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あじしめコラム

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最初のやつが意外と読まれたことに味を占め、だいたい週一で連載しているコラムです。コメントやスキ、フォローをいただけると大いに喜びます。
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#雑記

同情の余地とか勝手に決めるな

このキャラクターの行動は極めて悪質であり、行動の動機も身勝手なものである。被害規模も大きく、被害者はたぶん苦しんだ。残忍な悪行だ。つまりこいつはものすごく悪い奴であり、同情の余地はない。 (よくありそうな例文) 知ったことか。わたしは創作物のWikiを見るのが好きだ。ファンメイドの大百科や大辞典。これらは情報量が多く、愛が伝わってくるので読んでいて非常に楽しい。ただ悪役や小悪党のページには、よくこういった文章がある。これはあまり好きではない。 同情の余地があるかないか。そ

溜まった先から怒れ

怒りは火薬に似ている。溜め込めば溜め込むほど爆発しやすくなり、一度爆発した時の威力も凄まじい。反面、溜め込まなければ爆発の威力はさほどでもない。 火薬は、特定の何かへ向けられた指向性のエネルギーではない。方向性のない純粋なエネルギーだ。誰がどれだけ溜め込ませようと、爆発の威力を受けるのは、それを爆発させた人間だけだ。『キレる』という言葉の背後には、こういうプロセスがあるのだろう。 当然ながら、キレることは好ましい結果を生まない。周りの人間も、キレた当人もそうだ。当初は『ス

受容される悪役、拒絶される悪役

物語に不可欠な登場人物とは誰だろうか。主人公、ヒロイン、親友。その他諸々あるだろうが、その誰もがいなくても物語は成立する。常に三人称で進む群像劇や、ヒロイン不在のむさ苦……硬派な物語、孤独な主人公の苦悩を書いた内省的な物語などなど。案外なんとかなるものだ。 では、物語に不可欠な登場人物とは? ……それは悪役である。彼らは物語になくてはならない変化を持ち込む。何も変化しない物語をあなたは想像できるだろうか? おそらくそれは難しいだろう。それはひどく退屈で、面白みがなく、記憶に