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格ゲーがコンボをする理由

コンボ大好き?

一時期の格ゲーはとんでもないコンボブームだった。
格ゲーの有志攻略サイトの一つであるMBAACC遠野志貴まとめwikiにはこんな記載がある。

2A×2>2B(1HIT)>2C>5C>JB>JC>jc>JA>JB>JC>空投げ

一番簡単なコンボ。慣れてきたら5C後に5Bを入れたりする。
5C>jcにディレイをかけると相手との距離が縮まりエリアルをこぼしにくくなる。

何を言っとるんだ?
わからない人のために説明すると、数字はレバーを倒す方向を指し、アルファベットは押すボタンの種類を表している。
つまり、この「一番簡単なコンボ」とやらをするためには大体12回分のコマンド入力を暗記して実行しないといけないわけだ。
正気か?
基本コンボでこれなのだから高難易度なコンボはもうとんでもないことになってくる。

2A×2>2B(1HIT)>5C>微ディレイ2C>微ディレイ214C>5A(スカ)>5B(スカ)>BE5B派生>22D>2C>214C>5A(スカ)>微ディレイ5B(スカ)(振り向き)>BE5B派生>236B長押し>2C>6B>5B>5B派生>BEJC>2A×2>5B>5B派生>5A(スカ)>JB>JC>jc>JA>JB>JC>空投げ

怖い怖い!
一定の法則で並ぶ文字列はもはやコンボというか暗号文のソレであり、これを読み解く光景はゲームというよりIQテストに近い。
だがそれでも断言できることがある。
コンボは面白いのだ。

コンボの面白さとは

「コンボ」はいまや格ゲーでは当たり前のことになり、対戦動画を観てみれば10コンボや20コンボは平気で出してきている。
これもコンボという要素が面白くなければ格ゲーはこのように進化を遂げなかっただろう。
では、コンボはゲームをどう面白くしているのだろうか。

一つは、「ゲームを極めるまでの道を遠くする」という点だろう。
一つのキャラを使っていても、もっと上のコンボがある、まだこのキャラを極めきっていない、と感じさせることができる。
これによって、そのゲームへの奥深さを感じさせることができるのだ。

また一つは、「キャラの戦法が多用になる、オリジナリティを出せる」という点だ。
数多くのコンボを生み出せるということはそれだけ自由度の高い動きができるということでもある。
一つのキャラでも様々な攻め方ができるようになり、使い込んだキャラには愛着が湧くようになる。
難しいコンボができないからこそ、今使えるコンボで戦っていくうちにプレイヤーごとに独特の上達を遂げるパターンも多いだろう。
難易度の高いコンボを通し続けるプレイヤーもいれば、好きなコンボをどう通すか模索するプレイヤーも居る。
いつしかそのコンボはそのプレイヤーの代名詞的な存在となり、プレイヤー
の名前がそのままコンボ名となる事さえある。
コンボが特徴の「ギルティギア」シリーズでは同じキャラでも個人で全く違う戦法になる、とすら言われており、クソルのようなユニークな戦い方を持ち味とするプレイヤーも多い。

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▲ニコニコ動画で投稿されていた「ぼくひげ」シリーズ。とにかくパイルバンカーをブチ込むスタイルが人気を博した。

「ゲームに様々な遊び方を与える」点も見逃せない。
例えばコンボを探し、見つけ、発表するという遊び方だ。
カードゲームでのデッキ構築にも近いこの遊びは、プレイヤーに自己表現や創造力を発揮する場を与えてくれる。
変わったコンボを作れるキャラや用途の広い技、逆に有効に利用することが非常に困難な技にもロマンと価値を見つけることができるようになる。
誰も知らないコンボを発明し、弱キャラとされていた者で暴れまわるというシーンは誰しも夢見るものだろう。

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▲UMVC3世界大会で「DP殺すマン」が炸裂する瞬間。突如弱キャラが最強キャラを撃墜する光景に実況は絶叫しマイクを落とした。

「試合展開に幅が生まれる」というのもある。
コンボを途中で落としてしまったり、残りのHPやゲージで出すコンボを変えてみたりと全く同じ試合を繰り返す事が少なくなる。
立ち回りや読み合いと本来関係のないコンボが、かえって新しい状況を与えて要素を深めているのは興味深い。

「コンボ自体が楽しい体験である」事を忘れてはならない。
練習していたコンボを実戦で叩きつけられたときのカタルシスやコンボしている瞬間の興奮や快感は、それ自体がゲームを遊ぶ目的になるくらい面白いものだ。
とにかく高威力なコンボをぶつけるのも楽しい。

このようにしてコンボは格ゲーを面白くしてくれているわけだ。
あまりに面白いもんだからどこの格ゲーにもコンボは入り始め、そして一時期のコンボゲーブームを迎えたのである。

初心者のためにコンボはどう進化したのか

こうしたコンボという要素は格ゲーが作られるにつれてだんだんと複雑なものになっていき、ゲームの難易度を大幅に上げることとなった。
まあ当然というか、対戦に出る前にトレモ潜ってコンボルート学んで……というのはあまりにもハードルが高い。
格ゲーといえば初心者お断りというイメージを持つ人も多いのではなかろうか。
メーカーもこうした問題を解決するべく、初心者の方にも簡単にコンボして楽しんでいただけるよう、様々な工夫をこらしている。
どのようにしてコンボを初心者層に取り入れさせているのかを見て、コンボの将来を考えてみよう。

「ストリートファイターV」のコンボはシンプルかつ猶予を多めに持たせているものが多い。
中級者以上ならあまり練習せずとも成功できるだろう。
コンボの多様性は減り、特徴的なプレーをする機会も減ってしまうが、代わりに何十年も格ゲーやってる人が相手でも対等に渡り合うことができる。
予めボタンを押しておくだけで発動するコンボもあるので初心者でもきちんとした試合ができるだろう。
長いコンボよりも立ち回りを重視したゲーム性ならではの特徴だ。

「ドラゴンボールファイターズ」が代表的な「同じボタンを連打するだけで手軽にコンボできる」という回答をしたゲームも多い。
この手法の優れた点は初心者に簡単なコンボを与えつつも、上級者はより難しいコンボにも挑戦できる点だろう。
連打コンボの多くは簡単な代わりに威力が低い。
初心者はまずこのシステムで攻める楽しさを味わい、より強いコンボを練習するための原動力を得るのである。
だって初心者でもコンボしたいもん。
連打コンボでしかできない要素を残すことで、上級者のためにさらに多くの選択肢を作っておく手は賢い。
「Skullgirls Mobile」では通常攻撃のほとんどを連打コンボに限定する荒業を披露。
手軽にスカルガールズらしいコンボゲー感を出しつつも、必殺技などを絡めた上級コンボを用意しているのはお見事。

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▲「P4U」では連打コンボでしか出ない技や派生するコンボも多い

縦にコンボを繋ぎ続けるのではなく、横にコンボの幅を持たせる事で難易度を抑えつつも多様性を見せる手もある。
例えば、「アシストシステムでコンボの組み合わせを増やす」というものだ。
ドラゴンボールファイターズでは3人のキャラを組み合わせて戦うことができる。
キャラは相互に異なるアシスト攻撃を行うことができるので、組み合わせるキャラを変えるとコンボのパターンも変わることになる。
これにより「ゲームを極めるまでの道を遠くする」、「キャラの戦法が多用になる、オリジナリティを出せる」という点を大きく強化できるのだ。
「スカルガールズ」では14人キャラがいるので14*14*14でええと……
……とにかくすごいパターンになる。

「チェーンコンボ」は弱い技から強い技に続けて攻撃できるというシステムだ。
これは、「ヴァンパイア」シリーズから始まり「アルカナハート」「BLAZBLUE」など多数のゲームで同じような仕様が使われている。
正直初心者向けかというとどうかという気もするが、お手軽にコンボ数を増やせて楽しいことは確かである。
初心者がボタンをびしびし押すと、それっぽくパシパシ攻撃してくれるのが非常にウケた。
ところが上級者ともなるとこのチェーンコンボを基本としてコンボレシピを作るものだから、このシステムを採用したゲームが増えるほどに長いコンボが生まれていった。
いわゆるコンボゲーでは大抵このシステムを搭載しているためにレシピが長くなりやすいのである。
とはいえ基本システムなのでやっている事は複雑なものではなく、技が繋がる組み合わせは限られている。
使い回しの効くコンボの一部分も多く、そうして作っておいたパーツを覚えておけばアドリブでもいい感じに繋ぐことができる。
(なんだかジャズのようだ。コンボだけに。)
コンボゲーのクソ長いコンボも、実はあまり難しいことはしていないのだ。
冒頭のMBACCもチェーンコンボを採用しているゲームである。

コンボの今後

格ゲーにコンボがあることと初心者お断りになることは必ずイコールになるのだろうか。
私はそうは思わない。
なぜならコンボは面白いからだ。
初心者が最初にゲームに求める物がプレイできた時の楽しさだとするなら、コンボは間違いなくそれに合致している。
とにかくコンボが長いドラゴンボールファイターズやスカルガールズにも新規はたくさん居たし、現在でも多くのプレイヤーが遊び続けている。
格ゲーの他にも音ゲーやパズルゲー、シューティングでもコンボは必ず存在し、その楽しさを見せつけている。
これからもゲームの世界にコンボは存在し続けるだろうし、メーカーは初心者へコンボの魅力を伝え続けるだろう。

9月30日には新作格闘ゲーム「MELTY BLOOD: TYPE LUMINA」が発売予定である。
このゲームでももちろん初心者に向けたコンボシステムが存在している。

格闘ゲームをあまり遊ばない方でも安心してプレイしていただけるよう攻撃ボタンを連続で押すだけで連続技を決めてくれる「ラピッドビート」などの簡単操作の強力技を駆使して、爽快なバトルを味わえます。

はたして初心者にどのようにコンボの楽しさを教え、次に繋げる作りにしているのか。
そして経験者に向けたコンボの奥行きをどのように作り上げているのか。
その回答方法を見てみるのが、楽しみでならない。

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