「こいつ、人の気持ち分からんのかな」
なんて思う事が多い今日この頃

言うてる俺が分かってないのに偉そうに

人の気持ちが分からないから
眉の動かし方や口角に目をやって
知っている人なら声の高低で
ちょっとした機微、揺らぎを頼りに
怒ってるのか悲しんでるのか考える
統計でしか分からないのに
統計でしか話せないのに

それをまた難しい顔して偉そうに
そらあかんは、お前
と思いながら今日も劇場へ

戯ライブっていう主催イベント
後輩のネタをゆっくり観れる公演

タチマチ
あの子ら上手いなぁ
無駄口どんどん減らしてる

コウテイ
下田のウェイト凄かったなぁ
九条、何で引いてたんやろ笑

うただ
まだ二、三本しか見たことないけど
大阪には稀有な遊び方するコントさんやなぁ
楽しみやなぁ

ほんでよ、
さや香が良かったんですわ

ご存知の方が多いかと思うので
説明は野暮なんですが
まぁボケの新山がずっと訳の分からん話をする
少し前からこの新山のバカ話に何やろうか
美学みたいな物が見え出して、また面白くなってて
それに付き合う石井が大変やなぁと思って見てたんですね、僕
ただ怒ってしまえば話が終わる
何でもツッコんでしまえば新山の良さが死ぬ

今日もね、どないすんねやろなぁって
新山は勿論、奇天烈な話なんやけど
喋りが上手いからこちらが前のめりになる
で、有りもせんことをさも常識みたいに話した時でした
石井が
「知らんことってあるなぁ」
って言うた、というより、添えた

痺れたんよ

俺が河野にやってほしいのってこれこれこれ
一々ツッコまれると喋る気が失せるねんな、漫才って

誰も興味のない、突拍子もない、昨日の晩に見た夢みたいな話を僕らは嬉々として話す
聞き手の受け答えで活きるし死ぬのだ

感動も束の間、5分出番でちょっきし9分やってた
こっちは笑いながらええよ言うてんのに
自分の出番が終わったら帰ってええのに
コンビ揃って終演まで待ってた

こんな面白いのにええ子らやねんて
やめてや

歳を、芸歴を重ねて
舞台に何度も立ち
漫才を考える

身近な人達がどんどんと世に出ていって
それでも自分達を憂うでなく
機を迎えるその日まで
懲りもせず辞めもせずにいるのは何でやろうか

賞レースが嫌いだ
いや、大嫌いだ
コンビ毎にネタに無理にでも発明じみたものを入れ込み
小さな特許出願をし合う品評会に感じるからだ

でも忘れた頃に、こういう良い漫才を観た時
「俺かてもういっちょ、出来るわい」
と小鼻が膨らむのを感じる

帰り道、行きしなの辛気臭い顔に
少しだけ血が通うのが分かった


野村尚平

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