」という話を聞いたことのある人であれば、途中の二人での掛け合いの魅力が惹き立っただろう。

と一ファンの私は思う。

それでも面白くないと思う気持ちはもちろん理解できる。趣味嗜好は人それぞれである。

ただし彼らはM-1での勝負を捨てたわけではない。それはわかってほしい。

2月〜8月は150人ほどしか入らない劇場で『単独ライブへの道』という単独ライブを行い、新作のネタを6本披露する。
残りの時間は観客から募集したテーマを厳選し、来月の単独ライブまでに制作する設定を決める。

8月はよしもと漫才劇場でも『普通の単独ライブ』と称したライブを実現させ、1ヶ月で2回の単独ライブを行った。

また、『新山のポケット』というライブでは新山さんが考えてきた設定とあらすじを全て話した上で後輩芸人の意見を聞きながらネタの詳細な部分まで制作していく。
最終回である8月には、64個もの設定とあらすじを考えてきていたところに常にネタのことを考えていることが窺える。

今年は『単独ライブへの道』や『新山のポケット』に加え、新ネタライブである『ワーワーJAPAN』『新ネタ!!ハイキック寄席』にも参加し、数え切れないほどのネタを制作してきた。

さや香ほどの人気があれば、単独ライブは漫才劇場でも満員になっていただろうし配信を付けていたら収入もかなり見込めたのではないかと思う。

ただし、それをしなかったところに賞レースへの熱い想いを感じるのは私だけだろうか。

さや香には今年作ってきた沢山の面白いネタがあって、2本目に見せ算ではない違うネタをしていたらもしかしたら優勝していたかもしれない。

実際に、8月に行われた単独ライブでは今まで作ってきた中でのベストネタを披露し、スーパーマラドーナの武智さんとギャロップの林さんに好評を得たネタが6本ある。

そんな中、二人が選んだ見せ算はチョイスミスだと言い切れるのか?


"さや香の漫才"を一番考えているのは紛れもなくさや香のお二人である。

その二人が自分なりの漫才が見せ算だとしたならそれが正解だったのではないか。


M-1には夢がある。

ただそこで面白い・面白くないと判子を押され、過程を知らない外野から好き勝手に評価されるような身勝手な世界でもある。


ただし、そんな中でもお二人が歩んできた道は本当にかっこよかったのだと心の底から伝えたい。

これからもさや香の漫才を見続けたい。
一緒に夢を追いかけさせてくれてありがとう。




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追記
さや香のことを好きだと思ってくれている方に是非読んで欲しいnoteを共有させていただきます。
お二人の良さを的確に表されている文章でしびれる。野村さんみたいな言葉を書きたい。


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